ムダな会議が生産性を低くする HRテクノロジーの専門家と語る“会議の民主化”

バルコ

企業の働き方改革において重要キーワードのひとつに上がっている「労働生産性」。その背景には「日本の労働生産性は先進国の中で最下位」というショッキングな事実があるのだが、いかに一人あたりの付加価値を上げて、全体の労働生産性向上につなげるかということは、もはや全企業の経営者の課題となっている。今回は会議効率化のためのワイヤレスプレゼンテーションシステム「ClickShare(クリックシェア)」を提供するバルコ株式会社の代表取締役である加藤浩典氏と、慶應義塾大学大学院特任教授で HRテクノロジー研究の第一人者でもある岩本隆氏の二人を招き、「会議」に焦点をあてて労働生産性向上のヒントを探っていく。

日本の生産性に必要なのは、はっきりとした責任と権限

-政府が推し進める働き方改革の中で、今やいたるところで労働生産性向上に対する議論が行われています。まず初めに日本の労働生産性がどうして低いのか、それぞれのお立場とご経験から率直なご意見を伺えますでしょうか。


岩本氏「私は外資系企業を何社か経てからコンサルティング業に移ったので、はじめは日本の企業の生産性の低さに驚きました。日本の会社員は何でも自分でやってしまうところがありますが、私がいた外資系企業では『仕事を捨てること』を徹底的に指導されてきました。朝、出社して10個のタスクがあるとしたら、そのうち7つか8つは捨てて、やるべきことに集中して定時には帰るという働き方です」


加藤氏「私は以前までドイツの法人の代表を務めていましたが、ドイツ人は夏休みが3週間と国で決められていて長い休みを取ります。ホームオフィスみたいな働き方も一般的になっていて夕方6時になると帰るのが普通です。でも、休日も残業も少ない日本の会社員と比べて彼らのアウトプットが小さいかというと決してそうではなく、結果もしっかり出せています。CEOやCFOも同じスタイルで仕事ができていて、そこには日本とどんな違いがあるのだろうと。明確な理由はわかりませんが、両国の労働生産性には明らかな差があると感じています」
岩本氏「日本の会社はジョブディスクリプション(職務記述書)の乏しい企業も多く、責任と権限が明確でないというのも課題です。私がノキアの研究所でマネジメントを担当していた当時、採用の際は『あなたにできないことをできる人を採ってください』と会社から言われていました。日本では上司が部下のすべてを知らなければ気が済まない。上司が部下を事細かに指導して、会議でも現場のすべてを知りたがるような風潮があります。それに対して、欧米では集団の一人一人のプロ意識が高く、自分でできないことは部下に任せるというのが当たり前。本来はそのスタイルの方が効率が上がるはずで、マネジメント側は任せられるかどうかの判断をするだけでいいんです」

何も生み出さない「ムダな会議」が生産性を低くする

-さっそく今回のテーマである「会議」の話が出ています。バルコが行った調査によると、会社員の10人に1人が週に20回以上のミーティングに参加をしており、1回あたりの平均ミーティング時間は約48分という結果になっています。さらに、日本だけに絞ると平均ミーティング時間は約54分と他の諸外国よりも長い傾向がわかります。
バルコが欧州、米国、豪州、日本、中国、インドの会社従業員2,833人(日本の回答数は209)を対象に行ったオンライン調査《2018年7月~8月実施》
バルコが欧州、米国、豪州、日本、中国、インドの会社従業員2,833人(日本の回答数は209)を対象に行ったオンライン調査《2018年7月~8月実施》
加藤氏「日本では報告が目的になっているような会議が多いです。マネージャークラスになると報告を聞くだけで一日の業務が終わるということもあるそうです」


岩本氏「私は企業のマネジメント研修を頼まれることが多いのですが、いろんな会社の働き方を見ていると、確かに朝から晩までずっと会議が入っているという人がいます。そこについて聞くと、『部下に会議を入れられている』と言うんです。でも、そういう人がインフルエンザにかかって1週間くらい出社禁止になったとしても実際に何の影響もなかったりする(笑)。結局、何のためにこれだけの会議をしているのだろうと思いました」
加藤氏「日本人はどうしても形にこだわるところがあって、会議のための事前会議のような場も多い。そこも報告の連続で、結果的に会議の数も時間も増えてしまうんです。さらに会議のための事前資料を作る仕事も多い割に一生懸命作った資料が本番で半分も使われないこともあります。そんなに無駄な時間が多ければ、労働生産性も上がるわけがありません」


岩本氏「会議における非生産的な作業はテクノロジーを活用すればいいと思います。報告はメールや社内SNSでできますし、極端な話、議事録も手書きのメモレベルのものをそのままスキャンしてその場で共有するなど、今ではそういうアプリもたくさんありますし。会議に関わらず、テクノロジーを使えばあらゆることがデータ化できるので、これまでおかしいと思っていた無駄な作業が論理的に指摘できるようになるはずです」

全員が意見を出し合う参加型会議が、成果を生みだす鍵に

-日本の会議には無駄が多いということはわかりました。では、それらを省いていくには、まずどういったことが必要なのでしょうか?


加藤氏「一人ひとりが参加型の形で意見を話すことができ、そこから何かが生まれるような生産性のある会議に変えていくことが大切です。これを我々の間では“会議の民主化”と呼んでいます」


岩本氏「“会議の民主化”って良い響きですね。これは日本文化の良き部分でもあるのかもしれませんが、会議の中では周りの目を気にして静かにしているのに、夜の飲み会になるとなぜか本音が出るという人がいる。会議が終わった後のコソコソ話や喫煙スペースでの雑談の中にもそういうことがありますよね。会議の中でもっと本音を言い合えば、効率の良い仕事ができるのにと思うことがあります」


加藤氏「やはり日本人は全体的に静かです。多国籍のスタッフが集まる場でもインド人などは、自己主張が激しいですね。つまりはオフィシャルの場で思っていることをきちんと伝えられる環境を作ることが大切だと思います。
あと、外資系企業は会議での決定に重みがあって、議事録は議事録でしっかりと残し、そこで合意したことを社内でちゃんと共有してきっちり皆のレファレンスにする。会議の内と外の切り分けがはっきりできているから、『あの時、飲み屋で話したよね?』といった曖昧な話にならず、会議の場が貴重な意味を持つわけです」
岩本氏「会議のあり方ももう少しアウトプットを考えた形にするべきだと思うところもありますよね」


加藤氏「そういう面では日本は規模の大きな会議が多いですね。1時間の会議で、そのうち自分の関わっている部分は5分くらいしかないこともある。そうなると残りの55分は黙って聞いているか、パソコンを開いて自分の作業をするということになります。大会議にすべてのメンバーを揃えるより、自分の関わる仕事に関する打ち合わせレベルの会議を多く積み重ねた方が合理的に思えます。

会議というのは本当に大事なことだけを話す時間をどれだけさけるかというのがポイントです。そこは最近注目されている『ハドルミーティング』の考え方とも共通しており、無駄な時間を費やす会議が多い反面で、必要な時に会議室が見つからず『会議室難民』のような経験をしている人も多い。先ほど挙げていただいた弊社の調査では、この問題に対して72%の人が設備投資すべきと回答しています。さらにハドルスペースを備えるオフィスに勤務する従業員のうち82%の人が『すべてのオフィスに最低でも1つのハドルスペースを設けるべき』と考えているという結果も出ています。

広い部屋でしっかりした資料を揃えて行うのが綺麗な会議と思われがちですが、そうではなく小さなスペースに3、4人程度で行う打ち合わせ程度の会議を定着させるのも会議効率化の方法のひとつです」


岩本氏「私が思うもうひとつの方法は、企業のトップ自身が高い意識を持って企業の慣習を変えていくことです。私がマネジメント研修を行っている会社では、社長が家からお茶の水筒を持参して毎朝のお茶出しを止めたところ、部下の作業効率が上がったそうです。上司が部下に無駄な時間を費やさせていることは往々にしてあり、社長が実践すれば常務であれ専務であれ、それに続かざるをえないわけです。会議にしても直接の報告を怠ると上から不満が出ることがあります。メールや社内SNSで共有したと言っても怒られるとか、直接報告するのが礼儀だと思っている方々がまだ少なからずいるのですが、上が意識を変えれば自然と組織全体が変わっていくものです。」
加藤氏「会社をマネジメントする立場としては耳が痛いです(笑)。先ほど合理的という話をしましたが、その合理的というのは一人一人のプロダクティビティをどう上げるかに直結しています。どうがんばっても一日は24時間しかない中で、働ける時間はさらに限られている。そこで全社員がどれだけの付加価値を出せるか。会議においても、限られた時間の中で参加者がどれだけインプットとアウトプットを実践できるかが成果の鍵を握っています」

議論も活発化。システムを利用して“会議の民主化”をサポート

-バルコが提供する「ClickShare(クリックシェア)」は、こうした会議の簡素化・効率化に役立つシステムですが、どういったものなのか詳しく教えて下さい。


加藤氏「『ClickShare』は、パソコンのUSBにボタン端末を取り付けるだけで、会議室のディスプレイに繋いだ本体と無線で通信できるというワイヤレスプレゼンテーションシステムです。ボタンひとつで自分のパソコン画面をディスプレイに映し出せます。『ボタンを押すだけで自分のパソコンの画面がディスプレイに映る』という、面倒な設定もなく簡単に操作できるので、ITリテラシーの高くない方でもわかりやすいと好評の声を頂いております。ミラーリングの機能を使ったスマートフォンとの連動も可能です」
岩本氏「今日初めて『ClickShare』を拝見しましたが、これはお世辞抜きでパッと世間に広がりそうな印象を持ちました。ワンプッシュというのがいいですよね。従来よくあるプレゼン環境では、発表者ごとに端末の交換や自分のファイルを移動する必要があったり、有線でつないでもディスプレイに映らないなどの小さなトラブルも頻繁にあります。そういうことに5分、10分と会議がストップしてイライラすることも少なくありません」


加藤氏「ありがとうございます。『ClickShare』は、設定の簡素化、時間の短縮だけではなく、まさに“会議の民主化”のサポートツールとしても役立ちます。最上位機種は最大64人の接続が可能ですので、会議の参加者一人一人が業務の進捗状況や写真・映像の共有をスピーディーに行うことができ、個々の発言が活発になるといった効果も期待しています。ハドルミーティングのようなコンパクトな会議でも大いに役立つと思います」
岩本氏「トップダウンで物事を決めることに限界が出始め、ボトムアップからのイノベーションが求められている企業もある中で、新しい仕組みづくりにも貢献しそうなシステムですね」


加藤氏「そうなるといいですね。共有型オフィスなども登場し、仕事のやり方自体が変わってきているので、そういう場面にもこのシステムが自然に使われるようになってくれれば嬉しいです。『ClickShare』を通じてもっと参加型の会議が増え、様々な人が自由闊達に話し合いができる文化が広がればと思っています」


▼ClickShare
http://clickshare.jp/

2019年1月15日

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