「気持ちよく供養でき、自分を見つめなおせる」場所に。業界初のブックタイプ納骨堂『ひかりの園』が目指す新しい供養のカタチ
「人生100年時代」と言われる現代。定年後に過ごす時間が増え、これまで以上に自分の人生について見つめ直す人は多い。特に、「終活」という言葉がブームとなったように、自分のお墓について考える人が増えてきている。時代の流れとともに、一人用、夫婦用、後継者の要らないお墓など、お墓にも多様性が求められるようになり、供養への考え方も変化してきた。そんな中、これまでも機械式の納骨堂を運営するなど、時代のニーズに合わせたお墓を手掛けてきた『臥龍山 安養院』が、これまでにない全く新しい納骨堂『ひかりの園』を2019年3月30日にオープンする。
「終活」の必然性と近年の納骨堂のニーズとは
『臥龍山 安養院』は、平安時代に天台宗第三世、慈覚大師によって開山した由緒ある寺院で、東急目黒線「不動前」駅から徒歩5分の好立地に位置する。今回オープンする『ひかりの園』は、この『臥龍山 安養院』に併設。業界初となる書架式(ブックタイプ)の納骨堂で、一人一墓、個別に収蔵される供養スタイルだ。魂手筺(たまてばこ)と呼ばれる納骨箱を使用し、本のように収蔵される。なぜこのようなカタチの納骨堂をオープンするに至ったのか。
今回オープンに先駆け開催された『ひかりの園』お披露目会に登壇した「葬送・終活ソーシャルワーカー」の吉川美津子氏によると、近年の傾向として「『お墓の消費者全国実態調査(2017年)』では、霊園墓地選びで最も重視したものの上位3つが『お墓参りにアクセスの良いエリア』『(一般墓や樹木葬など)お墓のタイプ』、そして『金額』だった」と話す。
お墓を守る人がいなかったり、遠くて通えないなどの理由で、近年では住宅同様都心などアクセスの良いところへのニーズが高まっているようだ。しかし家から近い都内にある一般墓では価格が高くなってしまう。そのため、納骨堂や樹木葬を検討する人が増え「管理がしやすい場所や継ぐ人がいなくてもよいお墓」を求める傾向にあると吉川氏はみている。
そこで、お墓や供養に対するニーズがどのように変化しているのか、『ひかりの園』が目指す供養のあり方などについて臥龍山 安養院 住職 浦田快暢(うらたかいちょう)氏に話を聞いた。
——最近メディアなどでも「終活」という言葉を耳にすることが増えました。
住職 浦田氏「人生100年時代ともいいますが、今日本で最高齢は116歳の女性だそうです。そうなると、定年後に収入は途絶えるにも関わらず、残りの50年をどのように生きようかと考える必要があります。結婚をしない人や、子どもの負担になりたくないと考える人もおられる中、メディアでも度々「終活」について取り上げられることで、真剣に自分の老後について考える人が増えてきています。社会的な必然性として考えざるを得なくなった状況にありますね」
—「管理がしやすい場所や継ぐ人がいなくてもよいお墓のニーズが高まる」と吉川氏のお話にもありましたが、機械式の納骨堂『ひかり陵苑』を購入された方にもそういったニーズがありましたか?
住職 浦田氏「ひかり陵苑を購入される方は、地方にあったお墓を墓じまいして東京に改葬する人が増えてきています。また、子どもに面倒をかけたくないという方が亡くなる前に自分で購入することもあります」
まるで本。魂手筺タイプの納骨堂『ひかりの園』に込められた思い
—『ひかりの園』開園への思いについて教えて頂けますか?
住職 浦田氏「これだけ時代が変化していく中で、いろいろなニーズに対応できるもの、「近い」ということプラスアルファの付加価値のあるものをご提供したいと思い、『ひかりの園』をオープンしました。
たとえば、納骨堂には機械式のものも増えてきていますが、機械式は嫌だという方もいます。『ひかりの園』では、スタッフが魂手筺(ブック)タイプの納骨箱を取り出し、前のスペースなどに座り図書館で本を読むようにゆっくり対面することができます。機械式にはない、人の温かさも感じることができる。ご家族分を並べて納めることはもちろん、一緒のお墓に入ることができない、たとえばLGBTの方や事実婚の方などであっても、「墓」という形に捉われることなくずっと一緒にいることができます」
—魂手筺(ブック)タイプはかなり斬新ですが、そもそもなぜブック型なのでしょうか?
住職 浦田氏「私自身、本が大好きだということもありますが、元々骨壺に入れることがあまり好きではなかったのです。重いし、味気ないし、落としたら割れてしまいます。機械式の納骨堂では地震があると割れてしまう危険もあると思っていました。
さらに、昔は副葬品といって偉い人は自分が好きだったものを入れる習慣があったため、たとえ偉い人でなくとも好きだったものや手紙を入れたりなどの自由度があったほうがいいなということも常々思っておりました。そのためには箱型であり、かつ記録や記憶を刻むことのできる両方の機能を持ち合わせたものとしてブック型が良かったのです。また、『魂手筺(たまてばこ)』と名付けたのは浦島太郎の玉手箱のように、時間と夢が封じ込められたという意味を込めています。
サイズにもこだわっていて、亡くなった大切な人を胸に抱いてほしいということで、女性でも手に持ちやすいこの大きさになりました」
魂手筺(ブック)タイプの納骨箱には背表紙部分に木製のお釈迦様がいる。それだけでなく、背表紙に付けるプレートには名前でもメッセージでも好きな文字を刻むことができ、さらに本体の模様も7種類あり、金具や魂袋(みたまぶくろ)の飾り紐の色など好きなものが選べる。その組み合わせはなんと25,000通りにもなるという。
住職 浦田氏「楽しみながら自分に一番あったものを選択することが、御先祖様と向き合うことでもあると思っています。自分で選んだものだからと愛着がわいて大切にすることで、気持ちが通いあっていくのです。もちろんそれだけではなく、『ひかりの園』では供養の年数や置く場所なども選ぶことができるようにしています」
「リフレッシュできる場所にしたい」。先祖を感じ、癒される空間に
—最後に、『ひかりの園』が目指す供養のカタチ、そして今後の取り組みについて教えて頂けますか。
住職 浦田氏「『ひかりの園』の『ひかり』は魂の輝きを表現し、その『ひかり』が集い、心が通じ合ってほしいという想いを込めています。
墓地は暗いイメージがありますが、それを払拭し「リフレッシュできる場所」にしたいと思いました。残された人たちが気軽にお墓参りに来ることができ、気持ちよく供養ができるように、生きている方が自分を見つめ直し、先祖がいるから自分がいるということを実感し癒される場所であってほしい、そのために『ひかりの園』の建物には自然とも触れ合うことのできるデザインを得意とする安藤忠雄氏に設計を依頼しました」
「ひかりの園」は、ブックタイプの他に厨子式の納骨フロアも備えている
「さらに、『ひかりの園』はとにかく自由度があるということを大切にしています。自分で色々なことを決められるということは、自分に合ったものを選択できるということです。さまざまな「人とは違う」ことで生きにくいと感じ悩んでいる方でも、居心地良くお茶でも飲みながら過ごすことができる空間になればいいなと思っています」
そして墓地とは、お寺が所有しお骨をおさめるだけの場所ではなく、供養をする場所であり「魂の癒しの場所」であるべきだと住職は話す。
住職 浦田氏「自由度があるということは選ぶのに苦労することでもあります。『ひかりの園』は斬新なスタイルゆえ、来て手に持って実感してもらわないとわからないと思います。ぜひ、足をお運び頂き魂手筺(ブック)タイプを、たくさんの方に手に取ってみてほしいですね。
そのために、開かれたお寺を目指しています。敷地内には美術館もありますし、座禅イベントを行ったり、落語会を開いたりすることでたくさんの方に気軽に遊びに来てほしいと思っています。こうした機会を通じて、こういう新しい納骨堂ができた、ということをアピールしていきたいですね」
多様化するさまざまなニーズに応える斬新な納骨堂は、決して亡くなった方の供養のためだけに存在するのではない。お墓参りに来た方が自分を見つめ直し、故人とのつながりを感じる癒しの場でもある。その空間によりリフレッシュし、亡くなった人との気持ちが通い合う……『ひかりの園』は多くの人の心を癒す場所となるのではないだろうか。
ひかりの園