日本の経験を活かしてシリコンバレーの技術者に
女性トップエンジニアが歩むキャリアストーリー

アプライドマテリアルズジャパン

世界17カ国93カ所に拠点を擁し、半導体製造装置のトップ企業として世界的に知られるアプライド マテリアルズ。アメリカ・シリコンバレーの本社には、日本法人であるアプライド マテリアルズ ジャパンでの経験を活かして転籍し、活躍しているエンジニアたちがたくさんいる。ここでは、日本でプロセスサポートエンジニアとして活躍した後、アメリカ本社でトランジスタ(半導体素子の一つ)技術のディレクターとして働く吉田 尚美さんにインタビュー。同社の最前線で活躍するトップエンジニアが歩んできたキャリアに迫りつつ、自身と同じような道を目指す人たちへのメッセージを伺った。

日本法人での実績を買われ、シリコンバレーの本社に転籍

吉田さんは大学院で物理学を専攻。卒業後、1994年にアプライド マテリアルズ ジャパン(AMJ)に入社し、現在はシリコンバレーにあるアプライド マテリアルズ本社に勤務している。技術開発の最前線で活躍しているが、どのような経緯でAMJへの入社を決め、米国の本社へ転籍することになったのか。

「修士課程の最終年で就職活動をしていた時に、先にAMJで働いていた2年上の先輩から入社を勧められたことが、アプライド マテリアルズを知ったきっかけでした。その前から、大学院までの自由な環境を考えると“昔ながらの日本企業”と自分は合わないだろうと思っていたので、外資系企業というのも入社の大きな要因になりました。

入社後はプロセスエンジニアのチームに配属され、新技術の開発やお客さま向けのデモンストレーションなどに携わりました。5年目にシリコンバレーに長期出張し、本社の開発部隊に参加。学生時代の専攻は物理で、半導体とは別の分野の研究をしていました。しかし、入社後の5年間で様々な装置に関わりながら仕事を通じて専門知識を身に付けることができ、ものすごく多くのことを学ばせてもらいました」
AMJに入社した頃は、アメリカ本社へ転籍するという考えは頭の中にまったくなかったというが、このシリコンバレーでの長期出張の経験が、本社転籍への後押しになったと語る。

「入社から6年ほどが経った頃に、そろそろ新しいことがしたいと思うようになり、そんな時にアメリカの本社で求人が出ていることを知ったのです。今思えば、アメリカでもう一度チャレンジしたいと思えたことも、さらには本社の現場に無事に馴染めたのも、長期出張を通じて本社に人脈を築けていたことが大きかったと思います。
本社ではアカウントテクノロジーのチームに配属され、日本や台湾、シンガポールなどアジア地域を担当し、顧客の技術的サポートを任されました。その数年後に現在所属しているグループの前身となるチームから声がかかり、プロセスのインテグレーション部門に配属されることに。AMJにいた頃もプロセスのエンジニアリングに携わっていましたが、こちらでは日本にいた頃よりも、デバイス製造の複数の工程に係る開発に取り組んでおり、中でもシリコン基板に近いトランジスタ素子を製造する、いわゆるフロントエンドの製造技術に必要な装置の開発に携わっています」

エンジニアの「やりたいこと」が実現できる環境

米国本社と日本法人の両方に在籍し、仕事を通して多くのことを学び、経験してきたと語る吉田さん。どのようなところにアプライド マテリアルズの企業風土を感じているのだろう。

「大企業でありながらスタートアップ的な気風があり、自分がやりたいと思ったことに挑戦させてくれる会社だと思います。日本にいた頃も、様々なことにチャレンジしてきましたし、責任のある仕事を任せてもらえる環境の中で、多くの経験を積ませてもらいました。また、業務以外にも個々のスキルアップに対するサポートが手厚く、私の周りには会社に学費を援助してもらいながら、夜間のビジネススクールに通い、MBAを取得した同僚もいます」
昨年12月、アプライド マテリアルズ主催のテクノロジーシンポジウムで講演をする吉田さん
「特許の取得を奨励しているのも、エンジニアが高いモチベーションを維持できる要因です。私も会社のサポートを受けながら世界各地の学会に参加し、これまでに25件以上の特許を取得しました。特許や論文の権利は会社に帰属されますが、その実績は個人のレジュメに残るので、キャリアアップにも繋がります。

また、『エンジニアリング・アンド・テクノロジーカンファレンス』というグローバルの社内イベントがあるのですが、ビジネス面で特に大きな貢献があった特許は、その中で表彰されます。そこに立つことはエンジニアにとって何よりの名誉です。
ここには世界中の拠点から時には1000名を超えるエンジニアが参加します。領域の異なるエンジニア同士が交流を深められる機会はとても貴重で、そこで得られた経験は何事にも代え難く、刺激的でした」

女性エンジニアも、イキイキと活躍できる職場

半導体製造装置において世界トップ企業であるアプライド マテリアルズ。世界中から優秀な人材が集結し、最先端の技術を扱う職場は、多くのエンジニアたちにとって憧れでもある。そんな職場で働く醍醐味は何だろうか。また、日本の職場とアメリカの職場で違いを感じる部分とは、どんなところだろうか。

「日本の職場では、ハードワークに直面することもありましたが、その苦しさを越えるやりがいを感じられるのが一番の醍醐味でした。タイトなスケジュールであってもかならず期日を守るなど、決められたことを律儀に守る意識が強い。緻密で論理的な思考ができるエンジニアが多く、AMJ出身の社員はシリコンバレーの本社でも高い評価を受けています。
一方で、アメリカの職場は日本よりも自己責任と結果を重んじる環境。9時から18時まできっちり出社しているだけでは評価されず、とにかく結果を出すことが求められます。つまり、状況に応じて自分でスケジュールを決めてフレキシブルに働ける環境とも言えますし、良い結果を出せばそれが報酬として返ってくる。パフォーマンスに応じて適切な評価が与えられ、日本の企業では考えられないようなスピードで昇進していくような方もいます」
「もうひとつ違いを挙げるとしたら、アメリカでは『家庭を大切にする意識』が高いですね。例えば、家族の誕生日だから早めに帰りたいとか、子供の送り迎えがあるから出勤時間を調整したいという相談を、上司に遠慮なくすることができますし、結果さえ残していればプライベートを優先しても大丈夫。
女性のエンジニアやアジア系のエンジニアもたくさん活躍していて、多様性という面でも先進的な職場だと思います。産休から復職してバリバリ働いているママさんエンジニアも、少なくありません」

英語は必須だけど、「うまくなくてもいい」

AMJを志す人にとってシリコンバレーの本社で働くことは、キャリアアップにおける現実的な選択肢といえる。実際にその道を歩んできた吉田さんが、後輩たちに送るアドバイスとは。

「アメリカの学位はないけれど、アメリカで働いてみたいという夢のある方にとって、AMJはとても良い選択肢だと思います。アメリカで働くにはビザが必要になりますが、向こうの学位がなければ研修者用のビザすら取得するのは大変なことなので、AMJから転籍する形でアメリカに渡るのは、より確実な方法だと思います。

もちろん日本で実績を残すことがまずは大切ですが、将来的に転籍を目指すなら、日本にいるうちからアメリカ本社とのコネクションを積極的に作っていくことを勧めます。私も、長期出張の際にできた本社のエンジニアとのつながりが、転籍のきっかけと後押しになりました。日本の職場にいても本社と関わる機会は数多くありますし、海外出張の機会も多いので、人脈を作るチャンスは身近にたくさんあります」
グローバルな企業だけに、日本のオフィスでも英語でのコミュニケーションが日常的に行われている。アメリカ本社で働くためにはさらに高い英語力が求められるが、吉田さんはどのように英語力を高めたのだろうか。

「英語については『できなければならないけど、うまくなくてもいい』という言葉に尽きると思います。実は、私は学生時代に最も苦手な科目が英語でした。入社後も、英語で会話ができるようになったのは長期出張でアメリカ本社勤務になってからのこと。ある夜に英語だけの夢を見て、その頃から少しずつ自信を持てるようになりました。世界中からエンジニアが集まる職場なので、みんながネイティブのように英語を話せるかといえばそうでもなく、ボキャブラリーの数もアクセントの癖も人それぞれ。アメリカに来たばかりの頃、当時の先輩から「英語を間違っても、誰も覚えてないから」と肩を押されたことをよく思い出します。要は、英語力自体よりも英会話に慣れることの方が大切だと思います」

最後に、吉田さんはAMJを目指す人へのメッセージを次のように語る。

「規模が大きい会社なので、扱う製品や技術の幅が広く、社内にいろいろなフィールドがあるのがアプライド マテリアルズの面白いところです。
エンジニアとしても様々な形で技術を磨ける場があり、私自身も新しいことを始めたいと思ったタイミングで転籍や異動の機会を得て、それをスキルアップにつなげてきました。製品化されていないような最先端の技術を開発している部門もあるので、描ける将来像は多岐にわたります。世界を驚かすような仕事がしたい、やりがいを感じながらエンジニアとして成長したいという方にとって、AMJは最高の選択肢だと思います」

2019年9月30日

アプライドマテリアルズジャパン

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