「 #RealUgly 本当の醜さにメスを。」聖心美容クリニックが悪徳美容クリニックを擬人化した動画で啓蒙活動を行う理由

 

2019.03.26

十数年前と比べ「美容整形=覚悟」というイメージも薄れつつあり、有名芸能人や若い世代を中心に「私もしています」と美容整形をオープンにすることも珍しくない。しかし、昔と比べて身近な存在になってきた一方で、美容整形にまつわるトラブルや被害を耳にする機会も増えてきた。美容整形は本来、患者に治療内容を十分理解してもらった上で受けてもらうもの。だが、施術を受ける患者側も専門知識が乏しく、良心的な美容医療クリニックかどうかを見極める目を持つことも難しい。また、目先の利益のために患者のコンプレックスや無知につけこんで、不誠実な対応を行う悪徳美容クリニックが存在することも事実だ。もちろん、悪徳美容クリニックと呼ばれる存在はごく一部ではあるものの、トラブルが増えていることが美容医療業界全体のイメージダウンにもつながっている。
もしも美容整形を受けたいと思った時、どのようなことに注意をすればトラブルを防ぐことができるのだろうか。慎重な「正しい美容医療クリニック選び」の啓蒙活動を行う、聖心美容クリニックの統括院長、鎌倉達郎氏にお話を伺った。

まずは知ることが大切。悪徳美容クリニックの手口とは

そもそも「悪徳美容クリニック」を定義することは難しい。と前置きをした上で、鎌倉統括院長は以下のように話す。

 

「基本的に医療と言うのは「倫理観」に基づきサービスを提供するものです。その「倫理観」がどこに線引きされるのかは、その「サービスの費用」そして「得られる効果」がどうか、ということで判断されるべきだと思います。その内容を事前に説明し、患者さまが納得できているかどうかが大切なことではないでしょうか」

 

とはいえ、実際に他院で起きた被害を一般人が把握することは難しい。そこで、厚生労働省などに寄せられたトラブル事例をもとに集約した、悪徳美容クリニックと呼ばれる医療機関の手口を、身体の特徴として擬人化されたのが「Dr.Beast(ドクタービースト)」だ。今回聖心美容クリニックではこの醜い姿のドクター=「Dr. Beast」を使って、悪徳美容クリニックによる問題を世の中ゴト化し、患者に対して注意喚起を行う啓蒙活動をスタートさせたのだ。強烈に描かれる「Dr.Beast(ドクタービースト)」、その特徴について、鎌倉統括院長はこう話す。

 

啓蒙活動WEBサイト:https://www.drbeast.jp/

「まず、【患者を品定めし足下ばかり見る眼】で表現しているのは、患者さまの装飾品のグレードを見て施術費用を変動させる事例です。

美容医療というのは自由診療ですので、基本的にはクリニックごとの「言い値」での価格設定となりますが、相場はあります。悪徳美容クリニックと呼ばれるクリニックでは、患者さまの持ち物や格好から「自分が良いと思ったものにはお金を出しそうだ」と感じると、「相場」の適正価格から常軌を逸した価格を提示する医療機関もあります。普段買い物をしていて、にんじん1本の相場がだいたい50円くらいなのに、とあるスーパーでは5万円です、と言われたら普通は買わないですよね。美容医療に関しても同じように考えるべきです。「あれ、おかしいな」と思ったら一度立ち止まって冷静に考える。そのためには、2~3箇所のクリニックを訪れて話を聞き、その中で自分の感覚とマッチしたクリニックを選ぶことが大事なのではないでしょうか」

悪徳美容クリニックの特徴を表現した「Dr.Beast(ドクタービースト)」

次に、【不都合な話になると閉ざす耳】。術後の問い合わせやアフターサービスを一切受け付けてくれない事例です。

美容整形は手術や処置を施したら完了ではなく、そのあとの経過が大事なんですね。基本的には術後順調に経過することが多いですが、副作用などのトラブルが起きることもあります。腫れや赤味が出たときに、医者はそれまでの経験からそれが順調な経過なのかそうではないのかを見極めないといけません。それが全て終わって初めて治療が「完了」します。

そのため、治療前にどこまでアフターケアの対応をしてくれるのか、どのくらいの頻度で診察をしてもらえるのかなどを確認しておくことが大切です。医療機関によっては治療スケジュールとして、事前に提示してくれるところもあります」

患者に安心して施術を受けてもらうための取り組み「クリティカルパス」

聖心美容クリニックでは、「クリティカルパス」と呼ばれる用紙を患者に渡している。手術当日に想定される患部の状態やその後の流れ、生活上の注意点やアドバイスに加え、診察のスケジュールもあらかじめ明示されている。
これらの「クリティカルパス」の内容は聖心美容クリニックのホームページでも公開されており、施術を検討中の方も事前に確認することができる。さらに、「アフターケアに使用する薬剤」についても、術後にどのような内服薬が処方されるかまで掲載されている。

 

「【甘い言葉で人を惑わす口】は、施術内容がホームページや広告と異なる事例です。誇大広告のように、安く見せておいて実際は高額な費用がかかるというケースですね。もちろん、ホームページなどで提示している価格通りに必ずなるということではなく、実際の患者さまの状態を見なければわからないことはあります。特に若返りの治療の場合、ご本人の「こうなりたい」を叶えるためにはご本人が希望されるパーツだけでなく、他の部分も施術をした方がいいこともあります。こういった、想定外の提案をされたとしてもそれが納得できる内容なのかどうか、そしていくつかのパーツに施術を行なう場合それぞれのパーツの施術費用が適正であるかどうかに気を付けることが大切です。

 

【嘘をいう二枚舌】。これは「効果はずっと続く」などと言ってくる事例です。美容医療自体が日本で普及し始めてまだ40~50年、ヒアルロン酸などの注入材関係は30年くらいですから、「効果がずっと続く」のを見たことがある人は、そもそもいないわけです。
もちろんメーカーごとに効果の持続期間のようなものは設定されていますが、それにも個人差があります。そのため、効果はもちろん副作用といったリスクの可能性まで、医者はきちんと説明すべきだと思います。こういったことは施術の同意書にも一応記載されてはいますが、主要リスクについては口頭で話すことになっていますので、話が無かった場合には自分から聞くことが必要です。とはいえ、初めて来たクリニックに初めて会う医者ではどうしても頭が真っ白になってしまうという方は多いですから、聞きたいことはあらかじめメモしてきた方がいいですね」

ほかにも、【肥えるだけ肥えた腹黒い私腹】として、医師がカウンセリングをしっかりと行うことなく短時間で患者を「こなす」ことや、【獲物を絶対に離さない汚い手】として、「しつこく勧誘し、契約するまで帰さない」様子などが表現されている。

被害にあっても、対処するすべはある。

それでは、万が一、事前の情報が足りておらず被害にあってしまった場合にはどうすればいいのだろうか。

 

「被害、といっても何に問題があったのかを分けて考える必要があると思います。
まずは「お金」の問題です。脱毛やピーリングのように、コースで受ける処置の契約書にサインをしても8日以内であれば、「クーリングオフ」をすることができます。もし、契約した日に施術をした場合であっても、「クーリングオフ」は適用されますのでご安心ください。後日に治療をする場合、8日以上経っているとクーリングオフはできませんし、すでに施術した部分に関しては取り消すことはできませんが、中途解約で未処置分の返金は可能です。
次に「施術の内容」の問題についてですが、事前にどのような完成形になるのか、持続効果はどのくらい持つのか、例えばリフトアップで使う糸が身体に吸収されるのはどのくらい時間がかかるのか、などをしっかりと聞いておくことが必要です。当然医師は全て説明するとは思いますが、聞きたいことが漏れていたり、気になることが聞けなかったりということもありますよね。そうならないためには、やはりご自身であらかじめ質問をメモに書くなどしておくことが必要です。
さらに、ホームページに書かれている情報もチェックしておきましょう。たとえば「ヒアルロン酸」の場合、どこ産のものなのか、副作用や効果はどのくらいあるのかなどできるだけ詳細に書かれているところが安心です。粗悪なものを使っているクリニックも稀にありますので」

そして、最も重要といえる医師の腕については、口コミサイトやホームページ上のプロフィールを確認することが大切だという。

 

「一番気になるのは医師の腕がどうなのかと言うことだと思います。なかなか面と向かって「あなたの腕はどうなんですか」とは聞けませんよね。「症例数を聞け」なんてことも良く聞きますが、いくらでも嘘をつくことができてしまうので、口コミサイトも参考になります。口コミサイトには上手くいかなかった時の書き込みが多いのですが、あまりにも頻繁に悪い口コミがかかれている先生は避けた方がいいでしょうね。
そして、参考になるのはホームページに記載されている医師のプロフィールです。それまでの経歴や医師としての学会活動の履歴が記載されています。これらがすなわち腕を証明する、というわけではありませんが幅広い活動をしている医師であればそう大きく外れることはないと思います。

 

最後に「アフターケア」についてです。たとえ同じ「埋没法の二重手術」を行なう場合であっても、治療を行う医師によってそれぞれその技法が異なりますし、患者さまの希望や状態などによってアレンジして行なっています。そのため、その治療に特有の経過や修正が必要な場合、その方法を一番知っているのは主治医です。ですので、基本的に術後の経過は主治医が見るべきだと思います。
とはいえ、どうしてもそのクリニックには行きたくないと患者さまが考えていたり、そもそも聞く耳を持たない医師であった場合には別のクリニックに行く必要がありますよね。そういった際には、術後のトラブルの対処が得意な美容クリニックもありますから、冷静に情報収集をしっかりと行い、今度こそ良いクリニックを見つけるようにしましょう。
ここで大切なのは、あくまで能動的に動くことです。ひとりで抱え込んでいると、どうしても美容整形自体を後悔してしまう方向に考えてしまいがちです。腫れなどダウンタイム中は特に。でも、実は医師にその不安を打ち明けると、「全く問題のない腫れですよ」ということもあります。特に美容医療の治療は、なかなか周りの家族や友人には話しづらいですから、相談できる医療機関に聞いてみることは大切だと思います」

 

どうしても、施術を受けた病院に行きたくない場合に備え、多くはないが「他院修正」として受け入れを行なっている美容整形クリニックもある。聖心美容クリニックでも他院で失敗してしまったと感じている方の受け入れや、時に外国でのずさんな手術に悩んでいる患者の受け入れを行なうだけでなく、ホームページ上でも具体的な修正方法や費用について公開している。

インパクトのある表現はあえて、世の中ゴト化のため。患者と同業者、双方に呼び掛ける

今回発表された、「#RealUgly 本当の醜さにメスを。」という悪徳美容クリニックを擬人化した映像はかなりインパクトがある。冒頭に『ショッキングな「現実」が描かれています』と注意喚起がなされているように、思わず目を背けたくなるような醜い姿の「Dr.Beast(ドクタービースト)」だが、このような形で悪徳美容クリニックの存在を伝えようと思った狙いはどこにあるのだろうか?

「最近だと有名芸能人の方が整形でご自身のコンプレックスを解消し、笑顔を取り戻されたという良いニュースもありましたが、「人を幸せにする」という「美容医療本来の役割」の需要は高まっていますし、近年は海外で美容整形を受けられる方も増えているように、美容整形はますます身近なものになっていくと思います。一方で、美容整形が身近になり、美容クリニックの数が増えるにつれて、Dr. Beastのような悪徳美容クリニックによる被害もどんどん増加しています。医療は社会貢献・ボランティアではありません。特に保険のきかない美容整形は言い値での価格設定のため、ビジネスとしてクリニックを成立させるためには患者さまに来てもらわなければいけない。その葛藤の中で、本来の医師としての志や倫理観を忘れ、私利私欲にまみれて醜い手口を使って患者さまを喰いものにしようとする、Dr. Beast化した悪徳美容クリニックが存在する悲しい「現実」があります。だからこそ、業界内から改めてこのショッキングな「現実」を発信し、患者さまへは注意喚起を、悪徳美容クリニックには自省を、それぞれ促すことが大事ではないかと思い至りました。また、この業界内に身を置く私たち自身に対しても、Dr.Beastを反面教師に、今回の映像では戒めの意味も込めて「私たちは絶対に、醜くなるな」というメッセージを掲げています。あえて、このような表現にしたのも、ショッキングな「現実」をそのまま、危機感を持って伝えたかったからですし、美容整形の被害を減らすための啓蒙活動は厚生労働省や消費者庁、学会もずっとホームページなどを通じて行っており、私たちも長年行っていますが、それでも減らない現状に対して、患者さまにも厳しく「選ぶ目」を持ってもらうためには、まずはこれだけ強烈なインパクトで【世の中ゴト化】していく必要があるのではないかと思ったからです。」

 

そう話す鎌倉院長は、聖心美容クリニックでもこのような被害事例が起きないよう、患者に安心して施術を受けてもらうための様々な取り組みも実施している。

「『とことん真面目に、美容医療』のスローガンを昨年から掲げ、聖心美容クリニックの9院すべてで発信しています。我々美容クリニック側と患者さまの双方がきちんと内容への理解と納得をした上で、やるなら愚直にしっかりやろう、という部分を「とことん」という言葉に込めています。

当院ではこれまでも真面目に愚直に診療を行ってきましたが、あえて文章にすることで、医師含め働くスタッフ全員の意識付けを行っています。

「とことん真面目に」の例ですが、たとえばその日に手術された患者様には24時間体制で施術後の緊急電話対応をしています。また、ホームページ上で無料のメール相談を受け付けています。相談・検討の段階でも医師が返信をしていますし、術後の方は主治医が返信しています。さらに、リスクについても真面目に正直であるべきだと考えているため、それぞれの施術に対する副作用のリスクやクリティカルパスについてホームページで公開しています」

 

さらに、美容整形業界のあるべき姿について、美容整形は幸福医学であり、幸福でなくなってしまうことがあれば意味がないと鎌倉院長は話す。

 

「病気やケガなどに対して行われる治療は「量」の医療であり、長生きするためのものです。一方で、美容医療は幸福医学なんて言われることもありますが、その人を幸せにするための医学であり、「質」を上げるのが使命となります。それなのに、美容整形で幸福でなくなってしまうことがあれば意味がないですよね。

世界の美容医療の症例数が増えてきている中、社会に対して担う責任はどんどん大きくなると思います。そのため、医療機関側も、受ける側も正しい方向へ向かうべきだと考えています。今回のような活動を通じて、美容クリニック自身が身を正していくこと、そして治療を受ける側の厳しい目が増えることの両方の意識改革が進めば、悪徳美容クリニックは淘汰されると思っています」

 

クリニック側だけが自らを正すだけでは、悪徳美容クリニックを完全に撲滅することは難しいかもしれない。そのため、美容整形を受ける側の私たちも情報収集力を高め、その治療内容について少しでも不明な点や疑問に思うことがあれば医師に確認をしてから決断をするという能動的な姿勢を持つようにしたい。