会社の‟らしさ”を活かし、人が輝く組織をつくる

株式会社イヴォーグ

代表取締役社長 マネジメントエンジニア / 徳山 求大

顧客企業の‟戦略的人事部”として、強い組織づくりを支援するイヴォーグ。代表の徳山求大氏はリクルートで12年間のキャリアを積んだ敏腕コンサルタントだ。しかし、同氏が名乗るのは「マネジメントエンジニア」。企業の強みや事業環境などをもとに、競争力の高い‟マネジメントの型”を構築するという。そのカギはどこにあるのか。具体的な事例をひもときながら、リーダーの技法にせまる。

PROFILE

代表プロフィール

1969年、愛知県生まれ。1992年に名古屋大学工学部を卒業後、株式会社リクルートへ入社。企業の人材採用・教育の企画営業を担当後、ヒューマンリソースマネジメント室にて「人がイキイキと働く会社づくり」について研究。同社内のマネジメント研修・リーダー研修だけでなく、顧客企業の新人・若手の早期戦力化支援、研究開発組織のマネジメントの再創造などに取り組む。2011年、株式会社アトリエはるか取締役に就任。理論と経験を実務で活かし、業績向上と人材育成を同時に実現する。2014年に株式会社イヴォーグを設立し、代表取締役社長に就任。日本全国を飛び回り、培った理論と技法を多くの成長企業に広めている。共著に『折れない新人の育て方』(ダイヤモンド社)。

新卒5年目でリクルートの研修担当に抜擢

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―イヴォーグは顧客企業の組織づくりを支援し、成長を加速させています。その基盤となる徳山さんのキャリアを聞かせてください。

1992年に新卒でリクルートに入りました。名古屋支社で企画営業を続けた後、5年目に本社へ異動。「ヒューマンリソースマネジメント室」の最年少メンバーに抜擢されたのです。ここは社内の教育研修を担う部署。時代の要請もあり、重要性が高まっていました。

企業研修は、好景気のいい頃はあまり重要視されません。主力商品である求人媒体の力が強かったので、新人でもバンバン売れていた。しかし、バブルが崩壊すると、企業の採用意欲も低下。求人広告が売れなくなり、本質的な課題解決力が必要になったのです。

―5年目の若手社員が教える側の立場になったのですか?

はい。半年間の研修を受けた後、リクルート社内のマネジャーやリーダー研修を担当しました。その研修を外販しようという話になり「コミュニケーションエンジニアリング室」という経営者と経営幹部との意思疎通を改善するサービスなどを提供する部署に所属しました。2011年に退社するまで、そこでキャリアを積みましたね。

―リクルートで学んだことを教えてください。

たくさんありますよ。たとえば、成長企業の幹部やマネジャー研修に携わったことで、伸び続ける企業を見抜く目が養われました。Plan・Do・See(ホテル・ウェディング事業など)やネクステージ(中古車販売)など、成長過程のお客様にも恵まれました。

大手企業では、ホンダ(本田技研工業)やソニー・コンピュータエンタテインメント(現:ソニー・インタラクティブエンタテインメント)をサポートしました。そういう会社って、共通点があるのです。業界の常識にとらわれず、時代や顧客のニーズをとらえて挑戦する。そして、若い人材の力を活かしています。

いわゆる‟リクルートのDNA”にふれる体験もしました。その象徴が「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」という創業者のメッセージ。額縁に飾られた社是ではなく、社員一人ひとりに浸透していました。私がリクルートを巣立ったのも、自然な流れでしたね。

気づきを与える研修から、人材育成の仕組みづくりへ

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―40歳で地元の名古屋に戻り、ベンチャー企業に転職したと聞きました。

「アトリエはるか」という美容サービス企業に移りました。同社は低価格・短時間で髪をセットし、メイクアップする店舗などを運営。営業担当役員として呼ばれたものの、最初の半年は、日々現場で起こる問題への対応に追われる毎日でした。企業の成長スピードに人材育成やマネジメントの仕組みが追いついていなかったからです。

この先の展開をイメージすると、店舗数を増やせば増やすほど、スタッフの育成やお客様のクレームも増え、それに対応する人材も比例して必要になっていくのではないか。もぐら叩きになってしまうのではなく、根本的な解決策を模索しました。そのためには、気づきやモチベーションだけでは解決しないと考えました。

―どうやって、その状況を打破したのでしょう?

サービスを定型化して、人材育成の仕組みを構築しました。技術者の多くは「100人の顧客には100通りの要求があり、スタッフはあらゆる要望に対応できる技術を習得すべき」という美容業界の常識があります。しかし、それが同社のビジネスモデルや顧客ニーズに合致しているとは限りません。

そこで取り組んだのが、ヘアカタログの制作。細かい要望を持っているお客様よりも、こちらからのパターンの提案で満足するお客様のほうが多いのではないかと推測したのです。最初は、スタッフからかなり抵抗されましたが(笑)。スタッフと協力して30種類のヘアスタイルに分類。お客様にカタログを提示して、選んでもらうようにしました。

―実際に効果はありましたか?

はい。ほとんどのお客様がヘアカタログでカバーできました。そのなかに人気のスタイルもできました。100通りの要求はなかったわけです。すると、スタッフが習得すべき技術もしぼれます。ヘアスタイルのセット方法をレシピのように分解して、マニュアル化しました。

さらに、スタッフの習熟度を見える化。メニューを細分化し、スタッフごとに習得状況をグラフ化しました。これで本人の自覚も強くなるし、教育担当者もフォローしやすくなり、人材育成のスピードが上がりましたね。

その結果、スタッフによる技術のムラもなくなり、お客様からの技術に対するクレームも減りました。店舗数を増やしても、サービス品質が落ちなくなったのです。カタログを通してお客様からの評価も高くなったと思います。またスタッフがカタログづくりに参加することを目標にしてくれるようになりました。一石何鳥かわからないほどの改善になりました。

―もはや「営業担当」という役割を超えていますよね。

そうかもしれません。私の役割は営業というよりも‟事業課題と人のモチベーションの接点”をつくること。その会社の課題を理解して、前進するために人と組織の力を活かす。そういったサポートを一貫して行っています。

新人営業職の離職率が激減し、成約率が上がった理由

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―独立後の支援事例を教えてください。

2014年に会社を設立したところ、成長ベンチャーから相談をいただきました。リクルート時代におつきあいのあったネクステージです。当時の同社は上場直後。主力商品である中古車価格が安く、品質も優れ、品揃えも豊富、競争力がありました。出店を加速させたいわけですが、新卒社員の定着と早期戦力化の育成システムを求めて、当社に白羽の矢が立ったのです。

そして、役員や事業部長、店長たちとプロジェクトチームを立ち上げました。1年計画でしたが、最初の半年はチームの意思統一と育成の型作りに専念。「そもそも新人を育てるのか?」という根本から議論しました。実際、業界には「たくさん採用して、売れるヤツだけ残ればいい」という考えもありますから。

結局、全員を育てる方針にまとまりましたが、‟一人前”の定義がバラバラで…。売上台数で定義する人もいれば、仕事に対する姿勢で定義する人もいる。そこで最低限必要なスキルをヒアリングし、育成のゴールを設定。具体的なマイルストーンを定めました。「4月の第1週はこれをやる」というレベルまで、一つひとつ落としこんだのです。

―施策の結果、定着率は上がったのですか?

まずは月例の店長会議で育成状況を振り返り、翌月の取り組みを決定。そのサイクルをくりかえし、1年後に目覚ましい成果が出ました。新人営業職の平均成約率は10%も向上、定着率も改善しました。新人50名が、業績の底上げに貢献しました。

早期戦力化の仕組みができたので、翌年の新卒採用枠は100名に倍増。以降も採用人数を増やし続けています。育成の課題が解決したので、採用ブランディングもお手伝いしましたね。リクルーターを組織化し自社と仕事の魅力を再発見してもらい、面談時に学生に語ってもらいました。

経営理念を浸透させて、社長に頼らない組織へ脱却

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―人材育成と採用以外に支援している分野はありますか。

2018年4月から、ある上場企業の理念浸透に携わっています。そこはオンリーワンの技術をもつ老舗製造業。現社長の手腕で経営危機を乗り越え、グローバル展開やM&Aなどの攻めに転じていました。

そんなとき、社長から相談を受けたのです。自身のリーダーシップに頼る経営から、理念を軸にした経営にシフトしたいと。目指すのは継続的に成長する組織。そのために経営理念を定め、社内に浸透させたいというのです。

―老舗なのに、経営理念がなかったんですか?

存在はしていたけれど、形式的なものだったそうです。そこで6月にプロジェクトを立ち上げ、「ミッション・ビジョン・バリュー」などの理念体系を再定義。管理職を中心にコアメンバーを選出し、経営理念への理解を深めるワークショップに参加してもらいました。1泊2日の合宿などを何度か行いました。

合宿では90年以上の社歴も振り返りました。すると「チャレンジの連続で現在がある」「お客様とのつながりを大切にしている」など、さまざまな気づきが得られます。そうやって、経営理念にこめられた想いを理解してもらいました。

―その後の成果を教えてください。

課長クラスの方々からは「自律的な行動が増えた」という報告がありました。それまでは、どんな案件も最後は社長判断。みんな社長の顔色をうかがっていたけれど、最近は自分で考えて行動できるようになったと。社長も「理念に照らして判断してほしい」というメッセージを発信しています。

また、現場社員の安心感も強くなりました。経営危機から脱する過程では当然、業績やスピードといったものが重視されます。軸となる経営理念を理解することで、漠然とした欠落感が解消されていったようです。

第三者ではなく、当事者として考える

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―徳山さんが大切にしていることはなんですか?

大前提として、顧客の期待に応えること。パートナーとして選んで頂ける、価値観の共有できるお客様と仕事をしています。やはり、高い志や成長意欲を持っている企業の役に立ちたいですから。

もうひとつ大切にしているのは、当事者意識です。机上の理論を顧客に当てはめるだけでは、コンサルタント失格。顧客企業の特徴、人材のモチベーションが上がるポイント、事業環境などを見極め、自分事として考える。そして、前へ進む道筋を一緒につくっています。

名刺に「マネジメントエンジニア」と記しているのも、お客様の可能性を引き出す組織マネジメントのプロとして関わりたいからです。

―最後に、今後の目標を聞かせてください。

日本はダウンサイジングの時代を迎えました。でも、多くの企業が右肩上がりを前提としたビジネスモデルや組織体制から脱却できていません。だから、小規模でも人が輝ける組織を再構築したい。その会社の‟らしさ”を活かして、変化に強い組織づくりをサポートしていきたいですね。

Leaders Item

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リクルート在籍中、多忙な業務のかたわら上梓した共著。数十年先も読み継がれる本をめざして、自ら出版社に企画を提案した。『折れない新人の育て方』は2009年の発売から10刷に達する息の長いロングセラー。「今後も確かな仕事をしていきたい」と徳山氏は語る。
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BUSINESS

事業内容

〇マネジメントエンジニアリング(組織マネジメントの構築)
・幹部、マネジメント研修
・新人・若手人材の育成、戦力化支援
・人材採用コンサルティング
・経営理念の策定、ビジョン浸透支援

COMPANY

会社情報

所在地:愛知県名古屋市東区東桜2-4-9 ナゴヤビル103号
設立:2014年4月
資本金:5,000,000円
HP: http://evogue.co.jp/