動画マーケティングの新たな商習慣を創る

株式会社NewsTV

代表取締役 / 杉浦 健太

2015年の設立以来、目覚ましい成長を続けるベンチャーがある。「ビデオリリース」という新たなマーケティング手法を提供するNewsTVだ。同社代表の杉浦健太氏は、テレビ、PR、ネット広告など、多様な業界を経験。制作から、営業、商品開発、マネジメントまで、幅広いスキルを磨いてきた。その足跡が同社の強みを示し、眼差しが未来を示す―。思い出深い出来事をまじえて、リーダーに話を聞いた。

PROFILE

代表プロフィール

1978年、埼玉県生まれ。2003年に早稲田大学法学部を卒業後、映像制作会社を経て、株式会社ベクトルに入社。PR企画の営業職として活躍。2006年に株式会社サイバーエージェントに入社し、子会社の立ち上げを行い、Webマーケティング分野の商品開発などに携わる。2010年に独立し、広告会社を経営。2014年、株式会社ニューステクノロジー(株式会社ベクトルと株式会社マイクロアドの合弁会社)の立ち上げにともない、ベクトルグループに復帰。2015年に株式会社NewsTVを設立し、代表取締役に就任。

 (2878)

PRの弱点を克服する「ビデオリリース」

―ビデオリリースとは、どのようなサービスですか?

企業の記者発表会や新商品の情報などを1分程度の動画にまとめ、配信するサービスです。いわば、プレスリリースの動画版ですね。

記者発表会を開くには多額の費用がかかりますが、メディアの伝え方まではコントロールできません。商品と無関係なタレントのコメントだけが報じられる場合もあるでしょう。

一方、ビデオリリースでは、当社の動画配信プラットフォームやSNSの広告枠などを通じて、クライアントが望む内容を望むターゲットへ直接伝えられます。PRイベントにかけた費用を最大限に活かせるわけです。この着想を得たのは、海外で動画配信サービスが続々と生まれ、主要SNSで動画広告の配信が可能になった頃。タイミングも最適でした。

― 一般的なネット動画広告やテレビCMとの違いは?

動画の切り口、制作スピード、効果の範囲などが違います。ビデオリリースはブランドムービーでもテレビCMでもなく、映画の予告編のような切り口。視聴者の立場から考え、情報をわかりやすく伝えます。一番大事にしているのは、情報の受け手の興味関心に寄りそうという思想。当社の制作チームにも、情報番組やバラエティ番組を手がけてきたスタッフがそろっています。

制作期間は最短即日納品。記者発表会が開かれる場合、イベント当日の配信も可能です。また、当社内で視聴者の離脱データを分析しているので、効果の高い動画を制作できる。一般的な動画広告の効果は「認知」の段階に留まりますが、その先の「興味」「検討」へと態度が変わりやすいのです。

2人のリーダーから学んだ商売の本質

 (2882)

―杉浦さんは2015年に36歳でNewsTVを立ち上げています。それまでの経歴を教えてもらえますか。

大学を卒業後、テレビ番組の制作会社へ就職しました。徹夜はザラでしたが、ADとして携わった番組が放送され、視聴率という結果が出るのは楽しかったですね。でも40代のディレクターが廊下で寝ている姿を見て…。「こういう風になりたかったんだっけ?」と、フッと考えてしまい、会社を離れました。

それで2004年、第二新卒としてベクトルへ転職。当時はPRという領域があること自体知らなかったのですが、一次面接で社長の西江が熱く語る姿に惹かれ、西江の「一緒にやろうや」という一言で、すぐに転職を決めました。

―ベクトルではどんな業務を?

営業です。社員40名ほどのベンチャーだったので、いろいろな案件を任されました。入社2日目なのに「1人でPRイベントの打ち合わせへ行ってきて」みたいな(笑)。

社長の西江には、商売や営業の基本を叩きこまれました。「クライアントに価値を戻せ」「まず動け、外へ出ろ」「スピードが大事」など。営業に同行してもらい、厳しい指導も受けました。副社長の長谷川にも、かわいがってもらいましたね。この時期に2人から学んだことは、いまも私の軸になっています。

―そんなベクトルを一度退社していますね。

しばらく働くうち、インターネットでのプロモーションに興味が出てきたんです。特に注目をあびていたCGMに興味がわいて。そんなとき、サイバーエージェントの子会社「サイバー・バズ」の立ち上げに誘われました。そこはCGMを活用したネット広告会社。将来の起業も見すえて、転職を決めました。

―サイバー・バズの設立は2006年。その後、杉浦さんは2010年に独立しています。

広告会社を設立して、PRとネットを組み合わせたサービスを提供しました。ベクトルとサイバー・バズの経験を活かしたわけです。業績は順調でしたが、2014年にベクトルに戻りました。「このままでいいのかな」という疑問を抱いたからです。

―どういうことでしょう?

当時は自分の能力を切り売りしているだけで、社員時代と比べて成長している実感がなかった。会社の売上と反比例するように、自分の能力が落ちていく気がしたんです。そんな悩みを抱えていたころ、ベクトル副社長の長谷川に六本木の寿司屋へ呼び出されました。「ベクトルとマイクロアドの合弁会社をつくる構想がある。ベクトルに戻って立ち上げを手伝ってくれないか」と。そこで決断しました。

偶然の再会、必然の和解

 (2885)

―離れた古巣へ戻る。抵抗はありませんでしたか?

実は、ベクトルを退職後、4年間くらい西江とは一度も連絡を取ってなかったんですよ。ただ2010年に独立した際、長谷川に報告しようとベクトルのオフィスを訪問して。ガラス張りの会議室に通されると、近くを西江が偶然通りかかった。すかさず長谷川が呼び止めて、引き合わせてくれました。あの瞬間は、いまも鮮明に覚えています。

―ひさしぶりに再会して、わだかまりが解けた?

ええ。西江は私の顔を見るなり、「また一緒にやろうや」と一言告げて去っていきました。感動しましたね。なんて器が大きいんだろうと。そして、長谷川の行動力と気づかいにも感銘を受けました。私のことを気にかけてくれていたからこそ、とっさに和解の機会をつくってくれたのでしょう。

―それで合弁会社の立ち上げに参加したと。

新会社の取締役として、ベクトルグループに戻りました。その後、西江の要請を受けて、社長室で毎朝開かれる会議に参加することに。そこで生まれたのが「ビデオリリース」のアイデアです。私がプロジェクトリーダーに選ばれ、商品開発を進めました。

―ビデオリリースはベクトルの新規事業だった?

もともとはそうですね。ベクトルの営業チームにお願いして、得意先に動画マーケティングの新商品を案内してもらいました。そこから数ヵ月間は試行錯誤の毎日です。動画のパターン、適切な時間、ナレーションの有無、効率的な配信方法…。仮説検証と改善をくりかえし、少しずつ商品の型が定まっていきました。

会社設立の決め手になったのは、収益モデルの転換です。動画の制作費を無料にして、配信費用のみに変えました。その結果、問い合わせ件数が急増。反比例するようにクライアントの動画チェック回数は減り、制作期間の短縮にもつながりました。

そして2015年6月。ベクトルからビデオリリース事業を切り離し、NewsTVを設立。私が社長に就任したのですが、当時は営業や動画のディレクション、配信・運用、請求書発行まで担当していましたね。ひとり何役もこなしながら、慎重にスタッフを増やしていきました。

膨大な視聴データを収集し、秒単位で分析

―もっとも苦労したことを教えてください。
 (2890)

うーん…思い浮かびませんね。新規事業には失敗がつきもの。課題を乗り越えるのが当たり前と思っているので、記憶に残らないのでしょう。

―企業成長のターニングポイントはありますか?

設立翌年の春、2016年4月4日です。「NewsTV Network」という動画配信プラットフォームを構築し、現在のビジネスモデルができました。この構想は現取締役の大寺が描いたもの。彼が開発を主導し、運用開始期日になんとか間に合わせることができました。
 (2892)

完成したのは深夜2時。会社に残っているメンバーと一緒に喜びを爆発させ、その瞬間を動画に残しました。困難にぶつかったときなど、定期的に見返していますね。

―自社で動画配信プラットフォームをもつ利点は?

視聴データを収集・分析し、動画制作に活かせることです。当社が制作した動画は累計2,000本以上、DMP(データ管理プラットフォーム)に蓄積された閲覧データは4億以上。多くの視聴者が離脱したポイントが1秒単位でわかります。そこから原因を分析し、離脱率を下げる方法を考え、実行・検証する。動画を長く見てもらうほど、視聴者の態度が変容する確率も高くなります。

その結果、「You Tubeで動画広告を流した場合よりも、ビデオリリースのほうが商品の理解や購買意欲が高まる」という調査結果が出るようになりました。「認知」というマーケティングの初期段階から、態度変容しやすいわけです。

競合は歓迎。ビデオリリースを商習慣にしたい

―ビデオリリースの類似サービスを提供する競合企業も増えてきました。危機感はありませんか?
 (2896)

まったく感じていません。当社のビジョンは、ビデオリリースを商習慣にすること。たとえば新商品を発売する場合、リスティング広告やSNS広告は欠かせませんよね。でも、ひと昔前は手法自体が存在しませんでした。同じように、マーケティングの必須メニューにビデオリリースをくわえたいのです。

だから、市場を拡大するフォロワーは大歓迎。本家として負けない自信もあります。最近は「記者発表会やPRイベントは開かないけれど、新商品を動画で告知したい」というニーズも増えてきました。現在のペースで普及が進めば、3年後にはビデオリリースが一般的になるでしょう。

―今後はどのように事業を展開していきますか?
 (2898)

培った技術やノウハウを活かして、横展開を進めます。人材採用、不動産、飲食店、結婚式場など、さまざまな領域の動画に挑戦していきたい。すでに人材領域では大手と業務提携し、実績を積んでいます。また、BtoCだけなくBtoBの需要も増加。各領域に特化した事業部をつくれば、当社がトップに立てるはずです。

そして、まもなく5G時代が到来します。通信費も下がる。スマホ上の動画広告が当たり前になり、静止画に違和感を覚える時代になるでしょう。2024年には、ネットの動画広告市場が約5,000億円に達する見込み。次の主戦場では、ネット広告大手や各SNSもライバルになりえます。

当社が注力するのはフルファネルで動画とテクノロジーを活用し、クライアントの課題を解決していくこと。膨大なデータ分析により、認知だけで終わりがちな動画広告の弱点を克服する方法が見えてきました。そこからビデオリリースを超える新サービスに昇華させたい。今後もビデオテクノロジーカンパニーとして、クライアントの成長に貢献していきます。

Leaders Item

 (2901)

2人の息子を保育園へ送り届ける自転車のカギ。毎週火曜日の朝は仕事の予定を入れず、子どもと時間を過ごしている。「大人は常識にとらわれて『できない』と決めつけやすいけれど、子どもはすべて『できる』と思っている。だから、次男は3歳ですぐ自転車を乗りこなせました。息子たちから学ぶことは多いですね」
SHARE: Twitter Facebook Line

BUSINESS

事業内容

○マーケティング分野における動画制作/配信に関わる業務

COMPANY

会社情報

所在地:東京都港区赤坂4-15-1 赤坂ガーデンシティ13F
設立:2015年6月
資本金:2,550万円(2019年2月末日現在)
従業員数:50名(2019年2月現在)
売上高:16億4,632万4,000円(2019年2月期)

ページトップへ