GMOあおぞらネット銀行 2トップが語るネット銀行の未来形

GMOあおぞらネット銀行

2018年7月17日、「GMOあおぞらネット銀行」が誕生した。金融(ファイナンス)と技術(テクノロジー)を掛け合わせた造語「フィンテック」、仮想通貨・ブロックチェーンなどの言葉が飛び交い、一方で地方銀行では再編が進むなど大きな変革期を迎えている銀行業界。改革は必須――次世代型インターネット銀行で何を目指すのか、金子岳人会長と山形昌樹社長に話を聞いた。

ITの爆発力で銀行を進化

――日本初のインターネット専業銀行「ジャパンネット銀行」が誕生してから18年が経ち、今やメガバンクや地方銀行だけでなく、ソニー銀行、セブン銀行など大手資本を背景にしたネット専業銀行が林立し競争は激化しています。このタイミングでの参入に勝機はあるのでしょうか。


金子会長:まさにジャストタイミングだと思っています。EC市場が継続的に拡大しており、さらにこれから先もまだ拡大が続くと予想されている中で、このタイミングで入りこまないと、手遅れになると考えています。一方で、次の世界であるキャッシュレスの入口が見え始めています。


その世界に参入するタイミングとしては、今が抜群のタイミング。加えて、フィンテックの波が押し寄せており、新しい世界で、新しいビジネスモデルのネット銀行を立ち上げることができると考えて参入を決めた次第です。


あおぞら銀行グループ、GMOインターネットグループの強みを生かし、両グループの商圏をターゲティングし、銀行を素早く立ち上げられることが我々の大きなメリットです。預金を集めて法人にお貸しするというアセット型の銀行ビジネスモデルが銀行のトラディショナルモデルなのですが、人口減少、高齢化、もしくはキャッシュレスの世界に入ったとき、それが足かせになるのは間違いないわけです。


我々はゼロからスタートするので、従来型のアセットやビジネスルールを持っていない。自由にフットワーク良く飛び回ることができるという観点では、我々の軽さ、スタートアップの強さというものが十分活かせるのではないかと考えています。
代表取締役会長 金子岳人氏
代表取締役会長 金子岳人氏
――フィンテックの波が押し寄せている現状をどのように分析していますか。


金子会長:金融以外の業態は2000年以降、ITによってビジネスモデル変革が行われてきました。ようやく金融機関もその変革の波が訪れたと思っています。フィンテックとは「金融(ファイナンス)」と「テクノロジー」をかけた言葉ですが、金融機関に訪れたこの波はもはや後戻りせず、すべてを新しい世界へ押し流して行く、と認識しています。

IT力と高い信頼性を強みに新商品を生み出す

――あおぞら銀行の金融商品ノウハウ、GMOインターネットグループのIT力、お互いの強みを生かした新銀行になる。


金子会長:GMOインターネットグループサイドから見ると、インターネット業界で継続的成長を続けてきて、高いマーケットシェアを獲得し、社員数も5000人を超える非常に大規模のインターネットサービス会社に成長しました。


そしてグループ内に銀行機能を持つということが、GMOインターネットグループのさらなる成長のキーポイントになると考えて、銀行構築の機会を模索していました。しかし銀行は金融庁認可制度の中で成立する業態なので、やはりどこかの銀行と組むのがベストであると判断し、事業提携のパートナーを模索していました。


有名な話ですが、GMOインターネットはかつて金融事業に参入した際、ローン・クレジット事業がうまくいかずに撤退を余儀なくされ、結果的に約400億円の損失を出してしまいました。取引先銀行やリース会社が引いていく中、あおぞら銀行が支えてくれた経緯がありました。これも両社の経営層同士が信頼に基づいた懇意な間柄にあったからです。今回GMOインターネットが銀行事業にチャレンジしようとした際、あおぞら銀行も是非一緒にやりましょうとなったのが、事業提携の経緯です。


GMOインターネットは20年以上、インターネットの黎明期からインターネットサービサーの先駆者として走り続けてきました。インターネットのビジネスを支えるインターネットインフラは、国内No.1のシェアを誇り、今後の発展が見込めるセンサービジネスに欠かせないIoTソリューションも持っています。世界展開している認証に関する非常に優れた技術も保有しています。


GMOクリック証券ではビッグデータの解析技術やAIなども実用化しています。WEBマーケティングに強いインターネットソリューションも保有しています。我々の取り組みはそれらを金融ビジネスに転換していくという発想です。


この中で蓄積してきた、あるいは今後も生み出していくであろう、インターネット上のノウハウ・ソリューション・テクノロジーをネット銀行のサービスに組み込んでいければ、他のネット銀行や既存銀行とは違うビジネスモデルや強みを発揮できると考えています。


さらにGMOインターネットグループは、個人・法人約1,000万のお客さまとインターネット上での取引があります。これは当社の銀行サービスを付加できる非常に大きなポテンシャルであると考えています。
代表取締役社長 山形昌樹氏
代表取締役社長 山形昌樹氏
――あおぞら銀行から見ると、自社のどのような強みを生かせると考えているのでしょうか。


山形社長:銀行が規制業種であるという点は変わりませんが、インターネットによってもたらされたパラダイムシフトによって、お客さまに主権が移っているということが重要だと思います。第一期のネットバンクのようにチャネルを変えるということにとどまらず、基本的にはサービスのありようを変えるパワーがあると考えています。


そこを考えながら、今、100点を取れるプランがあるわけではありませんが、走りながら考えていきたい。あおぞら銀行は、金融機関としての経営管理能力、リスク管理、金融商品に関する知見、といったノウハウがあり、ユニークなお客さま層もあります。


このお客さま層の中に、ネットバンクのお取引をしていただける、あるいはパートナーになっていただける層もいらっしゃると思うので、そこをうまく活用しながらシナジーも確保していければ良いと思っています。
――銀行の中でもお客さまに特徴があるあおぞら銀行の特徴も活かせる。


山形社長:そう思います。あおぞら銀行は、限られたセグメントに対して限られたビジネスしかやっていませんので、ネットバンクとのカニバリがなく、非常に補完関係が高いです。そういう意味ではお互いフルスイングでやっていける点が、ユニークなところかもしれません。


たとえば、あおぞら銀行の個人のお客さまは主にリタイア世代を対象に投資、貯蓄というメニューをメインに展開しています。一方、今回のネットバンクは、30代、40代の現役世代のお客さまを中心にしています。


GMOクリック証券との連携による外貨預金等の貯蓄型メニューや、あおぞら銀行は取り扱っていない、カードローン等の個人向けローンの取り組みを考えています。
――GMOインターネットグループではこれまでも金融サービスを展開していますが、今回の参入はこれまでとどのような点が異なるのでしょうか。


金子会長:GMOクリック証券は証券業務、GMOペイメントゲートウェイは決済代行などすでに金融サービスを展開していますが、そこに銀行機能を付加することによってさらに金融の幅が広がります。


最終決済手段である預金機能、および山形が申しあげたローンなど融資業務など金融サービスをフルラインナップでサポートすることができます。今までグループ内の銀行機能がなかったことでビジネスチャンスが外部流出していたものを、内部留保してビジネス化できるのは大きなメリットになります。


加えて、証券を除くグループビジネスはこれまでBtoB中心でしたが預金機能を加えることで、BtoC、BtoBtoCへとビジネス拡大することができるので、GMOインターネットグループとして金融ビジネスが大きく拡大する見込みです。さらに、銀証連携によって、証券のお客さまを銀行に誘導したり、銀行のお客さまを証券側につなげたり、社会的要請でもある貯蓄から投資という流れの後押しにもなると考えています。


インターネット銀行事業開始がGMOインターネットグループの金融ビジネス拡大を実現するものと考えています。またGMOインターネットから見ると、グループ内に銀行を持つことによってグループ自身の信用力がアップし、グループ内各社のビジネス展開においてプラス効果が見込まれるという定性的効果があると思います。

目指すは新しいプラットフォーム

――業界は今後どのようになっていくとお考えでしょうか。


金子会長:10年程前、ネット銀行が相次いで設立されて、従来の銀行モデルに変革をもたらすような波を起こしました。その際は、銀行の既成概念である店舗そのものをなくして、ネット上でビジネスをやっていこうというチャネル変革を起こしたわけです。大幅なコストダウンにより、ユーザーは利便性を享受して満足度は飛躍的に高まりました。


今回の波は、銀行が持っている従来の機能やサービスそのものを、プロセス変革していこうという流れだと思っています。銀行サービスであった決済や融資など、そのもののプロダクトアウト型サービスではなく、如何にお客さまの商取引プロセスの中に組み込んでいくか、あるいはお客さまのライフタイムの中で、いかにサービスとして組み入れていくかというところが勝負になると思っています。


キャッシュレス時代の新しい決済手段、もしくは新たな通貨がでてくる中で、実現されていくと考えています。それを後押しするのがAI、ブロックチェーンなどの新ITで、今までできなかったサービスを組み立てることができるようになりました。


新たなITソリューションを駆使して、従来の銀行サービスをプロセス変革していくというのが今回の我々の取組みだと思っています。実際、先発ネット銀行も、従来銀行もこの世界にシフトしようとしており、そういう意味でこれからが本当の勝負になると思います。
――サービス展開の中でも、プラットフォーム銀行構想というのが野心的試みとしてあるようですが、どういう戦略で進められるのでしょうか。


山形社長:我々が目指している銀行はベンチャーのサービス業であって、自分の商品を「買ってください!」というよりは一歩引いて、主役である法人を含むお客さまに寄り添うサービス提供者でありたい、「知らない間に使っている銀行」でいい、と考えています。


プラットフォームというのは、誰もがそれを必要としていて、その上で生活やビジネスが成り立っているけれど、普段は空気のような存在であまり気がつかない・・・といった感覚になります。もちろん、夢ばかり言っていてもしょうがないので、今いくつかの企業さんと部分的な銀行機能のアンバンドリングをして、「この部分はホワイトラベルで供給しましょう」というような話を進めているところです。


山形社長:GMOインターネットグループではコーポレートキャッチフレーズで、「すべての人にインターネット」と言っていますが、そういうプラットフォームに近い。一方で、あおぞら銀行のキャッチフレーズは、「頼れるもうひとつのパートナーバンク」。メインバンクであるといったことや序列にこだわらない中立性が特徴の銀行です。「なにかあればかけつけますよ」というオープン、開放型の両株主が持っている遺伝子と、我々が持っているビジネスモデルをシンクロさせたいですね。


金子会長:最新テクノロジーを駆使するのは前提なのですが、GMOインターネットグループの内製システム開発であるということがもうひとつの特徴になっています。グループ内の証券、仮想通貨交換、決済代行などと一貫したシステム連携が可能となり、さらにシステム開発の共有化により非常にローコストでシステム開発・運用できることで競争力が高まり、内製開発の特徴である細かいユーザーニーズに素早く対応できるという点が大きな強みだと考えています。グループの最新テクノロジーを活用し、グループ内製開発体制により、同じ決済サービスでも競合他社と違う、安くて柔軟でスピーディなサービスを行うことができると思います。
――今後の経営計画をどのように描いているか教えていただけますか。


山形社長:最後発の参入で、7月17日に事業を開始したばかりですが、事業性をまず確保しなければなりません。お客さまにとってもサスティナブルなビジネスをしていけるように、お客さま層を構築して一定の体力、収支をちゃんと確保していくことが必要です。


先発のネットバンクは数多く、規模も全体的な収益も及ばないのですが、まずは自分たち自身で立っていけるように、黒字化したい。さらなる成長を続けられるような経営基盤をできる限り早く作りたいと考えています。


まずは5年以内に100万口座、トップライン100億円を目指す。先発行は何百万口座などすごい数字ですので、そこまで行くにはまだまだ時間がかかるとは思うのですが、5年以内に、今申し上げた基盤は確実に作れるように努力したいと考えています。

2018年7月27日

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