個性を活かす「チームユナイテッド」で成長

ユナイテッド株式会社

代表取締役会長CEO / 早川 与規

博報堂の営業職、サイバーエージェントの副社長を経て、2004年にモバイル広告事業で起業した早川与規氏。積極的なM&Aによって業容を拡大し、現在はユナイテッドの代表取締役会長CEOとして辣腕をふるっている。個性派集団「チームユナイテッド」を率いる同氏に、これまでの歩み、リーダーとしての役割、今後の目標などを聞いた。

PROFILE

代表プロフィール

1969年、新潟県生まれ。1992年に早稲田大学政治経済学部を卒業後、株式会社博報堂へ入社。1998年、米国シラキュース大学経営大学院に私費留学。1999年に株式会社サイバーエージェントの常務取締役、2000年より取締役副社長兼COOを務める。2004年にモバイルサービスを展開する株式会社インタースパイアを設立し、代表取締役社長CEOに就任。2009年に株式会社エルゴ・ブレインズと合併し、株式会社スパイアの代表取締役社長CEOに就任。2012年にモーションビート株式会社と合併し、ユナイテッド株式会社の代表取締役会長CEOに就任。

博報堂から米大学院へ留学。ネットの潮流を体感する

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―早川さんが現職に就任したのは2012年です。それまでのキャリアについて聞かせてください。

92年に大学を卒業した後、博報堂に入りました。クライアントは大手ビールメーカーや自動車メーカーでした。営業職として6年ほど過ごしましたが、社会人として未熟な部分も多かったこともあり、想像した以上のハードワークでした。「自分の身体は意外と強いもんだな」と感じながら働いていました(笑)。

広告マンとしての仕事は非常に充実していましたが、このままじゃ仕事ばかりで視野が狭くなってしまいそうだ―。広い世界を知るため、思い切ってアメリカの大学院に自費で留学したんです。当時は98年。現地のメディアでインターネットブームが連日報道されており、変革期の到来を強く感じました。これは大変なことになるぞと。

そんなうちに大学院の1年目が終わり、3ヵ月間の長い夏休みに突入。急激な円安もあり、一時帰国してインターンをしようと思い立ちました。まずは情報を得るために日経新聞の日曜版を取り寄せたら、サイバーエージェントの大きな求人広告が目に入って。日本のネット企業に興味がわき、インターンに応募しました。

―入社のきっかけは夏休みの短期インターンだったんですね。

日給もたしか1万円ありましたから(笑)。インターネットビジネスに触れたいという軽い気持ちで始めたのですが、どんどん仕事がおもしろくなってきたんです。ネットビジネスの可能性はもちろん、代表の藤田晋さんの事業意欲、若手社員たちの前向きなエネルギーなど、社内に活気を感じました。

博報堂は良い会社で、多くのことを学びました。でも藤田さんから声をかけてもらい、新たなチャレンジをしたくなったんです。そこで夏休み明けに大学院を中退して、休職していた博報堂も退職。99年9月に、常務取締役としてサイバーエージェントに正式入社しました。翌年1月には副社長兼COOに就任し、IPOを経て、2004年まで同社で経験を積みました。

サイバーエージェントの副社長を辞めて、起業した理由

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―アルバイトから常務とは驚きます。まだサイバーエージェントが上場する前ですよね。

ええ。社員は20名前後、いわゆる「ザ・営業会社」の頃です(笑)。誰かが「昨日は10万円受注しました!」なんて朝会で発表したら、みんな拍手で喜んで。藤田さんの席の隣のホワイトボードに一人ひとりの営業目標と受注額を書いて、「1日4件はアポに行きましょう!」と皆で声をはりあげていましたよ。今考えても、営業会社としての勢いがありました。

―同社は2000年3月に上場しています。その後、なぜ起業したのですか?

副社長の私は基本的に‟守り”の役割がメインでした。上場後にネットバブルがはじけて、事業を多角化する過程で多くの困難がありました。今では信じられないと思いますが、当時は万年赤字会社と呼ばれるような状況が続くなか、ようやく2004年9月期に初の黒字転換を果たしました。そこで副社長としての職責を果たし、ひと区切りついたと感じました。「次は自分が最終責任者になり、ビジネスを動かしていきたい」と、自然とそう考えるようになりました。

では、なんのビジネスで勝負するのか? やはり、私の得意分野は広告とインターネット。前職との競合をさけ、モバイルのネット広告とコンテンツにフォーカスしました。当時は‟勝手サイト”が勃興する携帯コンテンツの黎明期。いまならマーケットを創る立場になれると、2004年12月にインタースパイアを設立しました。

多士済々な経営陣がビジョンを軸に一致団結

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―その後、インタースパイアは2度の合併を経て、2012年にユナイテッドになりました。早川さんは代表取締役会長CEOに、合併相手(モーションビート)の代表だった金子さんは代表取締役社長COOに就任。同じ代表権を持つリーダーとして、どのように役割分担をしているのですか?

事業領域は金子が管轄しています。私が直接みているのは経営管理部門と人事関連部門。あとは一部の子会社です。

ただし、これらの役割は固定化していません。ときには金子が経営管理系の仕事を担ってくれたり、私が事業領域に入ったりするなど、阿吽の呼吸で臨機応変にポジションを変更しています。2人とも上場企業の代表を務めていたので、同じ視点で議論ができますね。

―意見が対立することはありませんか。

私たちは「日本を代表するインターネット企業になる」というビジョンを共有しています。目的が明確なので、感情的な対立は生じません。「2人代表はうまくいかない」と指摘されることもありますが、この6年間は非常にスムーズですよ。奇跡的な縁だと思います(笑)。

―ほかの役員陣も多彩ですね。

ええ。最年長の私が49歳、最年少の執行役員(アラン・プロダクツ花房社長)が26歳と年齢層は幅広く、バックグラウンドもさまざま。人的ネットワークも多様なので、多方面からM&Aの話が舞いこんできます。だから、全役員が案件の窓口なんです。最終的には役員会議で議論して、意思決定しています。

ユナイテッドは合併を経て生まれた会社ということもあり、ひとりでも勝負できる有能で個性的なメンバーたちが集まっている。そのため、自主性や独立性を担保しながら、全体として最適化できています。「ユナイテッド」という社名が表すように、ビジョン実現に向けて一致団結しています。

変化の激しいアドテク分野に強み。メルカリへの早期投資も

―事業の強みを教えてください。

当グループは4つの領域で事業を展開し、それぞれに特徴があります。1つめは「アドテクノロジー事業」。ガラケーからスマホへと端末が変遷するなか、広告事業ノウハウをベースに新しいプロダクトを継続的に生み出し続けているのが強みです。

2つめは「ゲーム事業」。私たちは後発なので、ヒット作へ育てる確実性を高めていきたい。もともと広告事業がベースにあるので、プロモーションは得意です。昨年9月には、ゲームアプリ開発のトライフォートを子会社化しました。他社IP(版権)の共同事業や受託開発を組み合わせて、ゲーム事業としてのポートフォリオを組んでいます。自社で取り組んでいるゲーム事業は基本的にハイリスク・ハイリターンですが、トライフォートの他社IPとの取り組みはミドルリスク・ミドルリターンなので。

3つめは「コンテンツ事業」。スマホアプリやオンライン教育事業、vtuberなど数多くの領域に取組んでいます。いまは若手の執行役員をはじめ、多彩な人材が試行錯誤を重ねている段階。ネットに関連する事業であれば領域を限定せずにどんどんチャレンジしています。今後が楽しみな分野です。

4つめは「インベストメント事業」。先ほども話したように、役員陣の人的ネットワークが強みです。たとえば、社長の金子はメルカリ代表の山田さんが最初に起業した会社に投資していたこともあり、以前からつながっています。だから、同社の創業間もないタイミングで事業アイデアを直接聞いて、出資することができました。いまも30~40の投資検討案件が動いていますね。

―投資だけでなく、M&Aを積極的に進めている点も御社の特徴です。働く環境づくりについて、どのような取り組みをしていますか?

グループ入りした会社に対しては、出来る限りコントロールしません。当社は経営リソースの提供に徹し、もともとの事業の強み、経営者の個性を活かしてもらっています。例えば、「社名を変えろ」「給与水準を合わせろ」といった類の要求はしないですね。ユナイテッドグループのビジョンである「日本を代表するインターネット企業になる」というところに本気で向かってくれていれば、基本的に経営の方法論は問いません。

またM&A先に限らず、意思表示の重要性は全メンバーに伝えています。せっかくベンチャー企業に入ってくれたんだから、黙って順番を待っているだけじゃもったいない。自分から「こういう事業がやりたい」「こんな仕事がしたい」と手をあげれば、できる限り機会を提供するプラットフォームでありたいと考えています。

―会社には経営リソースを、個人には機会を提供すると。

そうです。これらのベースにあるのは「チームユナイテッド」という価値観です。これは強くて多様な個性が集まり、チームの絆が産み出す力を信じること。そして、協力して大きなことを成しとげようという考え方です。だから、合併やM&Aを重ねてもいわゆる社内派閥のようなものや社内政治は一切ありません。そういったものはエネルギーの無駄づかい以外の何物でもありません。みんなオープンマインドで、常に是是非非を貫くようにしています。

社内コミュニケーションを活性化させるため、社員食堂や休憩用のラウンジスペースも設置しました。完成して間もないですが、けっこう好評です。「知らない人と初めて会い、話せてよかった」と日報に書いている社員もいましたね。

自己実現から他者貢献へ。社会に必要とされる会社をつくる

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―社内環境の整備や人材の成長支援に力を入れているわけですね。しかし、早川さんが起業した際は、自己実現欲求が原動力だったと思います。経営者としての志向性が変わったのでしょうか?

そうですね。若いときには「自分が仕事で何を成しとげるか」という考えがベースにありました。でも年齢を重ねて経験を積んでくると、「力のある人や上昇志向のある若い人に適切な機会を提供して、仕事を通じて成長してもらえるようなプラットフォームを作りたい」という他者への貢献の気持ちが強くなってきたんです。

さまざまな事業で成長・成功する人たちを、ユナイテッドグループで何人育てることができるのか? そして最終的に大切なのは、ユナイテッドグループとして社会にいかに貢献できるか? そんなことを中心に考えるようになりましたね。

―そういった変化が生まれたきっかけは?

原点は2002年ごろ、私がサイバーエージェントの副社長だった時の出来事です。上場後の赤字に苦しんでいた際に、ある大企業の年長者に厳しい言葉を投げかけられたんです。「もし今サイバーエージェントがなくなっても、誰も困らないよ」と。

当時は「ぽっと出のベンチャーのくせに…」という雰囲気もあり、悔しい想いもありました。だけど、嫌味や皮肉ではなく、ある種的を射た指摘だとも感じました。言われてみれば、当時はたしかに社会に貢献するという意識がまだ欠けていたかもしれない。自分たちのことしか考えてなかったかもしれない。そこで「会社は社会から必要とされる存在にならなければ」という想いを強く持ちました。起業した時にも、そこは強く意識しました。

―2004年の起業時から、社会貢献の視点を持っていたわけですね。最後に、ユナイテッドとしての目標を教えてください。

昨年夏に中期経営計画を発表しました。詳しくは是非当社HPの中期経営計画「UNITED2.0」を参照していただきたいのですが、中期的な定量目標は、2022年3月期にのれん償却前の営業利益100億円、定性目標は「ユナイテッド・エンパワーメント・プラットフォーム」の確立をめざしています。後者は多様なリーダーシップ人材とスペシャリスト人材が集まり、チームユナイテッドとして成長できるようなプラットフォームづくりをめざしています。社外人材も含めて、様々な距離感で優秀な人材が集まって成果を産み出せるような仕組みです。

例えば、10年後も現在の「会社」という組織形態が最適であるとは限りません。今後は「ユナイテッド」という社名がもつ価値観を拡張し、従来型の人材採用やM&Aだけでなく、外部にも門戸を開くことによって成果の最大化を図りたいと思います。さまざまな領域で事業を連続的に生み出し、ビジョンを実現したいですね。そして最終的にはユナイテッドグループとして社会に貢献し、社会にとって不可欠な存在を目指します。

Leaders Item

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5年前から愛用しているペーパーウェイト。既製品ではなく、廃材の一部を再利用している。早川氏いわく「捨てられるはずのものを使うのが好き」。重要な資料や郵便物をこの下に置き、デスクを整理している。
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BUSINESS

事業内容

〇アドテクノロジー事業
〇コンテンツ事業
〇ゲーム事業
〇インベストメント事業

COMPANY

会社情報

所在地:東京都渋谷区渋谷1-2-5 MFPR渋谷ビルB1F(受付)・9F・10F・12F
設立:1998年2月
資本金:29億2,200万円(2018年3月末現在)
従業員数:連結373名/単体179名(2018年3月末時点)※臨時従業員を含む
売上高:144億4,400万円(2018年3月期:連結)