デジタル革新で新時代を切り開く。世界最大級のニュースチャンネル「CNNインターナショナル」のマルチプラットフォーム戦略とは

CNN

日本を訪れる外国人観光客は年々増加し、日本への興味関心は高まっている状況と言える。同時にそれは日本企業がグローバル企業を通して、世界に向けて情報を発信する絶好のチャンスといってもいい。
CNNはそんなグローバル企業の一つだ。テレビ・デジタル・モバイル上で世界4.5億世帯以上に視聴されている。CNNインターナショナルは、世界No.1のニュースチャンネルで、現代のようなデジタル時代においてビジネスを更に強化しようとしている。

今回は、CNNインターナショナル・コマーシャルの広告営業上席副社長であるスニータ・ラジャン氏、デジタルコマーシャル戦略兼収益部門の副社長であるロブ・ブラッドリー氏、オーディエンス・データ部門の副社長、ティニ・セヴァク氏の三者を招き、お話をうかがった。デジタル全盛時代におけるニュースメディアとしてのあり方や、彼らが展開している「マルチプラットフォーム戦略」、そして日本のオーディエンスの印象などについて語っていただいた。

(左)オーディエンス・データ部門副社長 ティニ・セヴァク氏
(中央)広告営業上席副社長 スニータ・ラジャン氏
(右)デジタルコマーシャル戦略兼収益部門副社長 ロブ・ブラッドリー氏

新たな時代を『機会』と捉え、イノベーションを起こしていく

―まず最初にCNNという企業の哲学と、その中におけるCNNインターナショナルのポジションについて教えてください。

スニータ氏
「CNNはテッド・ターナーがケーブルネットワークを設立して以来40年近く存在するブランドで、2020年に40周年を迎えます。その中で、我々CNNインターナショナル・コマーシャルは、国際部門のプラットフォームとして、商業パートナーと世界市場に向けてCNNブランドを発信しています。つまり、我々はCNN内の商業部門であり、米国以外のすべてのCNNの商業を収益化し利益を生み出しています。

CNNはテレビのケーブルネットワークとして始まりましたが、テッド・ターナーが40年前に掲げた革新的なスピリットを今も持ち続けています。我々は進化と変化を遂げてきましたが、オーディエンスが必要としているものを追い求めるという、核となる部分は貫いてきました。それを念頭に置いた上で、今ではテレビ、デジタル、そしてモバイルを駆使した真のマルチプラットフォーム企業へと発展したのです。CNNとCNNのストーリーテリングの成功は、素晴らしいオーディエンスの存在なしでは成り立ちませんでした。」
広告営業上席副社長 スニータ・ラジャン氏
広告営業上席副社長 スニータ・ラジャン氏
―昨今、様々な配信サービスの登場などによって、いわゆるオールドメディア(昔ながらのTV放送)のあり方が問われていますが、CNNインターナショナルではこの時代をどのように捉えていますか。

スニータ氏
「新しい時代の到来によってあらゆる産業が課題を抱えています。消費者の習慣も嗜好も行動も変わりました。企業やブランドは、イノベーションを通してこれらの変化に直面し、適応していかなければなりません。競合を出し抜くような先端企業は、投資ができて、古いものと新しいものをちょうどよく活用できるような先を見通す力とビジョンがある企業だと考えています。古いものと新しいもののバランスをとることは、ビジネスにおける『チャンス』です。CNNは、テレビスタジオの中だけには留まらず、テクノロジーを駆使してどこからでもストーリーを配信します。現代の企業にとってこれは重要で、特に我々のような市場を牽引するブランドにとっては必要なことです。」

ロブ氏
「ビデオ再生やSNSのフォロワーなど、CNNはソーシャルメディアにおいても世界最大のニュースブランドです。なぜなら、スニ―タが言ったように、ここでも、オーディエンスファーストの姿勢を貫いているからです。オーディエンスによっては、テレビを最重要視している人もまだまだいますが、ソーシャル上でCNNを視聴したいオーディエンスもいるという事実もきちんと受け入れています。これからもCNNの得意分野である放送に力を入れていきたいと考えています。これによって、独自のプラットフォームだけでなく、ソーシャルでも大きな成功を収めることができるためです。

コマーシャルチームとしては、新しいプラットフォームを活用し、理解していく必要があります。現在、CNNには35のプラットフォームがありますが、私たちはそれらを理解して機能させなければなりません。理解することによって、収益化を図ることもできます。よって、我々は、新しいものを素早く理解し、ビジネスモデルを迅速に設計しなければなりません。今の話を踏まえると、伝統的なTV放送は、SNSやモバイルと同じくらい重要です。我々にとって、TVを通じて正しい情報を届けることはまだまだ重要なのです。」
デジタルコマーシャル戦略兼収益部門副社長 ロブ・ブラッドリー氏
デジタルコマーシャル戦略兼収益部門副社長 ロブ・ブラッドリー氏
ロブ氏
「新しいコンテンツを開発していく必要もありますね。例えば、Great Big Story(https://www.greatbigstory.com/)です。これは、新しいオーディエンスを獲得するために、CNNがローンチした映画のようなストーリーテリングに特化したグローバルメディアです。オーディエンスの概念を変えるような人々・場所・物事に関するマイクロドキュメント、シリーズ、映画を製作するために100ヵ国以上を取材しています。コンテンツはすべて往来の広告とは違い、ブランドコンテンツ広告やスポンサードコンテンツです。」

オーディエンスがいるところにならどこへでも。CNNブランドを届けるためのマルチプラットフォーム戦略とは

―デジタルによる視聴者数は、皆さんの予測を超える勢いで増えている印象ですか。

スニータ氏
「CNNのDNAは、他社と比較にならないくらいのプレミアムなメディアであることです。我々のニュースにアクセスするために、現在では、約6割のオーディエンスが1台かそれ以上のモバイルデバイスを使用しています。その中で、映像は確かに一番関心が高いです。広告視点でも、マルチスクリーンの視聴態度を分析し、5年前に明確な戦略を定め、マルチプラットフォーム戦略における収益化の機会を発掘することに力を注いできました。現在もマルチプラットフォーム戦略に力を入れ続けているのは、オーディエンス・エンゲージメントとブランドソリューションを最大化し、オーディエンスがどこにいても情報を届けたいと考えているためです」
オーディエンス・データ部門副社長 ティニ・セヴァク氏
オーディエンス・データ部門副社長 ティニ・セヴァク氏
ティニ氏
「消費者やオーディエンスは、1日に10時間以上テレビからデジタルに至るまで様々なフォーマットでメディアに触れています。CNNの課題は、その10時間の間でいかにCNNにアクセスしてもらうかという点です。テレビへのアクセスは段々減ってきている傾向があり、それに比べてモバイルは高い成長を見せています。我々のコンテンツの40%は、モバイルサイトかアプリで視聴されています。ここでのチャレンジは、人々の限られた10時間のコンテンツアクセス時間をどのように伸ばし、CNNに向けるかです。データ視点で考えると、課題であるのと同時に、幅広く、深く、オーディエンスを理解することにも繋がります。」


―マルチプラットフォーム戦略では、どのような体制作りを行なっていますか。


スニータ氏
「我々の活動のすべては『オーディエンスファースト』を核としています。顧客の視点からすると、現在のCNNは単なる広告やセールスのためだけの媒体ではありません。世界中にあるチームがソリューションプロバイダーとして機能し、各クライアントと密に関わることによって、彼らのストーリーをどのように語るべきかを話し合っています。」


―データの活用について心がけている部分は何でしょうか。


ロブ氏
「まず最初に重要なのは、データを尊重することです。CNNは人々を魅了するコンテンツがどのようなものかをよく理解しています。我々は、キャンペーンの成功指標―誰が消費者で、CNNはターゲットに関して何を知っていて、ターゲットは何を考えていて、どのようにして施策のKPIを達成したかというデータをクライアントに開示して成果を実証しています。これはビジネスの中でのデータ活用方法を探る旅とも言えます。」

ティニ氏
「そこに付け加えるとしたら、世界中の5人に2人が日常的にCNNとつながっている中で、そのオーディエンスにどのようにリーチして、そのデータをどう活用するかが重要です。彼らの行動を分析し、それがクライアントから与えられたKPIを達成できているかを確認するのはもちろんのことですが、それ以外でも、自社データや第三者機関のデータなどを使用し、消費者一人一人の行動全容を把握して確実に消費者に響くコンテンツを開発し、なぜCNNに興味を持ってくれているのか、クライアントに最適なソリューションを提示できているのかを分析することがとても大切だと思います。私達は、様々なデータを提供することでも世界中のクライアントから信頼を獲得しています。信頼関係で成り立っている我々のビジネスの世界では、オーディエンスの全体像をいかに詳細に描けるかということがとても大切で、データの活用はこれを可能にしています。」

日本はアメリカに次いで重要な国

―CNNインターナショナルにとっての日本。また、日本のメディアについての印象を教えてください。
広告営業上席副社長 スニータ・ラジャン氏
広告営業上席副社長 スニータ・ラジャン氏
スニータ氏
「CNNインターナショナル・コマーシャルにとって、日本はアメリカに次いで重要で市場の大きな国です。現在はワーナーメディアグループとして、日本に100人規模のスタッフを擁しています。日本についてのストーリーは魅力的かつエキサイティングです。しかし、日本に関して知られていないことがまだ沢山あります。ここが我々の編集部門から見ると非常に興味深いです。広告営業の観点ですと、日本に関連するコンテンツは、CNNの他国のオーディエンスにも非常に人気があるので、日本のクライアントともっと仕事をしていきたいですね。」

ロブ氏
「日本企業に関する施策を始めて4年ほど経ちますが、最初の頃と今では内容に大きな変化があります。以前はテレビが最優先事項でしたが、現在の日本のクライアントはデジタル中心のKPIへシフトしています。それに合わせて、我々もデータドリブンで全包括的な施策を展開しています。日本のクライアントも自らのブランディングにこの戦略が役立つことを理解されています。」


―デジタル戦略において日本と世界との違いはありますか。


ロブ氏
「日本のオーディエンスとクライアントはモバイルの力を解っていて、モバイルを通してインパクトのある映像を届ける影響もよく理解していると思います。我々が日本のクライアントと仕事をする時は、モバイルの需要を満たすことも念頭においています。」


―今後の日本でのビジネスについての構想を教えてください。


スニータ氏
「日本のクライアントやパートナーにとって、2020年に向かうこの状況は、非常に大きな好機です。そこで我々は、クリエイティビティを磨き、オーディエンスデータにより一層詳しくなり、クライアントへのソリューション提供やツール開発において、ますます革新的な提案ができるようにしなければならないと思っています。

より賢く、クリエイティビティを持ちながらオーディエンスと関わり、クライアントのキャンペーンを洗練させるための新しいツールと方法を提供すると同時に、キャンペーンの配信方法も大幅に向上させていきます。」

2019年4月9日

BRAND TIMES
企業のストーリーをカタチに