バリューチェーンに よって見えてきた プレス業務の新しい領域

カイタックインターナショナル

雑誌などに出稿して、ブランド自体の認知度を上げていくプレスという仕事は、おそらくもっとも数値化しにくい職種のひとつだ。しかしカイタックインターナショナルではバリューチェーンによって、そのプレスにも具体的なロジックを要求している。そんな過渡期とも言えるプレスチームの3人に、今後目指すべきマーケティング戦略の在り方を聞く。

外からは見えにくい プレスという仕事

——アパレルのプレス、というと一般の人からするとどんな仕事内容なのかよくわからない職種だと思うんですが、日常の業務はどのような感じなのですか?

谷口真愛(以降、谷口):そもそものプレスの仕事というものは、自社でやっているブランドのイメージや認知度を上げるというのが大きな目的になります。具体的な仕事内容としては、メディアに露出するために、撮影サンプルを借りにいらっしゃったスタイリストの方への接客対応や、雑誌に掲載される内容などのチェック、雑誌掲載にあたっての打ち合わせや場合によっては、撮影の立ち会い、展示会の設営、ホームページやカタログの制作や更新などがありますね。

——かなり多岐にわたるんですね。どの雑誌へいつのタイミングで出稿するかなど、広告戦略的なことも担当するんですか?

宮城義真(以降、宮城)担当しますが、プレスという仕事は、職域がとても多岐にわたっていて、だからこそ広告戦略を考える上でも様々な部署との連携が必要になってきます。

——プレスっていうと、なんだかキラキラしてるイメージがあるんですけど、実際はどうなんでしょう?

宮城:うーん。どうでしょうね・・・。いろんな部署間の調整だったり、展示会設営の手配だったり、雑誌に載せるクレジットの入力とか、けっこう地味な仕事も多いですよ。キラキラで言うと、全体の3割くらいですかね(笑)。
菊池綾乃(以降、菊池):私はもともとプレスではなく、EC運用などに携っていましたが、スタイリストさんやカメラマンさんなど、プロフェッショナルな方と関わることも多いので、それがやっぱりすごく刺激的ですね。それから、うちの会社の場合は未経験でも、いろんな仕事をやらせてもらえるので、やりがいはありますね。

——いろんな仕事というと?

菊池:例えば卸先であるセレクトショップや百貨店の店頭に置くPOPのデザインもしますし、時には自分で写真をとってレタッチしたりもします。最近ではSNS関係に携わることもできて、それもいろいろと挑戦しがいがあって楽しいですね。

——プレスという仕事はどんな人が向いていると思いますか?

谷口:いろんな人と出会って、繋がっていく必要がある仕事なので、社交的であるということは大事だと思います。それからもうひとつは、地味な仕事も楽しんでできる人が向いていると思います。

——キラキラ方面だけではなく、ですね?

宮城:ですね。外から見えるプレス像と、実際の仕事内容は結構隔たりがあったりするので、表面だけ見ていると、続かないと思います。

これから必要になる プレスとしてのロジカルな思考

谷口:先ほどもちょっと話に出てきたんですけど、社内だけでなく、社外の方とのやりとりも多いので、その間に立つ調整役のような役回りもあります。そしてうちの会社は、「可愛い」とか「格好いい」とか、そういう感覚だけでものを言っても通じない社風があります。だから、物事をロジカルに伝える能力も必要になってくると思います。

——なるほど。いま「感覚だけでは通じない」と仰いましたが、そういうことは以前からそうだったんですか? それともバリューチェーンが重要視されてからのことですか?

谷口:重要視されてから、ですね。それはプレスチームだけではなくて、営業も企画も、同じように求められていることですね。

——お仕事内容を伺うと、ロジカルにしにくい内容なのかなと思うのですが、どういう風に理屈づけをしていくんですか? 例えば、どこに出稿するか? カタログのテーマを今回これにした理由はなんなのか? など、割と感覚的なものも多く含んでいそうな印象なんですが。

谷口:それを解決してくれるのも、バリューチェーンという考え方なのかなと思っています。以前は、デザイナーはデザイナー、営業は営業、そしてプレスはプレスという感じで、それぞれがバラバラに動いていたところがあるんですが、バリューチェーンというものが導入されてから、デザイナーの考え、営業がもってくる情報なども、私たちの所にきちんと届くようになりました。そういう風に他部署と認識を共有していくことで、組織全体の向かうべき方向のようなものが明確になってきた。そのガイドラインのようなものがあるから、プレスとしても、出稿先やカタログの作り方などを考えるときに、そのガイドラインに沿って考えていけば良いわけです。

——バリューチェーンのお陰で、ロジカルにしやすくなったワケですね。

谷口:そうですね。それまではターゲット年齢だとか、購買層などのデータをきちんと取れていないブランドもありましたが、バリューチェーンが重要視されてからは、それがとても明確に数字としてフィードバックされてきますから。

宮城:もちろん、僕らはそのガイドラインに沿って、広告戦略なども組み立てていくわけなんですが、そこで注意しているのは、世情や時間の流れを敏感に捉え「その時にそうじゃないかもしれない可能性」を考慮すること。だから、先入観をあまり持たず、いろんな情報を積極的に集めていくことも、これからのプレスの大切な仕事だなと思います。
数字がもたらす マーケティングの優位性
数字がもたらす マーケティングの優位性
——いろんな人と出会うことが多いプレスならではの役割かもしれないですね。他に、なにかバリューチェーンによって変わったところはありますか?

宮城:プレスという職種はどちらかというと、数字というものを度外視しがちだったんですが、ビジネスとしての売上、コスト意識、生産工程などを知ることによって、数字的な意識が入ってきます。それまでは「感度」のようなものを重視して出稿先などを決めていたところもありましたが、バリューチェーンによって、もっと総合的に判断できるようになったというのは大きいですね。

——通常のプレスでは本来もっていなかったはずの情報を持てたから、選択の幅が大きく広がったわけですね。

菊池:それから、変化といえば、より数値化しやすいものへ注力するということも始めています。例えば自社のWEBだったり、SNSなど、反響がよりダイレクトに返ってくるものにも今後は力をいれていく予定です。
——最後にみなさんの今後の展望、もっとこうしていきたい、という事などがあれば教えていただけますか?

菊池:私がいま担当しているSNSに関して言えば、一度講座などをきちんと受講して、理屈をきちんと理解した上で、改善点を見つけていければ良いなと思っています。それをうちのバリューチェーンという仕組みを通して、各部署にも広めていく。結果、会社自体がちょっと変わっていくような、そんなことができたら良いですね。

谷口:例えば雑誌に出稿した、ビジュアル撮影をした、とかそういうことが、今まではそれぞれが点で終わってしまっていたので、それのもっと広い活用方法を考えたいですね。例えば、ビジュアル撮影したものをどのようにWEBサイトやSNSなどにも役立てていくかなど、いままで「点」でやっていた施策をもっと繋げていって「線」にしたいですね。

宮城:プレスとして、どんなに歴が長くなっても顔が広くなっても、1人でできることは案外少ないです。にも関わらず、手掛けることや影響を及ぼす相手はかなり広い。それを考えたときに、プレスチームはもちろん、社内外のあらゆる方々と一緒に取り組むことで1人ではできないことを形にできるように努めていきたいですね。

文:櫻井卓  写真:林孝典

第1話
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2017年3月14日

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