BAKEを世界に羽ばたくブランドへ、新社長就任と株式取得の背景

BAKE

BAKE Inc.(以下BAKE)といえば、焼きたてチーズタルト専門店の 「BAKE CHEESE TART」をはじめ、シュークリーム専門店「クロッカンシュー ザクザク」、焼きたてカスタードアップルパイ「RINGO」、生どら焼き専門店「DOU」など複数ブランドを展開する製菓メーカー。
時間帯によっては長蛇の列になることも多く、日本人のみならずアジアや欧米の観光客も買いに来るほどだ。そんな人気ブランドを数多く抱えるBAKEが、2017年7月31日に第二創業を発表した。それは、以前よりマネジメントを担当していた西尾 修平氏の新社長就任である。併せて、投資ファンドのポラリス・キャピタル・グループ株式会社を筆頭株主に迎え今後BAKEの成長をスポンサーとしてバックアップしてもらう予定だ。今回は報道発表直後のタイミングでBAKEの長沼 真太郎(現社長)と西尾 修平(現取締役副社長で新社長 ※8月29日就任予定)に話を伺った。

1:BAKEの今まで

BAKEは、現社長の長沼真太郎氏によって創業されたお菓子のスタートアップである。2013年4月に、裏原宿にてBAKEを創業。当時は、男3人で手狭なオフィス兼住居で寝泊まりしながら新サービスの開発に奔走。そんなBAKEは4年で36億円の売り上げと500人以上の従業員を抱える大企業へと成長した。2017年6月期決算は約2倍を見込んでいるという。
BAKEの特徴はなんと言っても1ブランド=1商品のビジネスモデル、おいしさを追求するために原材料や製造過程にこだわり、工房一体型の店舗で作りたての商品を提供する。「お菓子を、進化させる」をステートメントに、科学やテクノロジーの力を積極的に活用したブランド開発によって製菓業界に新風を吹かせている。

長沼現社長「私は、商社に新卒で入社し父親の経営する「きのとや」を経て「BAKE」を創業しました。何もないところから0→1でビジネスを生み出していくことを得意としています。反面、急成長を支える組織づくりや経営管理の重要性がどんどん高まってきていると感じていました。その点で、西尾は前職を含め『経営・マネジメント』の経験・知見を持っており、また入社後は副社長として事業面・管理面・上場準備など経営全般を取り仕切ってくれていたことから、このタイミングで日本法人そしてグループ全体のCEOを任せるべきだろうとの結論に至りました。」


西尾新社長「以前は投資ファンド運営会社にて旅館や食品卸企業の再生案件に従事し、前職では上場企業にて経営企画の担当役員を経験しておりました。ご縁があって長沼と会う機会があり、BAKEでもその面で力を貸してほしいとの打診をもらい 2016年9月に入社させて頂くことになりました。入社後は常務取締役を経て副社長として主にCFO業務を中心に会社のコアな経営や戦略の部分の舵取りを任せて頂いております。」

2:第二創業においてベストタイミングが今

長沼現社長「4月からは北海道に引っ越し、新ブランドや原材料などの開発に集中してきました。 一方、経営上のレポートラインは今年の初旬から段階的に西尾に集中させ、将来の成長に向けた戦略作りに着手しました。具体的には、今以上に信用力を高めること、かつ柔軟な資金調達の機会を獲得するための手段として近い将来の株式公開を目指すべく検討を開始しました。ですが、ここで難しい問題に直面しました。現在私は父が創業したきのとやとBAKE両社の大株主かつ取締役であり、きのとやはBAKEの重要な取引先の1社でもあります。言い換えると、私がきのとやを優位にするような取引価格を決めることができてしまう状態です。これについて、複数の専門家から「現在の取引状態での上場は困難であろう」との意見を頂きました。よって上場を延期し、ゆっくりとした成長を辿る選択肢もありました。
ですが、BAKEはずっと成長していきたい、世界にもっと広めていきたい、という創業からの想いを捨てることはできませんでした。そして、いくつかの投資ファンドからご提案を受けた中で、ポラリス様を筆頭株主に迎え、スポンサーとして今後のBAKEの成長をバックアップしていただくことになりました。」


西尾新社長「この数か月間、複数の事業会社や投資ファンドとの対話の機会を持ちつつ、これら課題を解決できるであろう、あらゆる可能性について模索してきました。現在の執行体制を評価頂きかつBAKEの強みや経営方針を深く理解頂けたこと、そして過去の投資案件における株式公開や急成長中の企業の支援実績が豊富であることからポラリス様への筆頭株主の異動を選択するに至りました。」

3:新社長とは今までも、これからも二人三脚

長沼現社長「私は、生まれも育ちも北海道です。新商品開発や原材料の研究開発はきのとやとの連携が多いため、この4月から私自身の活動拠点を札幌に移しています。昨年秋にはBAKE新自社工場も開設し、北海道発での製菓輸出も始まっています。距離は離れていますが、都度東京オフィスにも出社していますし、西尾との情報共有は社長交代後も継続して密に実施する予定です。」

西尾新社長「長沼とは、社長就任が決まる前から積極的にコミュニケーションをとってきました。毎朝30分間時間を決めて、1on1でのミーティングを実施し、経営課題のみならずお互いの思いや考え方について議論してきました。札幌に拠点を移されたあとも、必要があればスカイプや電話でミーティングも欠かしませんし、会長職に就任された後もこの関係性はあまり変わらないと考えています。」

4:新社長がこれからやっていきたいこと

これまでも驚異的なスピードで店舗やブランドを拡充していったBAKEではあるが、新社長就任によりその速さもより増していく事になるという。西尾新社長が考える戦略とはどの様なものなのだろうか。

西尾新社長「新社長に就任しても、自社で培ってきた空気感やブランド戦略は、変えていくつもりはありません。商品やブランド一つ一つにストーリーが存在し、それを洗練させていく事でBAKEのファンを獲得することができました。このプロセスを大切にしながら、世界的な展開を視野に事業展開を加速させていきたいと考えています。」

西尾新社長「今までは、長沼が持っている嗅覚や感性によって0から50店舗へと発展していきました。その50を仮に10倍とする為には、仕組み化が必須だと思います。株式上場に向けて、色々な人が関わってくるのでスピード感は相対的に遅くなってしまう部分があるかと思います。そうした中で闇雲に人を増やすのではなく、少数精鋭の組織づくりを意識して目標を達成ができる組織を作っていきたいと考えています。」

長沼現社長「今後も年に2ブランドぐらいのペースで新しいブランド、商品を作っていきたいと考えています。自分たちのポリシーは8割主義。これは8割の人が好きなブランドカテゴリーで挑戦するということです。ここにBAKEの強みであるおいしさへの追求、できたてを提供する工房一体型店舗、原材料へのこだわり、クリエイティビティを付加し、ブランドのコンテンツメーカーとして進化し続けていきたいと考えています。具体的に次のブランドをどのような商品にするかは現在構想中 なのですが、みんなが大好きでよく知っているカテゴリーに挑戦したいと考えています。」

西尾新社長「既存のブランドやこれから立ち上がっていく新ブランドをより多くの人に知ってもらうのも新社長としてのミッションと考えております。BAKEはこれからも国内のみならず積極的に海外展開を加速しますし、現在未出店の地域についても東南アジア・中東及び欧米を中心に交渉を進めているところです。」

5:これからのBAKEはどの様になるか?

西尾新社長「これからのBAKEの強みは維持しつつ、科学的・論理的な視点をさらに付加しより大きな事業体へと成長させていきたいと考えています。また、筆頭株主が変わることで、経営体制やガバナンスの強化にも着手します。

コーポレートのステートメントである「お菓子を、進化させる。」を軸に、より美味しいお菓子をより多くの人により早く届けることに一丸となって注力していきたいです。」

近い将来新たなブランドを公開予定のBAKE。社長交代と筆頭株主変更により複数のブランドポートフォリオを持つ『スイーツのコンテンツメーカー』としての独自の戦略で更なる成長を目指していくとのこと。名実ともに日本を代表する製菓メーカーとなる日は近いのではないだろうか。

2017年8月1日

BRAND TIMES
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