女性を雪山に呼び戻す、 女性のリーダーシップによるスノーボード界のゲームチェンジ

BURTON

2017年11月2日(木)、革新的な技術によりスノーボード界を切り拓いてきた「バートン」から、全く新しいバインディングシステム「Step On™」が発売された。つま先の両サイドとヒールの計3箇所での固定により、ブーツとバインディングの脱着にかかる手間と時間が圧倒的に短縮される当モデルは、昨シーズンの情報解禁以来、ライダーの間でも注目を集めている。中でも、同時に発表されているウィメンズラインには、メンズラインと同等かそれ以上のこだわりが込められている。今回、「Step On™」シリーズの発売に先行してオープンした国内4店舗目、都市部では初めてのパートナーショップである「BURTON NAGOYA」のレセプションに合わせて来日したバートンのオーナーであり、CEOを務めるドナ・カーペンター氏に「Step On™」シリーズへのこだわりを伺った。また、彼女はブランドの創始者であるジェイク・バートン・カーペンター氏の妻でもあり、これまでブランドと深く関わってきた彼女が、女性スノーボーダー拡大へのビジョンをどのように捉えているのかも話を聞いた。
バートン CEO ドナ・カーペンター氏
バートン CEO ドナ・カーペンター氏

女性用「Step On™」は「ただサイズが小さいだけ」ではない

今回女性用「Step On™」の開発にあたり、ドナはメンズラインの開発とほぼ同時期にウィメンズラインへ着手したという。一般的に女性向けアイテムを製作する場合、単にカラーバリエーションやサイズバリエーションを増やすだけのケースもある。しかしバートンの女性用「Step On™」は、女性の体型や骨格に合わせたプロダクトに調整することで、女性でも軽いタッチの装着を体感できる仕様となっている。

ドナは女性スタッフによるテスティングを重ねるなかで、プロダクトの構造自体を「女性向け」に作り変える必要性に気づいたという。

「最初のテスティングで気づいたのが、メンズラインをそのまま女性に装着すると、つま先の部分がはまりにくいということでした。そこから素材を変えることになり、女性が装着しやすいような改良を重ねました。もし女性の力を借りなかったら、男性向けのデザインのまま製作が進んでいたでしょう。」

プロダクトに込められた「女性としての生き方」

元々女性用のプロダクトも多く展開しているバートンだが、今回の開発にあたり、ドナは初期段階から女性スタッフにプロジェクトへ参加してもらったという。女性の意見を積極的に取り入れた女性用「Step On™」に強く根付くのは、ドナの「女性としての働きやすさ」を求める経営ビジョンである。

「実は、初期段階から女性に意思決定の場に参画してもらい、そこで意見を取り入れ、リーダーシップをとってもらって商品開発することは初めてでした。女性向け商品だからこそ、女性の声をもっと反映させるという意図はもちろんありましたが、意識的に女性の意見が取り入れられるような会社を作らなければとも思っています。産休・育休を取る人もいれば、戻って来る人もいる。彼女たちに投資をすることで、彼女たちも会社に対して投資してくれる。だから才能を逃さないようにきちんと戻って来られる環境をつくることが重要です。」

「女性に優しい製品」は「全スノーボーダーに優しい製品」である

今、バートンでは育児家庭に対するサポートはもちろん、チャイルドケアのサポートも充実している。たとえばキャリアの浅い社員が出張しなければいけないとき、ベビーシッターが一緒に同行できるようなプログラムもあるのだ。ただ、こういった考え方や取り組みが受け入れられたのは最近の話だという。

「10年前までは男性主導で開発が行うのが当たり前だったので、いきなり女性のリーダーシップについて叫ぶと、男性は萎縮してしまいました。『なんで女性だけそうやって優遇するんだ!』という意見もあがったくらいです。ただ、今では子どもがいる男性が中心となって、こういったシステムを理解してもらっています。」

女性としての働き方を重視することで、結果として「人としての働き方」の質が向上すると、ドナは考えている。そしてその視点は、ブランドの製品づくりにも直結している。

「女性のリーダーシップに視点をおくことで、よりよい会社がつくれると思っています。というのも、男性社員においてもその妻や子どもをはじめとした家族があるからです。一人ひとりの職場外の生活も大切にしたいですし、それが会社にとって重要であるということは理解しています。女性に優しい環境をつくることは、すべての人に働きやすい職場になるはずです。 また、女性に優しいプロダクトを作るのも、結果としてスノーボード全体を活性化することにつながります。だって、どこの家族も、お出かけ先の主導権を握っているのは女性でしょう。それに『母親が幸せな家庭』は、家族全員が常に幸せなんです。お母さんがスノーボードを楽しみ続けてくれれば、自然と家族もスノーボードを楽しんでくれるはず。我々のこれからの未来は女性にかかっているといっても過言ではないくらいです。」

女性スノーボーダーの拡大に向けて

冬季オリンピックイヤーとなる2018年、アメリカ合衆国をはじめとするナショナルチームに公式ウェアを提供しているバートン。国際的なスポーツの祭典をどう捉えているのだろうか。

「オリンピックはアスリートにとってはすばらしいプラットフォームだと思います。ショーン・ホワイトやケリー・クラークのようにさまざまなスターを生み出してきました。ただ、我々はアメリカ代表だけではなく世界中のバートンのライダーたちを応援しますよ。だって我々は、ただ競技のためのスポーツ製品を開発するという領域ではなく、スノーボードというカルチャーやライフスタイルを発信し、その楽しみ方も含めて世界に広めているのですから。」

また今後のスノーボード界について、ドナは女性用「Step On™」が女性のスノーボーダー人口を拡大させる鍵になると考える。

「まさにゲーム・チェンジャーとなっていくのではと思います。バックルを止めたり外したりするのを億劫に感じる人は少なからずいたはず。新しい技術によって、新規スノーボーダーだけではなく、今までスノーボードから離れていた女性の呼び戻しにつながるのではないのでしょうか。」

最後にバートンが今後作っていきたい世界は何なのか伺った。

「バートンはブランドの独自のスタイルを持っています。単なるオシャレで使いやすいブランドというだけでなく、ユーザーのライフスタイルやその背景を理解した上で魅力的な製品を作っています。最終的に、作る側もユーザーも多くの女性が関わっていくことができたとき、一番に選ばれるブランドになるのではないでしょうか。それを信じて目標にしています。」

スノーボードのハードルを下げ、幅広いライダーたちを魅了させることになるであろう「Step On™」。ライフスタイルとしてのプロダクトに込めた想いは、業界に革命をもたらすだけではなく、ゲレンデから遠ざかっていた多くの女性ライダーを雪上へ呼び戻すに違いない。

「Step On™」を始め、バートンブランドのこれからが非常に楽しみだ。

2017年11月20日

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