2019年11月28日

“Pocky K.O.”でeスポーツへ参戦
グローバル市場に挑むPockyの戦略とは

江崎グリコ

PROFILE

  • 江崎グリコ アシスタントグローバルブランドマネージャー  玉井博久

    江崎グリコ アシスタントグローバルブランドマネージャー  玉井博久 リクルート、TUGBOATを経て江崎グリコ入社。
    広告部で国内ブランドの広告担当を経て、2016年よりグローバルブランドPockyの全世界における広告を統括する。Pocky day、GLICODE、Pocky UTなど手がける。2017年よりシンガポールに駐在してASEANのECビジネス立ち上げも兼務。

日本が誇る老舗お菓子メーカーである江崎グリコ株式会社が、eスポーツに参画する。看板商品「Pocky」と、全世界で多くのプレイヤーに愛されている日本発の格闘ゲーム『ストリートファイターⅤ』とのコラボレーションが実現され、12月13日からアメリカで開催されるeスポーツの世界大会「Capcom Cup」と連動し、「Pocky K.O. Challenge」というスペシャルマッチが行われる。「Pocky K.O.」とは、プレイヤーが操作するキャラクターの体力ゲージの、消費済み体力と残り体力の比率が、ポッキーのチョコレート部分とビスケット部分の比率と同じ状態で、相手を倒したときに「Pocky K.O」と表示されることを指す。
今回のように、企業商品がゲームコンテンツそのものに入り込み、UI(User Interface)を変えるコラボレーションは極めて珍しく先進的な取り組みといえる。日本でも近年注目を集め始めたeスポーツへの参入、今回の企画や今後の展望について、江崎グリコ アシスタントグローバルブランドマネージャーの玉井博久氏に伺った。

先進性のあるコラボレーション 「Pocky×eスポーツ」企画の独自性とは

――江崎グリコの看板商品「Pocky」とeスポーツのコラボレーションと聞いて、どのようなものか不思議に思った方は多いのではないか。なぜお菓子のPockyが、eスポーツを選択したのだろうか。
玉井氏
「eスポーツは競技を通じてプレイヤーたちが楽しい時間を過ごすものです。Pockyの掲げるブランドメッセージ”Share happiness!”(幸せを分かち合う)に非常にマッチすると考えました。さらに、eスポーツは室内で行うため、通常のスポーツ以上にお菓子との相性が良いと考えたこともきっかけのひとつです。加えて、eスポーツは競技者だけでなく、観戦者の数も世界中に数多く存在します。Pockyは、江崎グリコのグローバルブランドとして世界での販売を拡大しておりますが、まだまだ認知は低く、世界的にブランド拡大を加速することが命題です。そうした中、急成長しているeスポーツは、現在だけでなく長期的な視野において、重要な顧客接点の1つになり得ると考えました。」

――eスポーツの急成長と、そこにグローバル戦略の可能性を感じたPockyは、eスポーツプレイヤーがプロアマ問わず、「やってみたい・実現してみたい」と思ってもらえるような体験が多くの人に広がっていくことを目指すべく、まずは格闘技ゲームに照準を絞ったという。

玉井氏
「eスポーツにはいくつかのジャンルがありますが、中でも格闘技ゲームは競技時間が短いため、競技者・視聴者共に飽きてしまうこともなく、一瞬一瞬を楽しめるものなのでピッタリと思いました。

そうした案を検討していた時に、eスポーツの画面によく出てくる体力ゲージがPockyのように見えないかというアイデアが出てきて、体力ゲージがPockyのように見える状態で勝つという体験を提供すれば、プロにもアマにもeスポーツプレイヤーに楽しんでもらえるのではないかと思ったのです。

その最高のパートナーとして、格闘ゲームで有数のユーザー数を持つカプコン様のストリートファイターが最適だと思いました。体力ゲージといえばすぐにストリートファイターがイメージできましたし、ストリートファイターが現在Pockyと同じく日本から世界に拡大しているということを知り、ぜひコラボレーションしたいと考えたのです。」

――今回スペシャルマッチを実施する「Capcom Cup」の様子は、会場となるアメリカだけでなく、「Twitch」という世界最大級のゲーム配信プラットフォームによる配信をするため、グローバルのマーケティング戦略としては極めて理想的だ。

玉井氏
「コラボレーションに対してどのような好意的な反応があるのか、そして期間中の、特にイベントが実施されるアメリカでのセールスにどれだけプラスの影響が与えられるかを確認したい。定量的、定性的にブランド拡大に貢献できると判断できれば、ほかのマーケットでの展開も含めて注力していきたいです。」

――多くの企業がこうしたコラボレーションをする際、ロゴを掲載する・商品サンプリング・出店販売をするのみに留まる中で、今回のように企業商品がゲームシステムに入り込み、UI(User Interface)を変えてしまうコラボレーションは数少なく先進性はあるといえる。

玉井氏
「世界という市場に出ていくと、予算を潤沢に持つ大きなブランド企業が数多く存在します。そのため、単純なスポンサー契約だけではどうしても負けてしまうと考えました。いかに他社がやらないことをどうやるか、巨大な予算のあるグローバルの競合企業がやらない方法で、Pockyのポジションを獲得するためにはどう工夫するかをこだわりました。」

eスポーツをきっかけに海外市場へ参入するPockyのグローバル戦略

――Pockyは現在、日本と海外の生産工場で製造した商品を世界29か国で販売している。しかし、まだまだ国外のブランド認知率は低い国もあるという。江崎グリコは、日本と同等以上の存在にすることを考えている。

玉井氏
「「Capcom Cup」の今回の決勝はアメリカではありますが、『Capcom Cup』がYoutubeとTwitchによる全世界への配信が決定していることは魅力的でした。」

――Capcom Cupの日に発売開始をするコラボレーション商品はネット環境があれば世界中から買うことができる。店頭に並ぶのはアメリカのみで、流通先はストリートファイターのコンテンツと親和性の高い、お菓子とゲームが一緒に売っているような専門店を選んだという。

玉井氏
「『Capcom Cup』での『Pocky K.O. Challenge』をきっかけに認知を図るだけでなく、海外市場でのPockyを購入いただく理由を作るのが狙いです。「eスポーツと言えばPocky」「ゲームする時にはPockyを買っていこう」と連想してもらい、例えばアメリカならホームパーティー、他の国でも友達を家に招いてゲームを一緒にする楽しい時間に、いつもある身近な存在になってもらいたいと考えています。」
――グローバル戦略としてはこれまでに3つの取り組みを実施しており、効果が出つつあるという。

玉井氏
「2018年5月から販売している「Pocky」×「ユニクロUT」のコラボTシャツです。世界18の国で販売していますが、売れ行きが良く、私自身も海外の街中でも良く見かけます。これは認知のドライバーになっていると実感しています。

次に、GLICODE®(グリコード)という無料アプリのプログラミング教材の提供です。Pockyとアプリを使えば、小学校低学年からでも簡単にプログラミングの考え方を一通り身につけることができるもので、3年前から日本だけでなく海外でも展開をしています。海外でも多くの企業様に興味を持って頂いたり、シンガポール政府やタイの教育機関からも連携したいとお声掛けを頂いたりしています。お子様が友だちや親御さんとPockyを使ってプログラミング学習を楽しむ中でイメージ向上につながっているのではないかと考えています。

最後に、11月11日の「Pocky day」を世界に広げる動きです。現在8か国で展開しており、年々参加してくれる方が増えてきて、セールスにも貢献しています。取り組みとしては11月11日のPocky dayを楽しんでいただくデジタルコンテンツを提供し、並行してイベントも実施しています。今年も海外のSNSでの反応も多く見られました。「1」という数字が、Pockyに見える、というのは世界共通で違和感なく受け入れてもらえていると思います。」

――これまでのこうした取り組みに加え、さらにeスポーツを通じた活動を全世界に知ってもらい、グローバル市場で定着していくというのが今回の狙いだ。最後に、玉井博久氏は次のように語る。

玉井氏
「eスポーツの急激な拡大を確信しています。これまで日本国内の様々なシーンを魅力的に彩ってきたPockyが、今度はeスポーツをフックに世界中のお客様の幸せの総量を増やしていきたいと思います。」
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