感性だけでは成り立たない? バリューチェーンと連動したデザイナーの在り方とは

提供元:カイタックインターナショナル

2017.03.07

感覚や感性などが重視されるイメージが強いファッション業界。なかでもデザイン関連の仕事は特にそれが強い。だが、カイタックインターナショナルは、感性の上位にデータを持ってくることによって、とてもバランスの取れたモノ作りを実践している。同社のマーケティング戦略の柱であるバリューチェーンという考え方を重要視することによって、デザインや生産の在り方はどのように変化したのか。チーフデザイナーの嶋田真弘さん、須田敦子さん、そして生産管理のマネージャーである水落竜太さんに伺った。

カイタックインターナショナル チーフデザイナー嶋田真弘さん

カイタックインターナショナルにおける デザイナーという仕事

——まず、デザイナーというお仕事はどんな内容なんでしょう。

嶋田真弘(以降、嶋田):新しくブランドを立ち上げる場合と、すでにあるブランドを継続する場合では仕事内容は大きく変わります。ですが、メインになってくるのは継続する方ですかね。

——では、継続する方のおおまかな仕事内容聞かせていただけますか?

須田敦子(以降、須田):大きくわけて3パターンあります。ひとつは、今どのくらい売れているかの数字を見て、それをさらに上げるためにどんなアイテムが必要なのかを分析し、企画立案するということ。もうひとつは、いま出しているもので足りていないもの、例えば定番アイテムしか出していないブランドだったとしたら、そこにトレンドに乗ったアイテムなどをプラスする仕事ですね。3つめは、いま欲しがってはいないかもしれないけれど、それがお客様の目の前に提示すれば、きっと欲しがるであろうというアイテムを新規に提案する仕事。

——いま挙げていただいた仕事の中で、もっとも比率の大きい仕事はなんでしょう?

嶋田:1番最初のものですね。市場が見えているところに対して、アプローチをかけていくというのがメインの仕事です。

——デザイナーさんの仕事の流れはどんな感じなんですか?

嶋田:まずはシーズン始まりに次のトレンドを予測してテーマを決めた後に、具体的な細かい商品の開発に入っていくという感じです。その後何回かサンプルを作って、展示会。その後、生産に入るという流れですね。

——企画立案からなんですね。テーマなどもデザイナーさんが決める?

嶋田:そうですね。他の会社ではMD(マーチャンダイザー)と呼ばれる人が決めることもありますが、うちの場合はデザイナーがやります。

須田:組んだ予算に対して、私たちが商品を当てはめて行く感じです。例えばカリスマデザイナーなどになれば話は変わってくるのでしょうが、私たちの場合は、個人ではなく、ブランドに価値がある。だからそのブランドを欲しがっている人たちが、何を欲しがるかというところからスタートしますね。

カイタックインターナショナル チーフデザイナー須田敦子さん

バリューチェーンによって変化した デザインというもの捉え方

——その数字というのは、どういうものなんですか?

嶋田:デザインカテゴリ―のパーセンテージが多いですね。例えばボトムスを7割、トップスを3割の比率で、という感じです。

須田:その中でも、例えば「ボトムスの中ではこういうものが売れているから、そこを中心にラインナップを広げたい」、といったようにMDによる根拠のある数字によって内訳が構成されています。

——売上など分析されたデータによる数字がまずあって、そこにデザインを当て込んでいくというやり方は、昔からカイタックインターナショナルでは実践していたことなんでしょうか?

須田:昔は全く違いましたね。デザイナーがラインナップもすべて決めていて、そこから営業の人間が、それを見て予算を組むというやり方でした。もちろん私たちにはラインナップの各デザインにトレンドや打ち出したいアイテムなど、デザイナーなりに時流を考慮した根拠があったわけですが。それが今のように数字からスタートするというのは、バリューチェーンの仕組みが社内で始まってからですね。

——昔のやり方に比べて、数字からスタートする今のやり方は、やりやすくなりましたか?

須田:そうですね。正直に言うと、デザインに関する自由度は減ってはいます。でも、その分営業と企画との間のブレが無くなったので、結果的に、作った商品が無駄になるということが無くなりました。

——企画、デザインする方向性が明確になってきたということですね。

須田:はい。数字が見えると、「このパンツは300本売らなきゃいけない」という気持ちで作るので、あまり尖ったデザインにしてはいけないな、とかそういう風に考えられるようになりました。あとこれは気持ち的に大きく変わったところですが、「売れる」という喜びはやはり大きくて、モチベーションの持ち方がすごく変わってきました。

生産管理とデザインの精度を上げる バリューチェーンという仕組み

——ではちょっとここで生産管理というお仕事についても教えていただけますか?

水落竜太(以降、水落):生産管理とはその名の通り「生産を管理すること」で大きく3つに分けられます。まず販売計画に基づいた生産計画を立てて、それに沿った資材の手配や工場の手配をします。それから、納期までの進捗管理。納品した後は資材や製品などの在庫管理があります。

——生産管理の側面から見て、カイタックインターナショナル独自のやりかたのようなものはありますか?

水落:生産管理という仕事は、準備段階の時点から、デザイナーや営業など、いろんな人と関わることになるのですが、バリューチェーンを重要視した戦略が組み込まれてから、いい意味での歯車的な要素がものすごく強くなった印象があります。

——その戦略が組み込まれた当時、なにか苦労した点などはありましたか?

水落:バリューチェーンによるメリットは、頭ではすぐに理解できても、それを現場レベルに落とし込むことがとても難しかったですね。工場などに説明しても理解してもらうまでにはかなり時間が必要でした。例えば、他部署でも工場の状況などを共有できるような書類フォーマットに変更するだけでも、それがなかなか浸透しなかったりといった苦労はありましたね。

——デザイナーさんの立場ではどんな苦労がありましたか?

嶋田:いままでは、極端に言えば、自分たちのことだけを考えていれば良かったんですが、バリューチェーンでは、他部署のことも考えていかなければいけない。例えばスケジュールも、今まではギリギリまで粘ってデザインをしていたりしたんですが、バリューチェーンの仕組みのもとでは、営業やプレスの都合なども考慮しなければいけなくなる。だから最初はやはりちょっと戸惑いましたね。

須田:それから、やはりデザイナーという立場からすると、トレンドものを手がけたい、チャレンジしてみたい、という気持ちはあるわけです。それを数字というもので割り切られてしまう感じに、最初はやはり疑問もありました。

——そのあたりはどういう風に折り合いを付けたんですか?

嶋田:たとえば、ファッションの世界では、僕がどんなに格好いいと思っていても、大多数の人が格好悪いと思っていたら、それは結果、格好悪いモノなわけですよね。だから、僕の個人的な美的感覚と、売れているという数字を天秤に掛けたときに、後者に重きを置くのは理にかなっているなと、素直に思えるタイミングがあったんです。

——どんなものを作るべきかの目的地のようなものが見えた感じですね。

嶋田:数字、というよりはデータに基づくガイドラインのようなもの、と言ったほうが正確かもしれませんね。

——数字、と聞くとすぐに売上とか利益とかに直結して考えてしまいがちですが、ここで言う数字というのは、もっと根本的な動機付けなんですね。

嶋田:そうですね。

——では、バリューチェーンによる、デザイナーさんサイドからみたメリットはなんでしょう?

須田:スケジュール共有がもっとも大きいかもしれません。実は、それまでは横との連携がぜんぜん取れていない状況でした。例えば営業の方から納期の話をされても、それの理由もわからないし、プレスからサンプルがこの日までに必要だと言われても、なにに使うのかもよくわからなかったんです。でも、バリューチェーンによって、お互いの動き方が把握できるようになってからは、その理由が明確になったんです。そうなってくると、多少の無理もイヤでは無くなってくる。その辺の精神的な面でのストレスはかなり減ったと思いますね。

嶋田:いろいろと、仕事を進める上で予測も立てやすくなりましたしね。無駄にいがみ合わなくもなりますし(笑)

水落:異業種間でのミーティングも増えましたしね。そうすることで、意思疎通も図れるし、次の動きもしやすい。会社として、チームとして、まとまりが強まったのは間違いないですね。

——結果、バリューチェーンは良かったと思いますか?

水落:もちろんです。逆にいまバリューチェーンがなかったら、怖いなと思いますね。どんな状況になっているんだろうかって。情報も少なく、個々がバラバラに動いていたら、いまみたいに上手に回っているとは思えません。

須田:そしてきっとこんなに売上も伸びていないと思いますよね。

——みんなが同じ方向を向いているわけですもんね。それはチームとして強くないわけがない。では最後に皆さんの今後の展望や課題などがあったら教えていただけますか。

須田:いまYANUK(注:カイタックインターナショナルが展開するデニムブランド)がバリューチェーンを築くことで、売上を伸ばしています。その理由はきっとMDやデザイナーといった個の力ではなく、仕組みがうまくいっているからだと思うんです。そういう仕組みを後輩にもきちんと伝えて行って、YANUKのようなブランドをもっと増やして行けたらいいなと思っています。

嶋田:モノ作りに特化したデザイナーではなくて、もっと根底の仕組みをデザインできるようになりたいですね。そうなれば、それはきっといろんな所に応用できるはずです。それが、いま僕が目指しているデザイナー像ですね。

水落:生産管理としては、このバリューチェーンという考え方を、社内だけではなく外にも広げ、繋げていくことです。生地屋さんや付属屋さんなど自社以外にもバリューチェーンが広がれば、お互いがwin-winになり、もっと効率よく、質の良いものを作ることができるんじゃないかなと思っていますね。

文:櫻井卓  写真:林孝典

第1話
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第2話
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