キリンが経営の根幹に位置付けるCSVの先駆、「iMUSE」のブランド戦略に迫る
実現したいキャリアを目指して Vol.6:キリンの健康領域を牽引するブランドマネージャーへ

提供元:グロービス経営大学院

2018.12.06

2017年8月にデビューした「iMUSE(イミューズ)」は、キリングループであるキリン・小岩井乳業・協和発酵バイオの3社が共同で立ち上げた新ブランド。これまでの常識をくつがえすキリンの大発見「プラズマ乳酸菌」を配合した、飲料・ヨーグルト・サプリメントからなるシリーズだ。

これを単なる新ブランドのスタートと捉えてはいけない。キリングループは、経営の根幹にCSV(※1)を据えており、社会貢献活動と事業活動を分けるのではなく、事業活動そのものを通じて社会課題解決に取り組むというCSVの考え方を全社に浸透させ、お客様と共に幸せな未来をめざしている。「iMUSE」はその重点課題のひとつ、「健康」領域の事業として、グループをあげて取り組んでいる一大プロジェクト。ブランドマネージャーという立場からプロジェクトに携わるキリンビバレッジ株式会社の勢村祐美さんは、ブランドの育成、そしてキリングループのCSV強化というビジョンにどう向き合っているのだろうか。

※1 Creating Shared Value(社会と共有できる価値の創造)

「iMUSE」を市場に浸透させるために

キリンビバレッジのマーケティング部にて、清涼飲料の健康領域を担当する勢村さん。プラズマ乳酸菌を1,000億個配合したレモンウォーター「iMUSE レモンと乳酸菌」をはじめ、同じくプラズマ乳酸菌を配合した乳酸菌飲料「まもるチカラのSUPLI」などのブランドマネジメントを手がけている。

勢村氏:消費者の方の健康意識が高まっていることもあり、乳酸菌市場は近年伸びています。それにともない、もっといろんなシーンで、いろんな形で乳酸菌を摂りたいというニーズも増えています。キリングループは「健康」「地域社会」「環境」という観点からCSVに取り組んでおり、その中の「健康」領域を重点的に強化していくため、プラズマ乳酸菌を配合した「iMUSE」ブランドを立ち上げるに至りました。

 

プラズマ乳酸菌は画期的な発見ですが、商品の特性や魅力の伝え方には、法律上の制約がありますので、難しいと感じることが多々あります。ですが、私が初めてプラズマ乳酸菌の魅力を知ったとき、そのメカニズムのすごさや新しさにとても感動しました。自分でも摂取したいと思いましたし、家族や友人、そしてお客さまにも自信を持っておすすめできると確信したんです。そのときのワクワク感をひとりでも多くの方にお伝えできるよう、取り組んでいます。

勢村さんがキリンビバレッジのマーケティング部に配属されたのは2017年秋。「iMUSE」プロジェクトに参画したのは、「iMUSE レモンと乳酸菌」の発売の3か月前だった。それまではグループのマーケティングリサーチ部門で、商品開発のためのデータ分析・戦略支援などを7年間手がけていたという。

 

勢村氏:リサーチ部門では、データから導かれる仮説を検証して、方向性とリスクを最大限に提示する、主に左脳を使った仕事であったと思います。でもブランドマネージャー(以下:BM)の仕事は、右脳と左脳を半分ずつ使っている感覚。いろんな選択肢の中から自分なりに筋をつくって答えを選び抜き、その決断を誰もが納得できるように周囲に伝えていかなくてはなりません。

 

「iMUSE レモンと乳酸菌」の発売時、すでに「まもるチカラのSUPLI」を販売しており、その育成に力を入れていたときでした。会社としては、「iMUSE」と「SUPLI」の2つが揃うことでプラズマ乳酸菌をより多くのお客さまへ届けることができるという考えでしたが、当初は2つの商品の両立に対して社内で意見が割れていたんです。

 

実際には、30〜40代の女性をターゲットにしたレモンウォーターである「iMUSE」と、男性が主なユーザー層のヨーグルトテイストの飲料である「SUPLI」とでは、味も客層も異なります。そうした戦略の違いなどをきちんと説明していくことで、結果的には社内一丸となって取り組むことができたと思います。「iMUSE レモンと乳酸菌」は2018年の新商品第一号でしたが、予定を大幅に上回る売上を記録し、体調管理が気になりがちな冬シーズンの間、長期にわたって需要に対応できました。「iMUSE」ブランド全体の中でも飲料は最もお客様接点が多いこともあり、存在感は大きいものになっています。

キリンの健康系ブランドが描く、CSVへのビジョン

一般的に、乳酸菌への関心が高く需要も多いのは50〜60代の女性だという。需要期は主に秋冬。体調管理への意識が高まる時期だからだ。一方で「iMUSE レモンと乳酸菌」は、従来の乳酸菌商品のイメージをくつがえすブランド戦略を描いている。

 

勢村氏:まず、パッケージデザインには相当こだわっています。上品で洗練された“iMUSEブルー”を基調に、白のグラデーションで乳酸菌のテイストを表現して、30〜40代の働く女性がバッグに入れていても恥ずかしくないスタイリッシュなデザインに仕上げています。

 

この商品のユニークセールスポイントは、すっきりゴクゴク飲めるレモンウォーターで、かつ乳酸菌もしっかり摂れるところ。すっきり飲める味わいは、乳酸菌需要が落ちる春夏を見据えた設計でもあります。この商品を通じて、日常の水分補給の代わりに手軽に乳酸菌を摂る「乳酸菌習慣」を季節問わず根づかせていきたいという思いもあるので、お客さまのイメージとのギャップをいかに埋めるかは今後も課題とするところです。

2018年6月には、読売巨人軍とのオフィシャル乳酸菌飲料サプライヤー契約も話題となった。1〜3軍のベンチに「iMUSE レモンと乳酸菌」などを提供し、世間の認知度をさらに高めている。

 

勢村氏:商品の露出拡大という目的はもちろんありますが、それだけではありません。ハードな練習をこなすアスリートの日々の体調管理に商品を役立てていただくことで、「スポーツのそばにもiMUSEがある」という知覚をつくっていきたいという思いもあります。読売巨人軍のサポートスタッフの方からは、「チームの体調管理に役立っている」というお言葉もいただいていると聞いています。「乳酸菌習慣」をより直感的にお客さまに理解していただくために、今後もスポーツ界とのコラボをはじめ、さまざまなチャレンジをしていきたいです。

 

CSVの健康領域を強化していく方針のキリングループにおいて、「iMUSE」をはじめとする健康系ブランドはいわば、先駆けとなるプロジェクト。そのBMである勢村さんが今、もっとも注力していることとは何か。

 

勢村氏:グループ内には技術資産が数多くあります。一方で私たちマーケティング部は、お客さまの情報を豊富に持っています。研究部門と企画部門では仕事の時間軸が異なるため、研究成果をベストなタイミングで商品化するには、互いの密な連携が欠かせません。

 

「iMUSE」はグループ内の横断プロジェクト。事業会社同士、そして異なる役割の者同士、一堂に会して綿密にすり合わせしながら一緒にブランドをつくっており、互いの連携によってグループ連携のモデルケースに是非できたらと考えています。また、「iMUSE」に限らず健康系ブランドのBMとしては、新商品開発にも積極的にチャレンジしていますので、グループが目指す「健康」の軸となるようなブランドを生み育てていくことも大きな目標です。

自分ならではのブランドマネジメントで、人々の「健康」を支えたい

2004年にキリンビールに新卒入社した勢村さん。最初は営業、その後は商品開発に携わった。「ものづくりがしたい」という入社当初の純粋な想いは、キャリアを積むごとに徐々に違う形へと変化していったという。

 

勢村氏:キリングループは以前から社会課題に繋がる活動に取り組んでいましたが、東日本大震災の復興支援などを通じて、それまで以上に明確にCSVに向かうようになりました。私自身もマーケティングリサーチ部門に異動し、視野を広げるためにグロービス経営大学院に通い始めたことで、さまざまな変化がありました。そんな中で自然と養われていったのが、「自分の仕事を人や社会に役立てたい」という想い。初めて社外から自分の会社や仕事を見つめたこと、さまざまな立場の人と出会い刺激を受けたことが、私の価値観に変化を与えたのだと思います。

 

商品発売前のお客様調査で「こういうものがほしかった!」といきいきとした表情で言っていただけたり、商品がいかに生活になくてはならない存在かを語っていただけたりしたときは、この仕事をしていてよかったと心から嬉しくなります。CSVをベースに戦略を考えることは私のやりたいことと合致しているので、仕事自体とても楽しいですし、CSVを根幹に据えている会社のこともより好きになりました。

 

「私は天才肌のマーケッターではありません」と勢村さんは言う。日頃からアンテナを高く持ち自身の感覚を起点とするタイプのマーケッターもいるが、勢村さんは「世の中を冷静に分析してチャンスを見つけるタイプ」と自身を捉えている。

勢村氏:健康課題は多様なので、世の中を常に冷静に見ていなければチャンスを見つけるのは難しい。その点、お客さまのインサイトを探り本質的な課題を見抜くマーケティングリサーチ部門とグロービス経営大学院で培った経験は、今の私のBMとしての強みになっています。

 

BMにもいろんなタイプがいていいのでは、と私は考えます。最低限のスキルは必要ですが、そのうえで自分の強みだと思えるスキルをひとつでも伸ばすことができれば、BMとして個性を発揮して成長していけるのではないでしょうか。以前上司から教わったBMの心得は「夢を語ること」。まだ駆け出しの私ですが、ひとりでも多くのお客さまの健康を支えるという夢を語りながら、キリングループの軸となるようなブランドや商品を生み育てていきたいです。

 

勢村 祐美(キリンビバレッジ株式会社 マーケティング本部 マーケティング部 商品担当 ブランドマネージャー)

プロフィール画像

2004年にキリンビールに新卒入社し、営業・商品開発を担当。その後、酒類や飲料のマーケティングリサーチに7年携わり、2017年にキリンビバレッジのマーケティング部に配属。現在は「iMUSE レモンと乳酸菌」「SUPLI」シリーズなど健康系飲料のブランドマネージャーとして活躍している。慶應義塾大学卒業、グロービス経営大学院2018年卒業。

グロービス経営大学院

代表者:堀義人
設立:2006年4月(2008年4月より学校法人)
URL:https://mba.globis.ac.jp/
住所:東京都千代田区二番町5-1 住友不動産麹町ビル
概要:グロービス経営大学院は東京・大阪・名古屋・仙台・福岡・水戸・横浜・オンラインで、「社会に“創造”と“変革”をもたらすビジネスリーダー」を育成するために実践的なMBA(経営学修士)プログラムと忙しい社会人が学びやすい環境を提供する専門職大学院です。