”服よりも大切なことがある”そこに新たな市場がある

株式会社レナウン

代表取締役社長 執行役員 / 北畑稔

ブランドの二極化が進む一方で、多くのブランドの苦戦が続くアパレル業界にあって、1902年に創業した老舗レナウンの動きが活発だ。指揮を取っているのは、47歳で社長に抜擢された北畑稔氏。長年の海外勤務で培った即断即決の行動力と、長期的なビジョンで新しいサービスを展開し、眠っている市場を開拓しようとしている若きリーダーに話を伺った。

PROFILE

代表プロフィール

1962年3月3日、東京都生まれ。85年、明治大学商学部卒業後、レナウン入社。レナウンアメリカ、レナウンホンコンなど海外経験が長く、レナウンアメリカの社長も経験。2007年、海外事業部ゼネラルマネージャー、09年2月、経営企画部長を経て、同年5月に社長就任。日本アパレル・ファッション産業協会理事長を務める。

目次
  • 1. 地方営業とニューヨークで学んだトップの資質
  • 2. 即断即決は、スピーディーなビジネスには必至
  • 3. 「一人十色」から「一人二極化」の時代に
  • 4. サービス利用型ビジネスを強化
  • 5. Leaders ITEM

地方営業とニューヨークで学んだトップの資質

東京都に生まれ育ち、草野球や虫捕りに夢中だった〝昭和の子供〟でしたね。大学時代はゴルフ同好会に所属し、各大学の同好会を繋ぐ連盟の仕事もして委員長も務めていました。30サークル、1200人ほどが加盟する組織だったので、その舵取りを任された経験は今に活かされているのかもしれません。社会人になってからもゴルフは続けていましたけど、社長に就任する際、「好きなことを一つは断つ!」と願掛けして、道具も一式処分しました。10年近くラウンドしていません。

 

レナウンに入社したのは、アパレルの仕事に携わりたかったからです。婦人服の百貨店営業を1年ほど経験した後、地方の専門店やブティックの営業を担当しました。分業制が確立している大手百貨店営業と異なり、地方で個人経営者を相手にビジネスを行うためには全て自分一人で完結させなければなりません。お客さまのニーズを察して商品を提案し、商談して、クルマに商品を積んで運び、代金をいただいて帰る。はじまりから終わりまでを全て一人で行ない、責任も負わなければなりません。しかし、自己判断と自己責任で完結させるビジネスこそが、実はユニバーサルなスタイルであると今は思います。貴重な経験をさせていただきました。

即断即決は、スピーディーなビジネスには必至

26歳でニューヨークの現地法人に出向しました。入社した時からいずれは海外で勤務したいと公言していたので、勤務後に自費で英会話スクールに通うなど、準備はしていました。

 

ニューヨークでは、Jクルーなど多くの米国ブランドのライセンス事業に携わりました。デザイナーであり、ブランドの創設者でもあるノーマカマリともよく仕事をしましたね。アメリカでは日々、経営者、創業デザイナー、あるいは弁護士、会計士など、意思決定が出来る立場のプロたちと接していましたが、彼らは打ち合わせした案件を会社に持ち帰るのではなく、その場でYES or NOと判断できる人たちです。ビジネスにはスピードが重要だと教えられました。

 

当時はまだ日本では馴染みの薄かった、ダイバーシティーという環境で若い頃から仕事を出来たこともいい経験でした。人種や宗教、生活習慣の異なる人々をまとめていくことは、今の日本の経営者に最も求められる手腕の一つですから。

 

海外で仕事をするとき一番大切なのは、自分の考え方や立ち位置をハッキリ主張することだと思います。その結果、激しい議論の応酬になったりするわけですが、それが当たり前。海外ではお互いの意見や立場を表明し合ってから、ようやく仕事が始まるケースが非常に多い。議論が平行線になってから、ようやく交渉が始まるのです。

「一人十色」から「一人二極化」の時代に

2009年5月、47歳で社長に就任しました。取締役でもない僕が抜擢されたのは社歴の大半が海外事業部だったからでしょうか(笑)。当時、弊社は大胆な改革を断行する必要に迫られていましたので、半分、外国人のような僕なら、妙なしがらみが無いと判断されたのかも知れません。実際、子会社、関連会社の売却、物流を外部に委託する3PL化(サードパーティー・ロジスティクス)への移行など改革に着手しました。さらに、2010年には中国の繊維大手の山東如意科技集団との資本提携を行いました。

 

いずれも、これを成功させなければ未来に繋がらないという覚悟があっての判断です。背中を押してくれたのは、地方営業や海外勤務で出会った企業のトップの方々の即断即決の姿勢です。今のビジネスにはスピードが何よりも求められることを学び、実践しています。

 

ひと昔前まで、小売業界では「一人十色」という言い方で消費傾向を分析していました。消費者が各自の好みで商品を選択していた「十人十色」の時代を経て、選択にもなれてきて時や場所、状況によって“あれも・これも”と選択を変える「一人十色」の時代を迎えたのだと。しかし、さらに進み消費者の傾向は現在「一人二極化」の時代に入ったと考えられています。

 

簡単に言えば、「あれか・これか」。高級ブランドとファストファッションしか選ばれなくなっているということでしょうか。どちらかに偏っている消費者もいれば、二極を使い分けている消費者もいます。その反動として、我々のような総合アパレルメーカーが担ってきた、中間ゾーンの商品が売れなくなってしまいました。中間層をターゲットにしていたメーカーは長年、トレンドや消費者の好み、懐事情などを分析し、「これなら売れるだろう」と予測し商品を売り切ろうとしてきましたが、その戦略がお客さんに見透かされてしまったとも言えます。我々はこの二極の間にお客さまを再び取り込み、「一人十色」という消費の流れを再び作る必要があるのです。

サービス利用型ビジネスを強化

消費の流れを再び作るためには、お客さまの課題をどれだけ的確に解決しているのかを見極めていかないといけません。弊社ではまず、Eコマースのサービスを強化しました。他のアパレルと同様、我が社も今までは店舗に足を運んでくださる方をメインのお客さまにしていました。しかし、忙しくて時間がない、何を選んでいいのか分からないという方もたくさんいらっしゃいます。

 

そこで、自社のファッション通販サイト「R-online “The Shop”」で、アクセスが増える19時から23時までの間にチャット接客サービスを開始しました。お客さまからのファッションに関する相談をスタイリストが応対します。このサービスにより、今まで接点の無かったお客さまと新しいお付き合いが始められると期待しています。今後は実店舗で蓄積されるデータを活用したAIの導入なども検討していきます。

 

さらに、2018年から、スーツの提供、クリーニング、保管、衣替え、引き取りまでを行なう月額定額制サービス「着ルダケ」のサービスを開始しました。春夏・秋冬とシーズンごとに2着もしくは3着のスーツをお届けし、季節外れのスーツは弊社でクリーニングをして、次の着用まで保管させていただくサービスです。シャツやネクタイのご提供も可能です。

 

他人が着たスーツをシェアするのではなく、“自分専用”のスーツをネットで選んでいただけるのがポイントだと思います。また、限られた住宅事情の中で、夏にクローゼットで眠っている冬のスーツは何の役に立っているのだろうか?と考えることがよくあるのですが、その問題にも一石を投じられたらいいですね。

 

アパレル業界はこれまで、店頭に足を運んで購入してくださるお客さまを前提としたビジネスに重点を置いてきました。しかし、仕事が忙しい、どこで何を買ったらいいか分からない、服よりも大切なことがある、そういった課題を抱えている方も多い。また、特に男性は服を所有することに興味の無い方も多い。我々はこうしたサイレントマジョリティにアプローチするため店頭での販売を前提としない「サービス利用型ビジネス」を強化していきます。Eコマースも「着ルダケ」もより多くのお客さまに長くご利用いただけるよう努力していきたいですね。

Leaders ITEM

社長就任以来、全国の店舗に足繁く通っているが、出会ったスタッフ全員の名前を手帳に記している。ネットビジネスを積極的に展開する一方で現場を大切にする北畑氏らしいリーダーズアイテム。

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BUSINESS

事業内容

アパレル製品および雑貨の企画・製造・販売

COMPANY

会社情報

設立 2004年3月1日(2006年3月1日商号をレナウンに変更)
本社住所 東京都江東区有明三丁目6番11号 TFTビル東館6F
資本金 184億7,100万円
従業員 942名(平成30年2月期 連結)
売上高 66,396百万円 (平成30年2月期連結)

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