他業界に比べてIT化の流れが遅いと言われてきた不動産業界にも現在、テクノロジー化の大きな波が訪れている。そして、この不動産テックの分野にいち早くから取り組んできた企業が、2010年創業のリアルエステートテック企業・FANTAS technology(ファンタステクノロジー)だ。AIやITを活用したサービスの提供や組織作りによりテクノロジー化を加速させた同社。企業の成長ストーリーや今後スタートする新事業について、代表取締役の國師康平氏に話を聞いた。
エンジニアを現在の3倍に増員。テクノロジー×不動産事業を加速させる
「FANTAS technology(ファンタステクノロジー)」と言う社名には不動産テックを提供する企業としてのブランド力を向上させていく意志が込められているという。
「事業を通じて『ファンになっていただける企業になる』という理念と不動産業界をテクノロジーで透明性高く、そして効率良い業界に変えていくという、我々がもうひとつ大切にしていることを表現したかった。そこで『ファン』と『テクノロジー』という大事なもの2つを足し、「ファン+テクノロジー」を社名にしたのです」
既存サービスの名称も一新。すべて「FANTAS」を冠したサービス名に変更し、ブランディングの強化も狙う。これに伴い、社内の組織もテクノロジーを加速していくようだ。「来期中までには現在のエンジニアチームを約3倍に増やし、テクノロジー強化への基盤を作っていきます」と國師氏。そうした点からも新たなスタートへの強い決意が伺える。
能力と能力の掛け合わせがイノベーションを生み出す
近畿大学を卒業後、大手不動産企業を経て、現在のファンタステクノロジーを立ち上げた國師氏。今や年商は80億円を超え、リアルエステートテック企業の中でも注目される企業の1つとなった。その中で國師氏は何を課題に感じ、どのように成長曲線を描いてきたのか。
「なかなか変化が起こりにくい不動産業界で何かイノベーションを起こしたいと思ったことが創業のきっかけでした。私が起業した頃は不動産販売の会社というと労働集約型が多く、マンパワーに頼る業種でした。そこをいかに平準化し、効率よくできるかということに力を注いできました。そして、各段階で営業手法や物件開発の改善など、いろいろなことを行いながら企業の形も変化し、創業当初から構想していたテクノロジーによる業務の効率化を実現し成長を図ってきました」
現在は東京23区をはじめとした首都圏を主要エリアとして、ワンルームマンションの価格査定から買取りを行う「WEBサービス」や不動産ポータルメディアなどを運営し、集客する、「WEBメディア事業」が経営の柱になっている。新サービスである「クラウドファンディング事業」も今後主力事業の1つになりそうだ。創業から約8年でここまで事業を拡大してきたことも注目すべき点といえよう。
「ひらめきをすぐに行動に移すというベンチャーならではのスピード感もありますが、すぐに思ったことを具現化できるメンバーが集まっていることが大きいです。例えば、メディア事業をやろうと思っても、普通の不動産営業の会社ではそれを作れる人がいないと思いますが、当社には元リクルートのマーケターや元マイナビのプロダクト責任者出身の社員がいる。新しいことをやろうと押し進めてきた結果、それに同調してくれる人が集まってきてくれたからこそ今の姿があると思っています」
そう語る國師氏。なお、同社ではイノベーションを起こすためには能力と能力を『掛け合わせること』が大切だと考えており、ごく専門的なポジションを除いて社員の多くは不動産業界以外からの転職者。そうした異能同士がアイデアを出し合える環境も新しいサービスを次々に生み出す土壌となっているに違いない。
売り手と買い手の直接売買で無駄なマージンを省く「FANTAS check」
テクノロジーで透明性を高くするためにまず仕掛けたのが2017年から運営しているワンルームマンション査定買取サービス「FANTAS check(ファンタスチェック)」である。これは所有する投資用ワンルームマンションの価格査定をオンライン上で簡単にチェックできるというサービス。自社開発のAIがビッグデータを活用して適正額を短時間で算出し、査定額が希望と見合えば同社がそのまま買い取ってくれるという仕組みだ。
「不動産市場というのは売買に仲介業者を挟むことが一般的なので、売り手側は仲介手数料を取られるし、買う側も高い価格で買うことになります。それに対してFANTAS checkは売る側と買う側が直接売買をするので、両者にとってメリットを感じられるシステムです。AIは家賃や過去の販売金額など様々なデータを数値解析して、適正額を割り出せるようになっています」
日々、時価をデータに蓄積させる為、相場の上下もリアルタイムで反映され、売り時を判断する際にも便利なツールになる。
「自分の持っている物件が今どれくらいの価値なのか、株式の値動きを見るような感覚で物件の価格をチェックできます。物件価値が一般に公表されているアメリカなどに比べると日本の不動産市場の透明性は低く、業者が変われば価格査定も大きく変わってしまうことがある。そういった点においてもFANTAS checkは透明度の高いサービスといえます」
空き家問題に一石を投じる不動産投資型クラウドファンディング「FANTAS funding」も始動
一方で同社は不動産特定共同事業法の事業認可を受けており、投資型のクラウドファンディングを通じた資金調達が可能だ。これを行う新サービス「FANTAS funding(ファンタスファンディング)」を10月からスタート。全面的に力を入れていくという。
「不動産投資は透明性のある情報が少ない為、不安な面もあるかと思うのですが、『FANTAS funding』は最短4ヶ月の運用で1口1万円から出資でき、投資初心者の方でも投資の入り口にして頂きやすいサービスです。契約手続きはすべてオンラインで完了できるので書面をやり取りする煩わしさもありません。今後は物件ごとにファンドを立ち上げ、年間100ファンド以上の組成を目指していきます」
「FANTAS funding」がさらに画期的なのは、投資用中古マンションとともに空き家の再生プロジェクトを投資対象としている点にある。同社では、以前から首都圏の空き家再生事業も行っており、今後はこれにクラウドファンディングを絡めて事業を加速させていくという。
「空き家再生については銀行が評価のものさしをもっていないため、ほとんどの場合、融資を受けることができないというのが現状です。それだけにクラウドファンディングを通じて市場から資金調達できることは、出資する側にも受ける側にもWinWinな関係になると思っています。再生する物件については立地などのデータを活用して潜在的価値の高いものに絞っており、現在も再生を手がけた物件はすぐに売れるという状況です。まずは一都三県からですが、全国各地で空き家問題が顕在化する中で社会貢献にも繋がるビジネスになると考えています」
一般的な空き家の再生にクラウドファンディングで出資を募るというのは、前例のない取り組みだ。「今まで商品化されなかったものを商品に変える。こうした取り組みもテクノロジーを活用したひとつのイノベーションです」と國師氏は語る。
テクノロジーを活用して、不動産業界の常識を再び変えていく
同社では集客や組織作りにもテクノロジーを幅広く活用。前者においては不動産投資ポータルメディア「FANTAS navi(ファンタスナビ)」を運営し、不動産投資の潜在層に向けた知識の醸成に勤めている。後者については所有物件の査定額をAIでリアルタイムに管理するほか、昨年にはWebマーティングを活用した業務の効率化を実現。徹底した効率化を行い、そこで生まれたリソースを新事業に回すという有機的な組織運営もできている。そうした中で不動産テックの世間への浸透は「まだまだこれから」と語る國師氏。今後、ファンタステクノロジーは何を目標に進んでいくのか。
「世間を見渡しても、不動産投資をやっている人の割合ってそこまで多くないですよね。その中で一人でも多くの方が不動産投資をもっと気軽にできるようになると世界観が大きく変わるような気がしています。例えば、ネット証券で株式に投資する方が増えたように、我々もテクノロジーを活用してより多くの人が不動産投資を始められる環境作りができればと考えています」
現在36歳の若手社長の語るひとつひとつの言葉は自信とパワーに満ちている。そのパワーは、今後も不動産業界に変革を起こし続けるはずだ。なお、ファンタステクノロジーでは、投資型クラウドファンディング≪FANTAS funding≫を運用している。同社のサービスに興味を持った方は、まずは小額から不動産投資を始めてみてはいかがだろう。
▼FANTAS check
https://www.hayagai.com/
▼FANTAS funding
https://www.fantas-funding.com/