VRで“ゲーセン”が「テーマパーク」に! アドアーズが驀進するVR PARK戦略の本気度

アドアーズ

2017年12月7日、総合エンターテイメント企業のアドアーズ株式会社が東京・池袋に「VR PARK TOKYO IKEBUKURO」をオープン。現在リブランディングを押し進める同社では、VR(仮想現実)とAR(拡張現実)を今後の成長戦略の柱の一つに置き、これから数年をかけて地方都市や海外に常設型VR施設を積極展開していくという。
今回は開業前日にマスコミ関係者を招いて行われた発表会の席で、同社のVR事業の中心人物である安藤史博取締役にインタビュー。同社が進めるリブランディングおよびVR戦略への意気込みについて伺った。
アドアーズ株式会社 取締役 安藤史博氏
アドアーズ株式会社 取締役 安藤史博氏

ソフト、ハードの両面からVR事業を進めていく

「VR PARK TOKYO IKEBUKURO」では、443㎡(133坪)のフロアに10台のVRアトラクションを設置。そのうち4台は日本初登場の最新機種で、特に目玉である「BLACK BADGE」は、SFの世界さながらの銃やベストを装備し、撃つ、撃たれるの衝撃も含めて宇宙空間の戦いに没入できる驚きのマシンだ。また、人気テレビアニメ「おそ松さん」のVRコンテンツも登場。おそ松、カラ松ら松野家の六つ子と“おバカなこと”が一緒にできる、ファンにとって夢の体験が味わえる。
そうした最新施設のオープンに際して安藤氏は、まず、アミューズメント業界の規模の変化に対する危機感を踏まえながら、同社が乗り出しているリブランディング戦略における三つの柱について語った。

安藤氏「当社が属するアミューズメント業界の市場は、2006年度の7,000億円をピークに様々な外的要因を理由にシュリンク(縮小)の状況が続いています。オペレーターである我々はそうした環境に対応すべく事業モデルの変革が急務であることから、新たな市場の中で立て直しを図りたいと考えています。具体的には従来のゲーム・アミューズメント業態の展開を継続しつつも、昨年から開始しているVR・AR、さらにライブ・エンタメ市場への参入により、新たなエンターテイメントの提供に向けてリブランディングを積極推進テーマと位置づけ、成長軌道に乗せることを目指しています」
それに続いて、安藤氏は「VR PARK」を中心とするVR・AR事業の展開についても言及する。

安藤氏「リブランディングのうち現在当社が注力するVR関連事業では、店舗展開のほか、VR施設を展開される企業に向け、VR PARK TOKYOの稼働実績をもとにした海外・国内の最新アトラクションの販売・レンタルも展開しています。また、新しいデバイスやアプリケーションをいち早く取り入れるため最新のVRアトラクションを開発し、『おそ松さん』に代表されるようなIP(知的財産)コンテンツとの展開など、ソフトとハードの両面からVR事業を進めることで市場での優位性を図っていきたいと考えております」
既に昨年12月に1号店として開業した渋谷店はこれまでに10万人以上が来店。池袋地区初の大規模VR施設となる新店舗は、その渋谷店に比べてグループでの来店をより意識した仕様になっているという。さらに今後は五大都市や海外にも展開を広げ、年間30億円規模の事業に成長させていきたいと安藤氏は述べた。

VRコンテンツ市場の成長を担いたい

そもそもアドアーズがリブランディングをしていく上で、VRを事業の柱の一つに選んだ理由はどこにあるのだろう。

安藤氏「総合エンターテイメント企業を謳うアドアーズにとって、『VRでどうやって店舗に人を呼べるか』というのは、もともとの大きな課題でした。そんな中で『VR元年』という時代の波もあり、VRロケーションビジネスの試金石として始めたのがVR PARK TOKYOの渋谷店なんです。そして渋谷店が一定の成果を上げた中で、このVR PARKを地方の中枢店舗などにも広く展開していけば目標の収益を上げることも不可能ではないと感じ、リブランディングの中枢にVR事業を置いています」
一方で、ゲームセンターというとUFOキャッチャーや格闘ゲームなど、機器メーカーが作ったものを据え置く装置産業のイメージが根強くあるが、リスクを覚悟でアドアーズ自らVRコンテンツの開発にコミットする意義はどこにあるのだろう。

安藤氏「投資リスクは確かにありますが、その一方で、まだ今はVRを開発している企業が少なく、時間的にも予算的にもコストが大きいために新規参入しづらいという実情もあります。その部分も踏まえて環境全体が大きく変わらなければならないと考え、そこを担えるのは”販売先”となる我々のような企業だと考えました。当面は既存店で確保した利益の一部を投資に回していくかたちを考えています」

「当社として180度大きく舵を切った」と強い決意を語る安藤氏。パートナー企業と共同開発を行ったり、海外の有料コンテンツの日本市場向けカスタマイズに関わるなど連携の形は様々だが、ロケーション事業を行っている観点から、マッチングしたユーザーやオペレーション上の改善を提案できることも同社が提携企業にもたらせる大きな利点と言える。

『VRテーマパーク』を目指していく

なお、入場料は事前予約の場合は1名3,300円(週末など休日は3,500円)、当日入場の場合は3,500円(同3,700円)で、90分遊び放題のプランとなっている。3,000円以上の入場料はやや強気な印象を受けるが、そこには渋谷店の実績も踏まえた自信が伺える。

「映画館がひとつの基準で、2時間楽しめて1,800円、4DXなら2,500円くらいですよね。それに加えてVRアトラクションというと1プレーでも500円程度の料金設定が多く、本施設で全アトラクションの半分を遊んでいただくだけでも同じくらいの料金になります。その2つの角度から『VRテーマパーク』という位置付けの上でお客様に十分に納得していただける料金設定を置いています」
その後、筆者も実際に施設を体験。本格的なVRアトラクションを体験するのは初めてだったが、テレビで芸能人が体験して驚く姿などを見て「まさかそんなに驚くはずが…」とやや斜に構えていた気持ちが見事に逆転。「おそ松さんVR」のように楽しい体験もありつつ、F1ばりの高速走行や宇宙空間の高いところではビクビクと足がすくみ、飛び込んでくる魔物を避けようと必死に声を上げてしまうというリアルさながらの擬似空間にまさに度肝を抜かれた感覚だった。90分という限られた時間ながら、普段動かさないような筋肉も使うことになるので、実際の時間以上の遊戯感覚が得られるはずだ。

「アドアーズをテーマパークにしたい」と話す安藤氏。我々が先入観として抱いていた“ゲーセン”のイメージは、VRのような最新技術を交えて確実に変わりつつある。ハード・ソフトの両面によるVR・AR市場の促進を柱にしてリブランディングに挑む同社が、今後もアミューズメント業界の旗手として時代をリードしていくことは間違いないだろう。

2017年12月22日

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