ガリバーを運営するIDOMが、CtoCのカーシェアリングサービス「GO2GO」を始めた理由

IDOM

中古車販売の「ガリバー」を運営する株式会社IDOM(イドム)が、この春からCtoCのカーシェアリングサービス「GO2GO(ゴーツーゴー)」をスタートする。近年、CaaS(Car as a Serviseの略、サービスとしての車の意)事業にも力を入れる同社。このGO2GOは車を貸したい側と借りたい側が同社開発のアプリケーションを介してカーシェアできるサービスだが、他社も先行するなか、開始前から既に事前登録車数が6,000台を越えるなど注目を集めている。期待がかかる本サービスへの思いを同社で新規事業セクションの執行役員を務める桐原達夫氏に聞いた。

創業期からのフィロソフィー「流通革命企業たれ」を貫く

-桐原さんは1999年にIDOMの前身であるガリバーインターナショナルに入社され、アメリカでの子会社立ち上げやCtoC事業の展開などに尽力されてきました。現在はCaaS事業の責任者として新規サービスの開発に携わられています。
まずは中古車流通業の最大手である御社がCaaSのようなテック事業に力を入れるようになったきっかけを教えてください。


「当社は業種的にITとは縁遠い企業と思われることもあるのですが、インターネット普及の過渡期だった2000年代初めから出張査定などにインターネットの力を取り入れてきました。当時は『ネットでマネタイズできるか』ということに懐疑的な企業が多かった中、いち早く安定した収益モデルを作り出した先駆的企業であると自負しています。現在では査定数の半分がネット経由になっており、そうした取り組みが認められて一昨年には経済産業省と東京証券取引所による『攻めのIT経営銘柄』にも選ばれています」
「自動車業界が百年に一度の変革期といわれる今、我々のような二次流通業者にもその大きな余波が来ていますが、この変革期を大きなチャンスと捉えることもできます。

そこで当社としては現状のBtoCビジネスに加えてCtoCビジネスの展開も始め、『売る・買う』に加えて『貸す・借りる』のサービスを提供していきたいと考えました。創業時から『流通革命企業』を掲げてきた当社としては、自動車文化の中に新たなマーケットを開くのは使命のようなもの。そうした新ビジネスを考える中核として2016年に組織したのがCaaS事業部です」

貸す人にも借りる人にも“ご都合”に合ったCtoCカーシェアを目指す

-CaaS事業部発のサービスとして、2016年には月額制の車乗り換えサービス「NOREL(ノレル)」を、2017年には中古車の個人売買サービス「ガリバーフリマ」をローンチしていますね。こちらの反響はいかがですか。


「どちらのサービスも大きな手応えを感じています。まだ今の段階で詳しい数字をお伝えすることはできないのですが、ガリバーフリマについては当初の想定を越える実績が残せていますし、NORELについても昨秋からBMWの新車がラインナップに加わったこともあって一層大きな反響が届いています。首都圏では高級車に人気が集まっており、憧れの車を定額で所有できるというところに興味を感じていただけているようです」


-ガリバーフリマに続くCaaS事業部の新しいサービスが昨年11月に発表されたGO2GOです。このサービスでは御社開発のスマホアプリを介して、ユーザー間のカーシェアが可能になると聞きました。まずはこのサービスを始める狙いを教えてください。
「きっと皆さんもお察しの通り、『GO2GO』という名前は『貸す人にも借りる人にも“ご都合”に合わせるサービス』というところから来ています。GOが2つ並ぶ名前はグローバルに展開する際にもキャッチーな語呂でとても気に入っています。

いろんなモノが簡単に手に入る社会になって経済合理性を求めるユーザーが増えてきた一方、フリマアプリのメルカリなどの浸透でCtoCサービスを利用するハードルが下がってきました。そうした流れの中で、すべてのお客様に対応できるサービスを展開しようと考えたのがGO2GO開発のきっかけです。『安心・簡単・遠慮なく』をサービスのコンセプトに掲げ、それを体現するために最短3時間からシェアを可能にしたり、相互の評価ができるといった仕組みを整えています」

強みは、全国各地の550店舗をステーションとして使えること

-中古車販売業を主業とする御社が、ユーザー間のカーシェアの場を提供する意義はどんなところにあると考えていますか。


「確かに『なぜ当社がやるのか』が前面に出ているサービスでなければならないと考えています。そこに関しては、やはり当社には実店舗があるということがとても大きいと思います。
貸し手側の視点に立ってみると、アプリ上のやりとりだけではシェアリングに出した車がどんな状態で戻ってくるか不安なところもありますよね。その点、当社には店舗があるので、スタッフを介したフェイストゥフェイスのサポートも可能です。もしご自宅での受け渡しが嫌ならば店舗を使っていただくこともできますし、貸した車が汚れてしまったということがあればクリーニングサービスをご利用していただくことも現在考えております」
「CtoCのカーシェアのために新たに土地を借りてステーションを作るというのはビジネス視点で考えたら難しいことだと思いますが、当社にはフランチャイズ店を含めて550を越える店舗がある。そのネットワークだけで全国津々浦々をカバーできることが新たなビジネスチャンスの創出につながると捉えています」

「売る・買う・貸す・借りる」のワンストップサービスで生まれるシナジー

-サービス開発の中で特にこだわった点を教えてください。


「そこはやはり『使いやすさ』ですね。それはアプリの使いやすさという意味だけではなく、アプリを使わない方でも店舗に来ればきちんとした説明が受けられて、使いやすいと思ってもらえるサービスにしていきたいということです。そういう点では純粋なテック系企業とは違ったところを目指していて、専用のコールセンターも設置するなどアナログ的なサポートにもしっかり力を入れていきます」


-CtoCのカーシェアリングの分野では競合となり得る先行企業もありますが、その中で御社の強みはどこにあると考えていますか。


「現在、国内の自動車総保有台数は約8,000万台。そのうちカーシェアの登録台数は約3万台といわれています。そんなまだまだ供給数の足りない状況において他社もそれぞれのコンセプトを持っているので競合ではないという認識です。むしろ、これから発展していくことが間違いないビジネスなので、先行企業を競合と捉えてはおらず仲間として、全体で盛り上げていければと思っていますね。そして、この先CaaSがどんどん発展していく中でそのパイオニア的存在になれたら光栄です」
「また、重ねてになりますが、全国の店舗をはじめとした自動車流通のインフラを持っていることが当社の強みです。GO2GOのようなCtoCカーシェアサービスの難しいところはオーナーを数多く集めなければならないことです。その点で当社は店舗で月間1万台、ガリバーフリマを合わせるとプラスαの販売数がありますし、これまでの販売データも蓄積しているので、既存のお客様たちにもアプローチすることでオーナー数を担保することが可能であると考えています」


-そうすると中古車販売を中心とした既存事業へのシナジー効果も大きそうですね。


「そうですね。登録されているユーザーの中にも、いずれは車を「買いたい、売りたい」というお客様がいると思うので、『売る・買う・貸す・借りる』のすべてのサービスにワンストップで対応できるのは当社全体のシナジーになるはずです。さらには、車を購入されるお客様にもメリットを感じていただけるはずで、GO2GOを利用することで毎月の維持費を縮小できるなら、新たに車を持ってみようと思うお客様が生まれたり、もうひとつグレードの高い車種のご購入を検討されるようなお客様が増えるかもしれません」
「そのほかNORELとGO2GOを組み合わせて使っていただくことも可能です。例えば、NORELを利用しているけど平日しか車を使わないという方が週末だけカーシェアして賃料を効率的に圧縮するというような、まったく新しい車の使い方が生まれることにも期待しています」

「車を持つことへの諦め」を払拭して、自動車文化に再び革命を

-昨年11月のサービス発表以降、業界内外からの反響はいかがですか?


「おかげさまで事前登録の台数も6,000台を越えており、ユーザーの方々からの大きな期待を感じています。また、業界内でも多数の企業から驚くほど多くのアイデアをいただいており、協業をはじめとしたいろんな展開を考えているところです」


-春のローンチを前にして、今考えているサービス強化への展望を教えてください。


「GO2GOはニッチ狙いではなくマジョリティ狙いのサービスと位置付けているので、オフラインメディアを含めた周知活動を積極的に行っていきます。そして、まずはベーシックサービスの形でローンチしながら、登録台数をより多く増やしていくのが目下の課題です。その後は受け渡し方法や店舗サービスなどの面でユーザビリティーの向上に努めていく予定です」
-最後に、テクノロジーの力で自動車文化をどのように変えたいと考えていますか。


「『車を諦めて欲しくない』というのが創業時代からの当社の願いであり、経済的な理由で車を持つことを諦めたり、本当は好きではない車に乗ることになったりという『諦め』を払拭する機会を様々な形で作っていきたいと考えています。

今から20年前に比べるといろいろなモノが簡単に手に入りやすい世の中になっている一方で、車の所有に対する感覚はずっと旧態依然のままです。私たちはその現状を打ち壊したい。そのためにはBtoCの流通企業という自らの存在をも否定しながら、GO2GOひいてはCaaS事業全体を通じて今後も自動車文化に革命を起こしていきたいと思っています」

PROFILE

  • 株式会社IDOM CaaS事業部 執行役員 桐原達夫

    株式会社IDOM CaaS事業部 執行役員 桐原達夫 20代はプロのミュージシャンを⽬指し⾳楽活動に専念。1999年、株式会社IDOM(旧ガリバーインターナショナル)⼊社。⼊社直後は直営店事業の推進や出張査定事業の⽴上げを⾏う。その後、⽶国⼦会社の⽴上げの命を受け渡⽶。アメリカでは中古⾞売買事業のほか、C2C事業も担当。現地現物で中古⾞C2C事業の今後の可能性を強く感じる。この経験により社内のデジタルサービスを率先して推進する役割を担う。帰国後はガリバーアウトレット等、展⽰販売事業の⽴ち上げを⾏い、現在は新規事業部の執⾏役員として、フリマ事業やカーシェア事業を含むCaaS事業部を統括。趣味は⾳楽とクルマ。好きなアーティストはGuns Nʻ Roses。

2019年3月12日

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