信用の再創造で社会を変えていく

OLTA株式会社

代表取締役CEO / 澤岻 優紀

日本初のオンライン完結型ファクタリングサービス「クラウドファクタリング」を提供するOLTA株式会社は、サービス開始以来1年半ほどで申込金額累計が120億円を突破した。
「あらゆる情報を信用に変え、あたらしい価値を創出する」をミッションとして掲げる代表取締役CEOの澤岻優紀氏に、OLTAの事業における強み、今後のビジョンについてお話を伺った。

PROFILE

代表プロフィール

1987年沖縄県生まれ。神戸大学経営学部卒業。2012年4月に野村證券株式会社に入社し、投資銀行部門にて主に上場事業会社の資金調達業務に従事。2016年10月に起業準備のため退職し、アクセラレーションプログラムを経て2017年4月にOLTA株式会社を創業。

日本初のオンライン完結型ファクタリングサービス「クラウドファクタリング」を提供するOLTA株式会社は、サービス開始以来1年半ほどで申込金額累計が120億円を突破した。
「あらゆる情報を信用に変え、あたらしい価値を創出する」をミッションとして掲げる代表取締役CEOの澤岻優紀氏に、OLTAの事業における強み、今後のビジョンについてお話を伺った。

着想をもとに様々なものを組み合わせ、新しい価値を作っていく

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――OLTAの主な機能、クラウドファクタリング事業についてそれぞれ教えてください。

クラウドファクタリングとは、中小企業が持っている売掛金、主にBtoBの取引で発生する請求書を1、2か月後の入金を待たずに弊社に売って頂くというサービスで、それをオンラインで提供するという事業です。オンライン完結型でこういったファクタリングサービスを提供する事業は、弊社が日本では初めてですね。

2017年の秋にクラウドファクタリングのベータ版をローンチしまして、約1年半提供する中で約120億円の請求書を売りたいという申込がありました。審査をして買い取りを行ってきた結果、審査の能力、与信能力が高められたので、その仕組みを金融機関や他の企業にも提供していこうと思っています。

この事業を始める際に、マーケットが数兆円規模はあるなと感じていました。ですから我々一社だけで資金調達をして買い取っていこうとしてもどこかで限界が来るんです。だから戦略として、弊社が自社で請求書を買い取っていくだけでなく、その裏側にある与信能力を提供し、他の金融機関やプラットフォーマーの方々と連携してファクタリングのマーケットを広げていこうと考えました。

魅力的なマーケットにはいずれ競合が出てくるものだと思っていますので、競合相手を協業プレイヤーに巻き込んでいこうと。銀行さんにもフィンテックとして興味を持って頂けているので、そうしたアライアンスを通して与信能力を提供していきたいと思っています。

与信モデルについては、創業時に三菱UFJフィナンシャルグループのアクセラレーションプログラムに採択して頂きました。ビッグデータの支援を受けていまして、お客様から実際に頂いたデータも蓄積していますので、これらを組み合わせてモデルをどんどん改良しています。

お客様から頂いたデータとは、決算書とお客様が持っている入出金データです。金融機関の審査は過去の決算書主義なので、現時点での会社のステータスがわからない状態では審査の精度が低くなります。我々はこれに加えて入出金のデータを頂いているので、リアルタイムの会社の動きを把握したうえで与信判断ができます。

決算書という、企業の一時点を切り取ったスタティックなデータと、入出金のダイナミックなデータを組み合わせてモデリングするという原理で、その財務データに基づく与信モデルを今作っているところです。

――OLTAならではのこだわりを教えて下さい。
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お客様に選ばれる金融サービスでありたいという思いから、ユーザーエクスペリエンスにこだわりを持ってやらせてもらっています。お客様に「はやい、かんたん、リーズナブル」であることをお約束しています。

あとは、新しい金融サービスに対しては、心理的ハードルが高いと思います。なので、UIも2018年の年末ごろから、中小企業に寄り添うパートナーとして、バディみたいな存在としての犬をシンボルマークとしてロゴに添えています。

金融機関のロゴって無機質な、抽象的で中立的かつクールな感じが多いので、もう少しハートウォーミングなイメージと、ハードルを高く見せすぎないようなデザインにこだわり抜いてきました。

与信モデルにAIを使っているといったことは、金融機関や各ステークホルダーの方々に対しては裏付けのある競争優位として説明させて頂いています。でも、お客様からすれば早くて簡単で安ければいいので、それはあまり関係のないことです。

地方にいらっしゃるお客様はネットリテラシーが必ずしも高いとは限らないところがありますので、ユニバーサルに作っていながらも、個別のお客様の悩みに寄り添ってやらせて頂くところがサービスに対するこだわりです。

組織やソフト面に対するこだわりは、私は野村證券出身なんですが、弊社にはもちろんそれ以外の金融機関出身の人もインターネットサービス系の会社出身の人もいるので、あえて色をつけずに一つの目的、ミッションに対して愚直に向かい合えるチームを作っていきたいですね。

私の個人的な組織観で言うと、自分にしかできないことと自分じゃなくてもいいことを分けて考え、専門家が入ってくればその方面に強い人に仕事を渡していきたいと思っています。強みを生かしつつ伸ばしつつという、強みにフォーカスした組織だと思います。

周囲を観察し、視点を切り替えたことで意識が広がった

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――起業以前には野村證券の投資銀行部門にて、主に上場事業会社の資金調達アドバイザリー業務に従事されていたと伺っております。なぜ金融関連の仕事に就かれたのでしょうか。

就職活動では自分が成長できそうかという観点で見ていました。逆に、志とか夢とか、明確な展望があまりない就活生でした。
一方ですごく楽観的な自分もいて、時が解決するというような感覚もありました。新卒のタイミングでは選択を先延ばしにしたというのが正しいと思います。しかるべき選択のタイミングで望む選択肢が選べるように、自分が強くなることが重要だと思っていたので、自己成長ができそうだからという理由で野村證券の投資銀行を選んだところがありました。

採用枠は13人しかなくて、他の同期は自分より優秀な方たちだったので、何故内定がもらえたのか僕自身がわからなかったですね。
でも、就活って選ばれるものでもあるから、選ばれた者として全力で働けば成長できるんじゃないかと。いずれ自分が何かやりたいと思って、清水の舞台から飛び降りようと思った時に飛び降りられるようになっていればいいかなと思いました。

――今まで金融以外の業種のお仕事の経験はお聞かせください。

野村證券を辞めて起業準備期間としてとった半年の間に、ベンチャーキャピタルとベンチャー企業でアルバイトをさせてもらっていました。起業するので丁稚させてくださいと申し出まして、ベンチャーキャピタリストの横でメモを取るなどキャピタリストの付き人をしていました。

会社員時代はお客様資金調達の単位が百億円規模という世界を見ていたので、それを基準に物事を考えたらベンチャーはうまくいかないと思ったのです。

キャピタリストの横についていれば投資を受けたいベンチャー企業がたくさん相談に来るので、何を見ていてどういう思いで会社を作りたいのか、会社をどう大きくしたいのかについて、話を聞きながら勉強しました。

もう一方のベンチャー企業でのアルバイトは、知り合いの方に誘って頂きました。フィンテック企業だったんですが、創業数年の小さな規模の会社に入ってみて、実際に会社を作るということがどういうことかを垣間見させてもらいました。一年ぐらい起業準備期間を取ろうとしたんですが、半年ぐらいでアクセラレーションプログラムが始まったのでそこで、アルバイトは切り上げた形となりました。

――OLTAを作るきっかけとなったのは、実際にご自分でやってみようという、突き詰めてみたいという動機だったのでしょうか。

起業準備中にBtoCの起業案がいくつか出てきたのですが、B向けのサービスでファクタリングをよく調べてみると、中小企業の調達環境が長い間変わっていないことに気がつきました。

大企業であれば、株式、社債、融資調達など様々な資金調達手段を適切なタイミングで「選ぶ」ことができます。一方、中小企業は銀行借入に対する依存度が非常に高く、資金調達手段を「選ぶ」ことはおろか、小規模な会社や社歴が浅い会社にとっては唯一の選択肢である銀行借入ですら困難な場合があります。

だから中小企業にとって選択肢がある調達環境が作れないかと考えました。その結論がオルタナティブファイナンスです。

企業がベンチャーキャピタルから融資をしてもらうような伝統的な調達ではなく、クラウドファンディングや仮想通貨など代替的な手段で資金調達をする手法が広がってきている中、ファクタリングという手段をアップデートできるのではないかと考えて、落とし込んだ形です。
――サービスの立ち上げから、早々に累計120億円の申し込みがあったと聞いていますが、これは澤岻さんから積極的にマーケティングされたのですか?

基本的にリスティング広告で顧客獲得をしていきました。セールスやオフライン広告はやっていませんでした。
2017年の11月にスタートした時にはどのくらい集まるかわからなかったので、ステルスでスタートしました。マーケティングで広告費に対してどれだけ反響がくるか様子をみながら、皆でこつこつやった結果、申込額が増えていった形です。

ただこれは我々が戦略的かつ戦術的にやった結果かというとそうではなく、ファクタリングを知っているお客様はまだ顕在層で、既存のファクタリングとはちょっと違うぞと思って頂けた方を集客できているだけなので、まだ需要のポテンシャルはあると思っています。
今まさに広報に力を入れたい時期で、メディアの力を通してお客様への認知度を高めている段階です。金融機関もお客様としてステークホルダーにいらっしゃるので、金融機関向けにも発信させて頂いています。

「あらゆる情報を信用に変え、あたらしい価値を創出する」というミッション

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――いいことばかりではなく困難な出来事もあったと思いますが、どのように乗り越えられましたか。

常に考えこんでしまうので、考えるのをやめるルーティーンを持っています。なんてことのない方法なんですけど、お酒を飲んでくだらないテレビ番組を見て気分転換していますね。経営者として改めないといけないことかなと考えていましたが、フェイスブックCEOのシェリル・サンドバーグ氏も寝る前にくだらないテレビを見ると言っていたので、いいかなと思っています(笑)。

思い悩むこととか課題というものは所与だと思うので、今はこの悩み、明日はこの悩みというふうに、悩みの慣れをどんどん積み重ねています。

――起業されてまだ2年ということですが、ご自身がもっとも人として成長されたと思うことは何でしょうか。

起業するまでは自分の判断を信じる傾向が強くあったのですが、起業してからは自分の判断を信じすぎないようにしています。自分が間違いを犯すこともあるので、自分が着地点を見つけていても周りの意見を聞いたり、採用活動ならメンバーにも会ってもらうという形で、いったん保留するという思考が身につきました。

自分の行きたい方向性とか、リーダーとしてみんなを率いていきたいという思いはあるんですけど、最短ルートで目的地に行くのではなくて、あえて皆で寄り道して納得してもらいながら着地点に向かいます。

会社員時代はお客様や上司が求める期待値にすり合わせていましたが、今は期待値を提示する側なので、自分だけで決めるよりも皆が気持ちよく動けるように考えてもらったほうが早いと思うことは増えました。それは成長だと思いますね。

――ファンドボックスが日本進出も視野に入れている、というインタビューがありましたが、もし進出してきたらどのように対抗されるのでしょうか。

今、我々はファーストムーバーとして走らせてもらっているので、この時間をどれだけ使って後続を引き離せるかだと思っています。金融機関からみて純日本のプレイヤーと組むにしろ外資のプレイヤーと組むにしろ、それぞれメリットもデメリットもあります。

我々は我々の強みを金融機関に対して打ち出していきます。ファンドボックスさんが日本に来たとしても、彼らが持っているのは外国で集めてきたデータです。我々は日本のマーケットでデータを集めてきた自負がありますので、競合関係になった場合にもある程度自信はあります。

最終的には大きなマーケットでは、カテゴリーリーダーに入ること自体が簡単ではないので、求められるカテゴリーの中にプレイヤーとして入れるかどうかが重要だと思っています。

――今後の中長期的なビジョンについてお聞かせください。
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我々は「あらゆる情報を信用に変え、あたらしい価値を創出する」というミッションを掲げていますが、これは信用の再創造、信用の再定義を意味します。与信モデルで言うと財務の与信だけをしましたが、もっと多様な与信の考え方ができると思っています。最近会計ソフトのfreeeさんと連携して、会計ソフトのUIで請求書を売却できるようになりました。

また、今は色々なSaaSがありますが、非財務的データと金融サービスを提供した結果が紐づけられないかと考えています。会計ソフトの中には当然入出金データや決算書のデータが入っています。金融サービスを提供した時に、会計ソフトへのログイン状況などでお客さまの非財務データの与信ができるということになります。

いつでもどこでもオンラインで、SaaSなどと連携しながらヘルススコアをチェックして、スコアリングモデルの提供を通して会社経営を支えていく。将来的にはスコアリングによって中小企業の経営がうまく回るように、グッドサイクルが回っていくようにしたいという目標があります。その山は果てしなく高いと思うので、すごく登り甲斐があるなと思っています。

Leaders Item

 (3568)

野村證券を辞めた時に作った名刺。自分のことを紹介するために作ったものだが、何者でもない自分のひよわさと、何か新しいものを自分で作っていくのだという気持ちを自身に思い起こさせるものとなった。
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BUSINESS

事業内容

◯クラウドファクタリング事業
◯与信モデルの企画・開発・提供

COMPANY

会社情報

所在地:東京都港区南青山一丁目15番41号QCcube南青山115ビル 3階
設立:2017年4月14日
資本金:23億4,366万円(資本準備金含む)