イトーキの働き方改革が始動。働き方の自己裁量を最大化する「XORK Style」とは

 

2019.01.16

働き方改革が叫ばれる中、ある象徴的なオフィスが東京・日本橋に誕生した。オフィス関連事業を手がける株式会社イトーキの新本社オフィス、「ITOKI TOKYO XORK(ゾーク)」である。XORKとは、従来の働き方(WORK)を次の次元へ進化させるために、Wの次のアルファベットであるXを掛け合わせた造語だ。

オフィス内には93のスペースがあり、1つとして同じものはない。社員は自分のデスクを持たず、業務の内容や目的に応じて93のスペースを使い分ける。この単なるフリーアドレスとは一線を画す、社員一人ひとりの働き方の自己裁量を最大化するための計算し尽くされたオフィス空間について、実際に働く社員の方々に生の声をお聞きしてみた。

働き方を自由にデザインできるオフィス

オフィス空間づくりのベースになっているのは、「ABW(Activity Based Working)」と「WELL Building Standard」の2つ。

 

ABWとは、数々のグローバルカンパニーのパートナーとして活動するオランダのコンサルティング会社、Veldhoen+Companyが創始した働き方の概念。「いつでも、どこでも、誰とでも」働くことができる働き方として、近年は日本でも注目が集まっている。イトーキは同社と業務提携を結び、最先端の知見を活かしたワークスタイル戦略「XORK Style」を構築。それを体現したオフィスがITOKI TOKYO XORKというわけだ。

ABWの考え方に基づく「10の活動」

従来のワークプレイスは、階層・組織・チームなどに連動して決められることが一般的だった。一方、ABWでは、ワーカーが自分の活動に応じて適したワークプレイスを使い分ける。ITOKI TOKYO XORKでは社員の活動を10に分類し、それぞれの活動の生産性や創造性を最大化するスペースを整備。誰にも中断されず1人で作業することが必要な「高集中」、2人での「対話」、3人以上で行う「アイデア出し」や「知識共有」、仕事から離れてリフレッシュする「リチャージ」など各活動に対応したスペースが用意されており、社員はそのときどきの業務に応じて働く場を選択するのだ。

全国の従業員300名以上の企業・団体に所属するホワイトカラーワーカー3102人を対象にイトーキが行った調査では、働き方の自己裁量が大きいワーカーほど、生産性・ワークエンゲージメントともに「高い」という回答が圧倒的に多かった(※)。社員が自らの働き方を自由にデザインできるITOKI TOKYO XORKは、個々の生産性やワークエンゲージメントを最大限に高める次世代のワークプレイスとなることが期待される。

 

もう1つのキーワード、WELL Building Standardとは、「健康とWell-being」に焦点を当てた世界で初めての建物・空間の認証制度。「空気」「水」「食物」「光」「フィットネス」「快適性」「こころ」の7カテゴリに沿って建築・設備・運用ルールなどを評価されるもので、ITOKI TOKYO XORKは予備認証でゴールドレベルを達成している。オフィスの実稼働を経て、早ければ2019年に本認証を取得できる予定だ。

 

※詳しい分析結果は以下のレポートでご覧いただけます。
https://www.itoki.jp/catalog/pdf/itoki_xorkstyle_report_2018.pdf

ITOKI TOKYO XORKで働く社員に聞く、新オフィスの魅力

2018年10月にグランドオープンしたITOKI TOKYO XORKには、首都圏の各オフィスで働いていたさまざまな職域の社員が集結した。もともと京橋のオフィスにいた法人営業統括部主任の鈴木雅博さん(2009年入社)は、本社移転の発表をポジティブに受け止めたという。

 

鈴木「私は2018年1月に京橋のオフィスに異動してきたのですが、京橋では営業だけでなくデザイナーなど他の職種の社員も働いていて、その環境を新鮮に感じていました。他部署との距離が近いと仕事のスピードが上がりますし、新たな視点に気づけたり、いろいろな情報が入ってきたりします。新本社オフィスではその輪がさらに広がるのだろうと思い、期待が膨らみました」

 

金融営業統括部の南志歩さん(2014年入社)が働いていた新富町の元東京本社は、他部署のメンバーがいないオフィスだったそう。

南「他の職種の人と打ち合わせするときは、別のビルに移動したり、電話やメールで済ませたりしていました。いつでも直接顔を見て打ち合わせができるようになれば、認識違いがなくなり質も効率も高まりそうだと感じましたね。普段は接する機会のない、いろんな人との交流接点が増えることも楽しみでした」

 

実際にITOKI TOKYO XORKに異動し、最初はどんな印象を抱いたのだろうか。率直な感想を聞いてみると、南さんは声を弾ませて答えてくれた。

 

南「きれいなオフィスでモチベーションが上がりました! 今までずっと固定席で働いていたので、移転してすぐの頃は荷物が置けなかったり、誰がどこにいるのかがわからなかったりと、最初は少し大変でしたが(笑)。でも自分専用のパーソナルロッカーがありますし、在席表示や確認ができるアプリもあるので、すぐに慣れました。今はオフィスに来るのがとても楽しいです」

 

営業職である二人は外出が多いため、オフィスで過ごすのは1日2〜3時間ほどだという。その限られた時間の中でも、さまざまなスペースを積極的に使い分けて自分なりの働きやすさを模索しているようだ。

鈴木「私は営業先から帰ってきてすぐに事務作業に取りかかれないタイプなので、カフェスペースでコーヒーを飲みながらスマホでメールチェックなどをして気持ちを切り替えています。前のオフィスでは帰社してすぐにデスクに戻り、隣の同僚にむやみに話しかけたりしていたので、作業を中断させてしまったことも多々あったと思います。1人で集中したいときは誰にも話しかけられないハイフォーカススペースで作業しているのですが、そういう環境に身を置いてみて初めて、作業を中断されることで生産性が下がってしまっていたことに気づきました。集中できる環境のおかげで無駄な残業は減ってきています」

 

南「私もハイフォーカススペースは事務作業がはかどるのでよく使っています。あと、DIALOGUEという対話スペースがあるのですが、そこは上司に相談があるときなどに使いますね。ソファがL字型や横並びになっているので距離が近く、対等な目線で案件に向き合ってくれる感覚があるんです。カフェスペースは私もお気に入りで、出勤したらそこで朝食をとりながら仕事の段取りを考えています。朝の時間はいろんな同僚がカフェを使っているので、雑談や情報交換の場としても役立っています」

2人がよく利用するカフェスペース。メールチェックや情報交換などさまざまな目的で利用されている

鈴木「WELL認証の予備認証も取得しているとのことで、社員に快適なオフィスを与えようとする会社の思いが伝わってきて嬉しいですね。企業価値も上がるのではないでしょうか。実際にウォーターサーバーやカフェ、サウンドマスキングなどさまざまな環境が整備されていて、快適に過ごせています」

自発的な発想や行動も。働いてみて変化したこと

さまざまな部門の社員が一堂に会し、自らの裁量でワークプレイスを決めながら仕事に取り組んでいるITOKI TOKYO XORK。実際にここで働き始め、社員の方々の働き方はどのように変化したのだろうか。

 

鈴木「今までは、出勤して自分のデスクについてからその日の仕事の進め方を考えていました。でも今は、出勤後に向かう場所すら決まっていない状態。事前にスケジュールを組み立てていないと効率的に動けないので、1週間くらい前から考えて進める習慣がつきました」

 

南「私も同じで、スケジューリングを先々まで考えるようになりました。上司の決裁が必要なときや相談したいときに困らないように、上司のスケジュールも事前に把握しておさえるようにしています。段取り意識は以前よりかなり強くなりました」

 

鈴木「確かに、自分だけでなくまわりの人たちの動き方にも着目するようになりましたね。わからないことがあっても聞ける人が近くにいるとは限りませんから、すぐに人に頼らず自分で解決しようという意識も高まりました。働く場所も進め方も自分で判断するようになり、仕事に対する責任感が増したように思います」

 

入社2年目の後輩のOJTを担当している鈴木さんは、指導する側としても意識していることがあるという。

 

鈴木「まわりと繋がる動きを積極的にしなければ、コミュニケーションが希薄になってしまいかねません。そのためGoogle ハングアウトでチームや部ごとにグループをつくって、頻繁にやり取りするようにしています。また、私がOJTを担当している後輩とは、定期的に時間を設けてDIALOGUEスペースで面談をしています。私がつかまりにくいのを察した後輩が自ら提案してきたもので、そういった自発的な発想や行動が出てくるのも新オフィスならではでとてもいいと感じました。

 

また、二人で作業するためのDUOというスペースがあり、横並びで座り一つのモニターを共有して会話をしながら作業を進めることができます。今までは打ち合わせをして、どちらかが資料を作って、もう一度打ち合わせをして修正するといった進め方をしていましたが、一緒に作業をする方が効率的だし、何より会話しながら作業することで新たな気づきがあり、よりよい仕事につながっていると感じています」

2人作業に適したDUOスペース

南「私の上司も働き方が変わり、週1回のミーティング時間を一人ずつ設けてくれるようになりました。仕事からプライベートまでどんなことでも話していい時間です。一人ひとりが自分の裁量で働ける分、下のメンバーが放置されやすい環境でもあるので、マネジメントに携わる社員の意識づくりは会社としても注力しているようです」

 

自身のクライアントにもITOKI TOKYO XORKの事例をよく伝えているという二人。働き方改革を意識する企業が多い今、反応はどのようなものだろうか。

 

鈴木「大手企業は特に働き方改革への関心が高く、このオフィスがオープンした際の展示会には多くの企業に来場いただきました。『時間が経ったらもう一度見にきたい』『成果を教えてほしい』という声も多かったです。『うちにはまだ難しいよ』というクライアントもいらっしゃいますが、少しでも理解が深まるようご説明させて頂いております。」

南「私のクライアントは金融業界なので、セキュリティの関係で有線LANのオフィスが主流なんです。まずはその壁を越えなければいけない企業が多いのですが、大手は一部無線LANを導入するなど動き始めているので、ITOKI TOKYO XORKの事例紹介を通じて改革に少しでも貢献できればと思っています」

 

新オフィスで働き始めて数ヶ月。まだ使ったことのないスペースもたくさんあるようなので、今後使ってみたいスペースを最後にお聞きした。

 

鈴木「ソーシャルキッチンが気になっています。違う部門の人同士のコミュニケーションの場として活用できたらおもしろそう」

 

南「私は知識共有スペース。発表者が前に立ち、他のメンバーは階段状の椅子に座って発表を聴くサウナ室のような部屋です。デスクを囲んで顔を見合わせるより、皆で一方を向いているほうが意見を言いやすいのだそう。会議の場所として提案してみようと思っています」

一人ひとりが活き活きと働ける次世代のオフィスへ

自分のデスクがあった従来のオフィスから、業務に応じて93ものスペースを使い分ける今のオフィスへと異動し、社員の方々の働き方は大きく変化した。単に「自由度が増した」ということではない。一人ひとりが自分なりに思考して行動し、自らの働き方を自らの責任でデザインしていくようになったのだ。新しい働き方について活き活きとした表情で語る二人を見て、生産性はもちろんワークエンゲージメントも着実に高まりつつあることを実感した。

 

ABWにはコミュニケーションが希薄になりやすいという課題があるが、そこに対する意識も各自明確に持っているようだ。重要なのは、対面とバーチャルでのコミュニケーションをうまく組み合わせ、状況に応じて真に必要な方法を選択すること。それにより、個々の裁量を高めながらコミュニケーションの効率や質をもアップしていくことが可能になるだろう。

 

イトーキは「人も活き活き、地球も生き生き」という企業コンセプトを掲げている。ABWとWELL Building Standardを軸にしたITOKI TOKYO XORKは、まさにこのコンセプトの体現を目指した次世代のオフィス。社員の方々の働き方がこれからどのように進化していくのか楽しみだ。

株式会社イトーキ

設立 昭和25年4月20日
資本金 5,277百万円
従業員 1,964名(平成29年12月末現在)
Web https://www.itoki.jp/
事業概要
◎オフィス関連事業
ワークステーションシステム/デスク/ローパーティション/
事務・会議チェア/テーブル/保守サービス業務など
◎設備機器関連事業
オフィス建材内装設備/移動間仕切・可動間仕切/
セキュリティ設備機器/工場・物流設備機器/商業施設機器/
研究施設機器など
◎その他
学習デスク・チェア/書斎・SOHO用家具など