2019年6月25日

8000年の歴史。世界最古のワインがつなぐ、
ジョージアと日本の新しい出合い

ジョージア国家ワイン局

PROFILE

  • David Tkemaladze ダビッド・エマラゼ氏

    David Tkemaladze ダビッド・エマラゼ氏 ジョージア国立ワイン庁 副会長として、主にPRを担当。フランス、日本と開催してきた『世界最古のワイン ジョージアワイン展』の統括責任者を務めた。

 2019年5月7日(火)まで約2か月にわたり開催され、大盛況のうちに終えた『世界最古のワイン ジョージアワイン展』。このイベントでは、ジョージアの歴史に触れながら、ジョージアワインや伝統料理に舌鼓を打ちつつ、ジョージア国立博物館所蔵の歴史的な美術品も鑑賞できるなど、まさにジョージアへ旅した気分を味わえるイベントとなった。
 ジョージアは、黒海とカスピ海に挟まれた南コーカサス地域にある共和制国家。2015年4月まで使用されていた外名のグルジアと聞けば、ピンと来る人も多いのではないだろうか。主要産業は農業、畜産業、紅茶・ワインを中心とする食品加工業、マンガンなどの鉱業だ。なかでもワインはその特殊な手法と伝統が評価され、2013年にユネスコの無形文化遺産に登録された。
 そんなジョージアワインの魅力を、ジョージア国立ワイン庁 副会長 ダビド・エマラゼ氏に伺った。

独自の醸造技術と豊かな自然が育んだ、“ジョージア人の誇り”

まずは、ジョージアワインの歴史からひも解いていきたい。“ジョージア人のアイデンティティ”とも言わしめる、この『世界最古のワイン』は、いったいどんな道をたどってきたのか。エマラゼ氏は、以下のように語る。
「ジョージアワインの歴史は、いまから8000年前にさかのぼります。これは、ただの伝説ではなく、あらゆる科学的調査によって証明されています。ジョージアワインは、クヴェヴリと呼ばれる土に埋められた甕(カメ)を使って醸造したのが起源ですが、そこから世界に行き渡るようになった今日までの歴史を、三つの時代に分けてお話ししましょう。
まず、18~19世紀は伝統製法のクヴェヴリと、それだけでなくシャトーでも醸造されるようになった時代です。当時の富裕層がスペインやフランスからワインの醸造に関する情報を持ち帰ったことが始まりと言われています。同時期には、瓶ボトルも登場し、それまでの木樽とともに保存容器として使われるようになりました。こういった技術の発展により、原料となるブドウの栽培量も増え、これにともないワインの醸造量も増えていきました。
次に、ジョージアが1921年から1991年まで、旧ソ連の統治下に置かれていた時代です。この時代は旧ソ連の政策により、農工業においては質よりも量を重んじられ、ワインも例外ではありませんでした。他国との交流も失われ、ワイン文化は発展を阻まれます。ジョージアにとっても、非常に厳しい時代でした。
その後、ソ連が崩壊し、ジョージアも独立宣言を果たします。以降の時代は、色々な国との国交が再開され、ジョージアのワイン文化も世界の水準に届くようになり、現在まで改良が続いています。いまではワイン生産国の中でも重要な位置を占めるまでになりました」

厳しい時代に耐え、再び興隆期を迎えたジョージアワインだが、ワイン愛好家の熱い視線を集めるのには、二つの理由があるという。一つは、先述したクヴェヴリという独自の醸造技術だ。
イベントに展示されたクヴェヴリの甕
イベントに展示されたクヴェヴリの甕
「ジョージアワインには、各国でも行われているポピュラーな醸造製法と、8000年前から続くクヴェヴリとに、大きく分けられます。このクヴェヴリによってつくられたワインが、2013年にユネスコの無形遺産に指定されたことで、世界中の注目を集めることになりました。クヴェヴリでつくられるワインは、発酵の仕方が独特です。そのぶん味わいや香りも従来製法のワインとは異なる豊かさがあります。私たちは、クヴェヴリがジョージアにあることに、大きな誇りを持っています」

そう胸を張るエマラゼ氏だが、「クヴェヴリがおいしいことに間違いはないが、従来製法のワインもまたおいしい」と付け加えることを忘れない。
そして、もう一つの理由をエマラゼ氏は、「豊かな自然環境」と話す。

「ジョージアの気候は、比較的温暖です。黒海沿岸部は特に温かく、年中過ごしやすいのですが、ロシアとの国境にあたる北側には山脈が走っており、小さな国ながら、地方ごとに多様な自然が姿を見せています。ですから、日照時間や土壌の成分構成もさまざまで、これらがブドウの味や糖度に影響を及ぼしています。ジョージアには525種ものブドウの固有品種がありますが、それら一つひとつにも持ち味があります。そういった豊かな自然環境とブドウ品種の掛け合わせが、ジョージアワインの奥深さを生み出しているのではないでしょうか」

なお、ジョージアの持つブドウの固有品種数は世界一だという。そんな豊富なジョージアワインの中から一本を選ぶのは、至難の業とも言えそうだが、エマラゼ氏は、最初に手に取るのなら、とサペラヴィ種の赤ワインを勧める。

「サペラヴィはブドウの原種ともいわれており、ジョージアが最も大事にしている品種の一つです。地方によって味や香りの違いはありますが、間違いなくジョージアワインの代表格と言えるでしょう。サペラヴィを基点にしながら、お好みのジョージアワインをぜひ探してみてください」

『世界最古のワイン ジョージアワイン展』2番目の開催国に日本が選ばれた理由とは

さて、そんなジョージアワインの魅力が詰まったイベント『世界最古のワイン ジョージアワイン展』(東京・天王洲アイル)が先月、成功裡のうちに幕を閉じた。日本は、フランス・ボルドー市に次ぐ二番目の開催地だ。他国に先んじて、この2国で開催されたことには大きな意味があると、エマラゼ氏は話す。
「ご存じのとおりボルドー市は世界有数のワインの産地として知られ、2016年には世界各国のワインの魅力やワインにまつわる歴史を伝えるワイン博物館もオープンしています。そんなワインとゆかりの深い地で、世界最古のワインを披露するのがふさわしい、という考えから、まずはフランスでの開催が決まりました。

次に日本を選んだのには、いくつかの理由があります。
一つは我々が日本を重要なワインの輸出国に位置づけていることです。輸出には量が大事ですが、日本においてはそれ以上に、日本人がジョージアワインをどのように見極めているのか、その質を知ることが大事と捉えています。
二つ目は、日本人が伝統を重んじる国だからです。ジョージアにも古い伝統がありますが、両国ともにその伝統を守りながら、絶えず進化を続けています。地理的には離れていますが、伝統文化を守る精神に共通点を感じていることも決め手となりました。
そして、三つ目には、日本人のジョージアへの関心の高まりが挙げられます。ジョージアを訪れる日本人は5年前と比べて増えており、ワインの輸出量も年々増加しています。さらには、ジョージア文化に触れたいという知的好奇心も感じています。2018年10月には岩波ホールで「ジョージア映画祭」が2週間にわたって開催され、また同時期には、ジョージア国立民族合唱舞踊団「ルスタビ」による公演も日本各地で行われ、いずれも盛況でした。同年、ジョージア出身の大相撲力士 栃ノ心関が初優勝を飾っています。これらの影響から日本のメディアでジョージアが紹介される機会も多く、そういった動向に私たちジョージア人もまた関心を持っています。こういった複次的な理由から日本での開催が決まりました」

日本人の価値観、歴史観、そして相互に関心を寄せあう両国の関係性が、『世界最古のワイン ジョージアワイン展』という“接点”をもたらせたということだ。しかし、洗練されたワイン文化を持ち、消費量も世界一と、名実ともにワイン大国であるフランスと、ワイン文化の開花は近代化とともに始まった歴史の浅い日本とでは、消費者の興味関心は大きく異なるはずだ。日本での開催にあたり、こだわったのはどういうところなのだろう。
「おっしゃるとおり、フランス人はジョージアという国のみならず、ジョージアワインに関する情報をすでに持っていますが、日本人にとってのジョージアは、名前を聞いたことはあるものの、そこからのイメージは十分広がっていない印象がありましたので、来場者にジョージアの歴史や文化も一緒にご理解いただくことを念頭に、参加型プログラムを数多く用意しました。今回、ソニーミュージックコミュニケーション社にパートナーとして協力いただいたことから、ソニーの持つ5G映像の技術『Warp Square』を用い、会場内にジョージアの様子を映像で再現し、臨場感ある空間演出を行うなど、工夫を凝らしました」

集客にあたっても日本の消費マーケットにいかに浸透していくかに軸足を置き、ワインインポーターをはじめとする専門家、商社やワインの輸入会社を対象とした特別なオリエンテーションを数回にわたって実施。メディア誘致にも力を入れたという。
イベントに参加した著名人たち
イベントに参加した著名人たち
「マスター・オブ・ワインの称号をお持ちの大橋健一さんにも、テイスティングセミナーを開催していただきました。大橋さんは、ジョージアに足繁く通われ、国内のワイナリーや専門家とも強固なネットワークをお持ちです。大橋さんのような立場の方から、ジョージアワインの魅力を語っていただけたことは、日本の方にジョージアワインを深く知っていただける、またとない好機になりました」

なお、会期中は千代田区内の会場で、ワインセミナーも開催。ゲストに栃ノ心関を招き、ジョージアワインについて語ってもらう機会も設けたそうだ。

「ジョージアの宴会には、『タマダ』と呼ばれる幹事役の男性がいるのですが、栃ノ心関にはそのタマダ役を務めていただきました。スプラという伝統的な乾杯をするときは、特に盛り上がりました。
栃ノ心関は、現在、日本で最も有名なジョージア人ではないでしょうか。これからもジョージアと日本の架け橋的な存在として期待しています」

さまざまな角度からジョージアとジョージアワインの魅力を発信することで、多くの来場者の関心を引き出せた、と手応えを話すエマラゼ氏。来場者からは実際、どんな声が聞こえてきたのだろう。

「新しいワインの味に出合えた、との声をたくさん聞くことができました。一緒にジョージアの伝統料理も振る舞いましたが、初めて食べたという方も多く、ジョージアの食文化を紹介する良いきっかけにもなりました。またジョージアが長い歴史を持つ国という発見から、日本との共通点を感じていただいたようにも思います。これら未知との遭遇の連続が、来場者の大きな満足度を生み出したのでしょうし、この結果に私たちも大変満足しています。
『世界最古のワイン ジョージアワイン展』は、今後他国でも開催する予定ですが、先々の国でも日本人と同じ感想を持っていただけると、とても幸せです。
そして、このたびの開催にあたり、在ジョージア日本国大使館 上原忠春大使には、大変お世話になりました。ここに改めて感謝の気持ちを表します」

ジョージアワインをきっかけに、日本とジョージアのさらなる友好を温めたい

『世界最古のワイン ジョージアワイン展』で感じられた熱気と反響をもとに、エマラゼ氏は改めて、日本市場に分け入っていく意気込みを以下のように話す。
「『世界最古のワイン ジョージアワイン展』をきっかけに、ジョージアワインが世界最古のワインであることを知り、そこからジョージアやジョージアワインに興味をお持ちいただいた方も多いと思います。私たちもこれを機会に、日本人が最も大事にされている質に応えられる、良質なワインの提供をとおし、日本の市場で、ジョージアワイン=質の良いワイン、として知られ、普及する商品を目指していきます」

そして、エマラゼ氏は、ワインだけに留まらない、日本とジョージアの関係の強固をこれからも望んでいただきたいと、言葉に力を込めた。
「ジョージアは、国土の小さな国ですから、色々な国と交流を持ち、その関係性を深めていくことを、政府、国民ともに望んでいます。そのためにはまずお互いの文化に接することが大事と考えるうえで、今回の『世界最古のワイン ジョージアワイン展』では、ジョージア人と日本人との友好的関係が深まり、ジョージアの文化への関心を誘う機会にもつながりました。人間同士の関係が深まれば、国同士の関係も深まります。そして、その先の経済的な交流へもつながることでしょう。
『世界最古のワイン ジョージアワイン展』が、両国の永続的な良い関係を築くきっかけになれば、これ以上の嬉しいことはありません」

最後に、ジョージアワインのとっておきの楽しみ方を聞くと、エマラゼ氏は、「ジョージアのワイナリーやブドウ畑を眺めながら飲むのが一番。ぜひジョージアを訪れてください」とよどみなく答えてくれた。

今年9月には、ラグビーワールドカップが日本で開催される。現在、世界ランキング12位のジョージアでは、選手のさらなる活躍に国民の期待がいっそう高まっているという。開催に合わせ、ジョージアワインの代名詞、サペラヴィワインも日本に多く輸出するそうだ。あなたも観戦のお供にジョージアワインを手に取ってみてはいかがだろう。ジョージアという名の、新しい好奇心と遭遇する機会にもきっとなるはずだ。
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