宿泊するだけで社会貢献活動に参加できる。
コンフォートホテルが目指す、社会との新たな関係
「Color your Journey. 旅に、実りを。」をコンセプトに、全国で60以上の“コンフォートブランド”ホテルを展開している株式会社チョイスホテルズジャパンでは、公式Webサイトで登録した会員の宿泊代の一部を社会貢献活動を行っている3団体に寄付する取り組みを続けている。支援の根底にあるのは「旅で世界とまちを元気にしたい」という思い。
その寄付金の贈呈式が5月16日(木)に行われ、村木雄哉社長自らが「環境」「教育」「雇用」の各領域で活動している3団体の代表者に目録を手渡した。ホテルが社会貢献の課題に取り組む意図はどこにあるのか、その活動は本業にも効果をもたらすのだろうか?村木社長に話を聞いた。
ホテル利用者と社会、双方に貢献できる新しいシステム
コンフォートホテルは中間価格帯の宿泊料金を中心に「コンフォートイン」「コンフォートホテル」「コンフォートスイーツ」の3ブランドを展開し、無料朝食サービス、全室禁煙、自由に寛げる「Comfort Library Cafe」(一部ホテル)の設置など、宿泊者のニーズに応える運営で好評を得ている。その公式ホームページから登録できる会員制度が「Choice Guest Club™」。会員になると最安値での宿泊の保証や、滞在時間の延長、割引クーポンのプレゼントなど、さまざまな特典が用意されているため、出張の多いビジネスマンを中心に会員数を確実に伸ばしている。
コンフォートホテル神戸三宮
コンフォートホテル仙台西口のComfort Library Cafe
無料朝食
そして、「Choice Guest Club™」会員が宿泊すると、宿泊代の一部が社会貢献活動を行う団体に寄付される。2016年から始まったこの取り組みだが、会員数の増加と共に寄付額も増えて今年は1200万円が集まり、「環境」「教育」「雇用」の3部門から選ばれた3団体に贈呈された。
環境部門から選ばれたのは、『認定NPO法人JUON(樹恩)NETWORK』。都市と農山漁村の人々をネットワークで結ぶことにより、環境の保全改良、地方文化の発掘と普及、過疎過密の問題の解決などに取り組んでいる団体だ。人的な交流、森林・田畑の保全、ボランティア人材育成、国産品・地産地消の推進など積極的な活動を行っており、普段は都市生活の参加者が森林の手入れを行うなどの体験型プログラムが特徴だ。
教育部門からは、『認定NPO法人カタリバ』。どんな環境に生まれ育っても未来をつくりだす力を育める社会を目指し、すべての10代が意欲と創造性を手にできる未来を実現しようと活動している。震災をきっかけとして始まったコラボ・スクール、あるいは、都市部と地方のそれぞれの課題や、子どもの貧困問題など、社会の変化に応じてさまざまな事業に取り組んでいる。
雇用部門からは、『One Planet Café Zambia』が選ばれた。アフリカ、ザンビアでオーガニックバナナを原料にしたバナナペーパーを作り、現地に新しい雇用を生み出し、世界の動植物を救うことを目指している団体だ。バナナペーパーの製造には日本の伝統工芸である越前和紙の技法が活用されており、世界フェアトレード機関認証を取得している。
贈呈式の様子。選ばれた3団体の代表者が登壇し、抱負や意気込みを語った。
5月16日に開催された贈呈式に出席した各団体からの出席者たちは、村木社長から目録を受け取ると感謝の意を述べると共に活動への新たな抱負と意気込みを語った。その言葉を聞いて活動の意義を改めて知ったという村木社長に、ホテルと社会貢献活動、CSR活動の今後進むべき道などについて話を伺った。
地域に支えられているホテルとしての恩返し。
‐ホテルと社会貢献活動を関連付けて考えるのは、なかなか難しいとも思うのですが。
「我々はアメリカのチョイスホテルズインターナショナルとマスターフランチャイズ契約を結んでいますが、アメリカをはじめ海外ではホテルの社会貢献活動は当たり前のように行われています。各国から参加する年1度のコンベンションでも活動内容が報告されていて、その話を聞きながら、我々も何か行動を起こさなければいけないと考えていました。そこでどのようなことができるのか外部の知恵も借りながら社内で議論を重ねました。
大切にしたのは「地域に支えられているホテルとして何ができるのか」ということです。お祭りやイベントをお手伝いし、直接寄付金をお渡しすることも重要でしょうが、私たちのホテルはインターナショナルブランドであり、かつ日本全国に展開していることもあり、もっと根本的な部分で社会活動に関わっていく必要があると考えたのです。そこで社会貢献活動を行っている団体を支援させていただくことに決めました」
‐支援される3団体はどのように決めたのでしょうか?
「当社が特に重要だと考えている「環境」「教育」「雇用」の各領域で活動されている3団体です。2016年から取り組みを開始しましたが、当初はそのような団体と繋がりもなかったので、独自に調べ、ご紹介もいただきながら、実際にお会いしてこの団体なら間違いないと判断しました。社会貢献の問題は長いスパンでとらえることが必要なので、継続して同じ団体を支援させていただいています。」
‐単にお金を寄付するだけではないのがこの取り組みの特徴だと思いますが。
「当社の社員がいくつかの活動現場に参加しお手伝いさせていただいています。例えば、「JUON(樹恩) NETWORK」さまのご協力のもと、当社社員が森林ボランティア活動に毎年参加しています。これまで広島、三重(四日市・南伊勢)、東京(青梅)で開催し、2019年は「Choice Guest Club™」の会員のお客さまを招待しました。また、森林だけでなく、みかん畑の手入れにも参加するという新たな試みも実施しました。私も参加したことがありますが、そのときにみかん畑を維持できる人材が足りなくなっているという事実を知り、三重県出身ということもあり、何か対策を打たないといけないと痛感しています。
「One Planet Café Zambia」さまのザンビアツアーには私も参加したことがあり、以後毎年社員が参加しています。参加者は価値観が変わって帰ってくるようで、環境や貧困問題に対する意識も高まっています。また、「カタリバ」さまが運営する、コラボ・スクールに通う被災地の中高生とスタッフの方々に毎年コンフォートホテルにお泊まりいただいています。辛い経験をしながらも、地域の垣根を超えて未来を語り合う学生さんの姿にホテルスタッフも大きな刺激を受けました。会社と社会貢献活動を支援するという取り組みが従業員のモチベーションを高めているのだと思います」
田畑の楽校での様子
参加したスタッフの皆さん
‐宿泊料金の一部が寄付金になるというのはユニークな発想ですよね。
「お客さまの旅が「世界とまちを元気にする」という考え方を大切にし、「Choice Guest Club™」の会員の方の宿泊代の5%を寄付金としています。会員の方にはできるだけご納得いただけるサービスを用意していますが、ポイント還元率という点では、もっと高いサービスを提供しているホテルがあるのかもしれません。それでも多くの会員の方から理解と支持をいただいています。」
‐この取り組みは御社の業績にも好影響を与えているのでしょうか。
「「Choice Guest Club™」は3年前にスタートしましたが、当初の予測を上回る速さでご登録いただき、今では30万人以上の会員数となっています。弊社の取り組みに共感されて会員になられた方もたくさんいらっしゃいますし、我々と一緒にボランティア活動に参加される方もいらっしゃいます。いつかはお客さまをザンビアにお連れして、バナナペーパーの工場を見学していただきたいですね。近年、若い方を中心に社会活動に関心を持つ方が増えているのではないでしょうか」
企業が目指すべき新たな社会貢献活動の方向性
‐今後、企業の社会貢献活動はどのような方向に進むべきだとお考えでしょうか。
「従来は寄付をしたり、本業とは関係ない分野への支援をする企業が多かったと思いますが、これからは本業そのもので社会的価値を創造し、結果として本業にもいい影響を与えるような、いわゆるCSVが主流になってくると思います。ホテルは社会そのものに恩恵を受けている事業なので、少しでも貢献できるように努力したいと思います。もちろん、SDGs(持続可能な開発目標)にも積極的に取り組んで行きます」
‐コンフォートホテルの今後の展開についてお聞かせください。
「2018年から「Color your Journey. 旅に、実りを。」をコンセプトにさまざまなサービスを展開させていただいています。コンフォートブランドホテルのルーツであるフロリダのように優しい光に包まれ、思い思いの時をきままに過ごせる空間を提供するため、客室や快眠、朝食、接客など、お客さまとの接点を、サービス面でもハード面でも増やしていきたいと考えています。
また、2030年に訪日観光客を現在の約2倍、年間6000万人に増やすという政府の指針もあり、ホテルは需要に供給が追いついていないのが現状です。我々も今後年に3~5店の予定で増やしていく予定です」
PROFILE
村木雄哉
三重県出身。青山学院大学卒業。
2000年7月開業のコンフォートホテル大分をはじめ、日本でのコンフォートホテル展開の黎明期より携わる。2000年9月に株式会社日本チョイスが設立され、2003年11月にチョイスホテルズインターナショナルとマスターフランチャイズ契約を締結。以降、コンフォートブランドを全国展開。日本で唯一全国展開に成功した中間価格帯のグローバルホテルブランドを立ち上げる。
チョイスホテルズジャパン