マッチングテクノロジーで‟機会の平等”をめざす

株式会社じげん

代表取締役 社長執行役員 CEO / 平尾 丈

19歳でITベンチャーを起業、23歳でリクルートグループの最年少役員、25歳で社長、30歳で株式上場、35歳で東証一部…。圧倒的な量を質に転化し、濃密な半生を駆け抜けてきたリーダーがいる。じげん代表の平尾丈氏だ。同社はリクルートグループから独立したIT企業。2006年の創業から現在まで、11期連続で増収増益をはたしている。リーダーの足跡をたどると、じげんの強みが見えてきた―。

PROFILE

代表プロフィール

1982年、東京都生まれ。海城中学校・高等学校を経て、慶應義塾大学環境情報学部に進学。在学中に数々のビジネスプランコンテストで優勝し、2社のITベンチャーを立ち上げる。2005年、株式会社リクルートに新卒入社。2006年、同グループの最年少取締役として関連会社(現:株式会社じげん)の創業に参画。2008年、代表取締役社長に就任。2010年、MBOにより独立し、現社名に変更。2013年、東証マザーズに上場。2018年、東証一部へ市場変更。創業から11期連続で増収増益を果たしている。

目次
  • 1. 社長仲間と英語を勉強。‟四者四様”の負けず嫌い
  • 2. ロールモデルを探すため、さまざまな職業の1万人と会う
  • 3. 23歳でリクルートグループの最年少役員、25歳で社長に
  • 4. 既存事業を伸ばしながら、新たな土地を耕し続ける
  • 5. 貧乏の劣等感が消えた後、社会貢献の欲求が芽生えてきた
  • 6. Leaders Item

社長仲間と英語を勉強。‟四者四様”の負けず嫌い

―平尾さんは小さな頃から負けず嫌いと聞きました。最近もその性格は発揮されていますか?

 

3ヵ月ほど前から、英語のレッスンを毎週受けています。同年代の社長仲間と一緒なので、そこで負けず嫌いな性格が出ていますね。

 

もともと私は理系で、英語を捨てていました。でも、経営者としてグローバルに活躍する人と話すようになり、だんだん悔しくなってきたんです。自分の実力が世界でどれくらい通用するのか試してみたい―。そんな思いにかられて、英語を習いはじめました。

 

メンバーは同年代の経営者仲間4人。いずれの経営者も飛ぶ鳥を落とす勢いで会社を伸ばしている。学ぶ姿勢に性格の違いが表れて、おもしろいですよ。

―どんなところが違うのでしょう。

 

1人目は秀才タイプ。東大の大学院まで出ているせいか、自分なりの学習メソッドを構築しています。2人目は優等生タイプ。毎日コツコツ勉強して、着実に成長しています。3人目はコミュニケーション能力の高いタイプ。先生にカタコトの英語で伝わったので、「もう勉強する必要がない」と2日でやめました(笑)。

 

そして、私は超一夜漬けタイプ。瞬発力が高くて、要領がいいと言われます。すると先生にほめられて、ほかの社長が悔しがる。「平尾さんに負けたので、もっと勉強します」なんて宣戦布告してくる人もいる。結局、みんな負けず嫌いなんですよ。切磋琢磨しながら勉強ができるのはとても良い環境だと思っています。

ロールモデルを探すため、さまざまな職業の1万人と会う

―大学時代は「輝いている大人1万人に会う」という計画を実行したそうですね。そのなかで印象深い思い出を聞かせてください。

 

私は学生起業家に憧れて、SFC(慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス)に入りました。でも、理想と現実のギャップを目の当たりにして…。改めてロールモデルを探すため、「1万人に会おう計画」を立てました。

 

参考にしたのは「将来なりたい職業」や「就職人気企業」のランキング。上位から順にリストアップし、いろいろな人に会いました。経営者、サラリーマン、パイロット、プロボクサー、芸能人、政治家…。カッコよかった人も、そうじゃなかった人もいます。

 

特に印象深いのは、サイバーエージェントの藤田晋さん。正規ルートじゃアポがとれないので、何度も試行錯誤をしながら、「僕のビジネスプランを聞いてください!」と突撃するわけです。

―結局、本人と話せたのですか?

 

はい。2~3分の立ち話でしたが、胸に刺さる言葉をいただいて。「若さは強みじゃなく、弱さでしかない。ただ、若いほど機会は多い。弱みを補う機会をつくって、がんばりなさい」と。やはり量をこなさなければ、若さを強みにできない。それまで経験的に感じていたことが、確信に変わりました。

 

ソフトバンクの孫正義さんには、学生が集まる勉強会でお会いしました。そこでわかったのは、孫さんクラスの方でも猛烈な努力をしていること。改めて、自分磨きが必要だと痛感しましたね。その日から8年後、孫さんの後継者を養成する「ソフトバンクアカデミア」へ入校し再会しました。

 

―すでに当時は、じげんの社長ですよね。

 

アカデミアの事務局の方にも理由を尋ねられました。「8年前の自分との差分を確かめに来ました」と説明すると、納得してもらえて。直接お話しをお聞きすると文脈がわかるので、学びが大きかったですね。藤田さんも孫さんも、若いときに相当苦労されている。私も若さと貧乏がコンプレックスだったので、感じるものがありました。

23歳でリクルートグループの最年少役員、25歳で社長に

―その後、平尾さんはリクルートに新卒で入社。23歳の若さで関連会社(現在のじげん)の取締役に就任しています。年長者が多い環境で苦労しましたか?

 

いい意味で洗礼を受けました。大学時代にITベンチャーを起業したり、大きなビジネスプランコンテストで優勝した経験があったので、‟10年に1人の逸材”と言っていただいて。ひとつ上の先輩に「学生で1位でも、オレたちの世界で1位とは限らないぞ」なんて冷水を浴びせられたこともありました。「あなたには負ける気がしません」と言い返してましたけど(笑)。

 

23歳で関連会社の役員になってからは、学生ベンチャーの頃のスタイルを変えていかに周りの方々が力を発揮できるようにするか考えるようになりました。マネジメントに苦労したからこそ、この時期の経験は財産。もしも学生起業家のままワンマン経営で突っ走っていたら、どこかでつまずいていたでしょう。

 

―25歳で社長に就任した後、すぐに事業を転換しています。なぜ、現事業の「※ライフメディアプラットフォーム」を選んだのですか?

 

※ライフイベント領域(求人/住まい/自動車など)及び日常消費領域(旅行/美容など)において、複数のWebサイトの情報を一括検索できる集約サイトなどを展開し、ユーザーがよりよい生活を送るための選択をサポートする

理由は4つあります。1つめは、選択と集中。当時も求人広告のマッチングをしていましたが、「B to C」モデルでした。企業と個人の双方に、営業やマーケティング活動をしなければなりません。だけど、社員は6人しかいない。そこで「B to B to C」へ事業モデルを転換し、サイト制作やデータアグリゲーション(集約・統合)にリソースを集中しました。

 

2つめの理由は、競合企業の不在。リクルートのマーケティング局に在籍していた頃、まわりに相談相手がいないことに気がついたんです。メディア企業、広告代理店、メディアレップ、Web制作会社…。ネットメディアに詳しい人はいるけれど、集客のアドバイザーがいない。だったら、そこを専業でやろうと。

3つめの理由は、世界的な金融危機。好景気のときは広告宣伝費が増えますが、不景気のときは財布のヒモが固くなる。その際に求められるのは、費用対効果です。コンバージョン(求人応募数など)に応じて課金すれば、既存のプレイヤーに勝てると考えました。

 

4つめの理由は「Web2.0」の潮流。当時はGoogleやAmazonをはじめ、さまざまな企業がWebサービスのAPI(アプリケーションの機能を利用するためのインターフェース)を公開しはじめた頃。データが外に出るので、集約サイトを構築しやすくなったんです。

 

この分野では、当社がオンリーワンだと思いますよ。最近は何社か参入してきましたが、それは私たちの選択が正しかった証拠。不動産情報の集約サイトにおいても、国内最大級の規模にまで成長しております。

既存事業を伸ばしながら、新たな土地を耕し続ける

―2006年の創業から増収増益を続けている要因を教えてください。

 

当然、ビジネスモデルや市場規模は重要です。そのうえで継続成長の要因は、戦略的な事業投資。毎年、新規事業を仕込んだり、M&Aをしたりしています。この戦略は起業家の先輩方から学んだもの。成長の壁にぶつかるITベンチャーのほとんどは、潤沢な資産を寝かせていました。

 

当社は新しい土地を耕して、新しい建物を建て続けています。バッターボックスに立ち続けて、打率を上げる。空振りした損失以上に、既存事業を伸ばす。伸びきってからじゃ遅いので、つねに両方必要なんです。

 

そして、バリューサイド(価値創出の視点)とコストサイド(費用対効果の視点)を考えて、最適な順番で最適な場所にむかっていく。言葉でいうのは簡単ですが、なかなか大変ですよ。

―‟言うは易く行うは難し”ですね。では、今後の目標を聞かせてください。

 

当社は企業理念である「生活機会の最大化」を目指しています。資本主義は優れたシステムですが、機会は平等じゃありません。だから、すべての人が主体的に生きていける生活のチャンスを最大化したいのです。

 

私たちが磨いてきたマッチングテクノロジーは汎用性が高く、求人領域だけにとどまりません。不動産・自動車・旅行など、幅広い生活分野のNo.1プラットフォームになりえます。その一環として、最近は「B to C」領域にも進出。あの頃と違って、いまは経営リソースが豊富ですから。

貧乏の劣等感が消えた後、社会貢献の欲求が芽生えてきた

―なぜ、生活機会の最大化をめざすようになったのですか?

 

根っこにあるのは、私自身の原体験です。貧しい家庭に育ち、少年時代は人をうらやんでいました。人生の主役は自分のはずなのに、まわりと比較ばかりして…。当時は平尾家に生まれたことがイヤでしたね。

 

祖父は会社を経営していたけれど、私が小さな頃に倒産。父は定職につかず、塾講師の母が家計を支えていました。お金がないので、大好きなゲーム機を買ってもらえない。そのコンプレックスが爆発して、中学生のころはゲーマーでした。友だちの家で集中的にプレイして、ひたすら腕を磨いたんです。

 

起業した理由も、お金持ちになりたかったから。母にラクをさせたいし、父のようにはなりたくない。大学に進学しても、コンプレックスは消えませんでした。慶應には、社長や医師の息子、家柄のいい貴族のような人が多かったので。

 

―そういうエネルギーが根本にあって、理念が生まれたわけですね。

 

「マズローの欲求5段階説」は正しいと思います。生理的欲求からスタートして、安全、社会的、承認、自己実現の欲求へと発展していく。私も稼げるようになってから、お金に執着しなくなりました。実は6段階目に利他の精神を掲げる自己超越欲求が存在していて、私も「まわりの人たちを幸せにしたい」といった気持ちが芽生えてきたんです。

 

年齢も影響しているでしょうね。もう36歳なので、若手じゃない。そろそろ後進を育てる時期にさしかかっています。

 

―立場を変えて、昔の自分に会えるかもしれませんね。ロールモデルを必死に探していた平尾さんのような学生に―。

 

そうですね。藤田さんくらい、カッコいいかどうかはわかりませんが(笑)。これからも、できる限り社会へ貢献していきたいと思います。

Leaders Item

エルメスの赤いネクタイ。2013年11月に株式上場を果たした際、社員からプレゼントされた。平尾氏は「誕生日と上場日が近かったので、どっちのお祝いかわかりません」と笑顔で語る。最近は‟勝負ネクタイ”として、M&Aの交渉時などに身につけている。

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BUSINESS

事業内容

〇ライフメディアプラットフォーム事業

COMPANY

会社情報

所在地:東京都港区虎ノ門3-4-8
設立:2006年6月
資本金:25億2,700万円
従業員数:359名(2018年9月末時点:連結、契約社員以外の非正規除く)
売上高:102億6,700万円(2018年3月期:連結)

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