「もっとこうだったらいいのに」をカタチに。
場所探し専用プラットフォーム『MachiTag』誕生秘話

ジギョナリーカンパニー

「世の中にある、『もっとこうだったらいいのに』を事業によってたくさん解決したい」このミッションのもと今年1月に立ち上がった、ジギョナリーカンパニー株式会社が、初のサービスとなる「MachiTag(マチタグ)」を、この4月にローンチした。MachiTagとは、ユーザーの投稿で集まったハッシュタグを基に現在地から近い順にスポットを表示できる、場所探しに特化したWebサービスである。
このMachiTagは、どのようにして生まれたのか。代表取締役CEO&CPRO市川航介氏に伺った。

既存サービスでは埋められない、場所探しの悩みを解決

レストランの予約、旅行のプランニング、興味のあるイベントの検索など“行きたい場所”を探すのにネットを使った経験は、誰もがあるだろう。場所探しのニーズは巷にあふれている。それらに応えるべく、ウェブやアプリのサービスは数多く存在している。そのような現状のなか、あえて“場所探しのサービス”に切り込む理由を、市川氏は以下のように語る。
「たしかにスポット紹介のサービスは多いと感じています。ただ、読みもの中心の情報も多く、これで探せば希望の場所がすぐに見つかる、というにはどのサービスも決め手に欠ける。このもどかしさを埋めたいと開発したのが、MachiTagです」


検索サービスを使ったけれど、見つけられなかった。あるいは、見つけるために多くの時間と手間を費やしたという人は、実際多い。市川氏曰く、その理由として大きく三つのことが考えられるという。


「一つは、既存のサービスではユーザーの主観的な情報を探すのが難しいこと。例えば、早朝に打ち合わせを代々木のカフェでしようと考え、検索窓に「代々木 カフェ 打ち合わせ 早朝」と入力しても、満足した結果が出てこない。ユーザーが知りたいのは、その場所が打ち合わせに本当に適しているのか否かですが、実際にそこに出かけたことのある個人に依拠する情報は、現在の検索機能では、最速かつ最適には入手できないのが現状です。
二つ目は、検索したい事柄の言語化の難しさが挙げられます。検索するには、検索したいワードの入力が前提ですが、頭に思い浮かべているイメージを言葉に変換するには、意外とスキルを要するんですよ。結果、言語化できずに希望の場所を探せなかったという現象は、大いにありうると思っています。

最後は、場所側のジレンマです。僕は前職で、フリーペーパーを発行する会社に在籍していましたが、お店側はネット集客に課題を抱えていると常に感じていました。インターネットは情報が膨大すぎるから、ユーザーが自分のお店にたどり着くのは難しいと最初から諦めている節さえあるのです。コストをかけ、検索結果の上位に表示する方法もありますが、資金力のあるチェーン店ならまだしも、個人オーナーでは限界がある。ここにも課題が隠れていると考えています」


検索エンジンの限界、ユーザーの限界、お店の限界。この場所探しの“三大障壁”に立ち向かえるアイデアを詰め込んだのが、MachiTagだ。そのカギを握るのは、サービス名にも使われている“タグ”の存在である。
「MachiTagは、人の持つ感覚やイメージをいかに言語化するかに挑戦しています。先ほどの話のとおり、潜在しているイメージを明確にするのは大変なので、MachiTagには、考えられる限りの検索ワードをあらかじめタグにして設置しています。ユーザーは気になるタグをタップすれば、検索条件が整う。自分で検索ワードを考えることも、文字を打つ必要もありません。タグは複数選択できるので、精度の高い検索結果を短時間で得ることができます」


さらには、情報の表示の仕方にもこだわりがあるという。スポットは「グルメ」「イベント」「コンビニ」のように、ジャンル別に分類がされている。ユーザーは検索したいジャンルを選択するだけで、検索履歴や時間帯、そして季節に合わせたおすすめタグが縦軸で順に表示される。横軸には現在地から近いスポットが順に並んでいるという。

「インスタで検索」「地図が苦手」。女性の行動特性を考察するなか、MachiTagは生まれた

多くの特長を持つMachiTagだが、「開発は女性が使うことを想定して進めた」と市川氏は話す。ヒントは、実は身近なところにあったようだ。
「それは、妻がお店探しにInstagramを使っていたことにありました。ハッシュタグを基に写真を表示し、自分のイメージに近い店を一つひとつチェックする、というのがそのやり方ですが、Instagramはあくまでも写真を共有するサービス。場所を探すには、万能と言えません。そのうえ、検索できるハッシュタグは一つだけ。ずいぶん手間のかかる作業だ、と驚きましたが、同時に雰囲気から店を探すのは女性らしい発想と感じました。さらには「#子ども連れ #代官山カフェ」のように、二つ以上のハッシュタグから絞り込みができれば、お店探しも捗るのでは、と考えました。

また、場所探しのサービスは最初に地図が表示されるものが多いんです。妻や周囲の人に話を聞くと、地図を読むことが苦手な女性が多く、自分がどこにいるのかも分からない状態の人にとって、この負担は大きいと感じました。この考察から、最初に表示するのは場所の名称と写真だけにして、表示順も現在地から近いものからにする。気になる場所があれば、クリックして詳細を見る、地図もそこに置くくらいがちょうどよい、という具合に大まかなユーザーインターフェイスが頭に浮かびました。これらがMachiTagの構想の起点になりました」


MachiTagのイメージがある程度明確になったところで、市川氏は開発をいよいよスタートさせる。ローンチまで約1年の道のりは試行錯誤の繰り返しだった、と苦労をのぞかせた。


「一番悩んだのは情報の濃度でした。一つの場所にどんな情報を持たせようかと考えだしたら、いくらでもやりようがあるんですよね。どこに肉付けして、どこを削ぎ落とすのかは、考察に考察を重ねました。結論を言うと、MachiTagは場所探しのプラットフォームなので、場所の登録数がある程度ないと話にならない。びっしり詰まった100件の情報よりも、ある程度の情報でも1,000件あるほうが、ユーザーの満足度は高いと考えました。そのため、詳細からはユーザーレビューや金額といった情報を除きました。MachiTagは、グルメ情報もあれば、公共施設、喫煙所、トイレまであらゆる場所を登録しているので、全体を通してみたときに広く平たくがベストと考えたのです。とはいえ、ユーザーが必要な情報は外部サイトへのURLで確認していただけます」


また、開発にあたっては街に出て、100人以上にインタビューを行ったという。ニーズに合っているか、新たな気づきはないか。そういう思いのもと、ユーザーの生の声を足で稼ぎ、サービスへと落とし込む。外国人旅行客からは、今後の機能を考えるうえでの大きなヒントも得られたそうだ。

MachiTagのさらに便利な使いかたとは

機能の話に戻そう。思い立って開くだけでも十分に活用できるMachiTagだが、もっと便利に使うには、ユーザー登録がおすすめだ。


「登録していただくと、タグのフォローができるようになるので、よく探すジャンルやテーマがある人は特におすすめです。フォローしたタグは、検索バーの下に表示されるので、迅速に場所探しができるようにもなりますし、写真をアップロードしてユーザー間での情報共有もできるようになります。さらには、自分でタグの登録ができます。僕も「市川おすすめ」というタグを作っています。 タグで絞り込んだページの URLは送信できるので、お店を選ぶときにURLをリストアップするといった手間も不要になります」


これらの機能を使えば、場所探しのコミュニケーションが、MachiTag一つで完結できるようになる。MachiTagのこの利便性の良さを一度知ってしまうと、手放せなくなるだろう。そして、これから年内にかけては、新しい機能が続々追加される予定だという。
「まず夏前には、ユーザー自身が場所を登録できるようになります。登録する場所は、自販機でも坂道でも何だっていい。街じゅうをスポットにできれば、あらゆるニーズに応えられるようになりますからね。お店などをお持ちの方にも、どれだけ登録しても完全無料なので、販促ツールとして気軽にご活用いただきたいです。

また、現在は、GPSや主要な駅を基点に検索する仕組みになっていますが、今後はユーザーが中心地を選べるようにもする予定です。今すぐのニーズのみならず、未来の予定にも応えられるように、と考えています。このほか、タグの公開範囲を決められるようにし、パーソナルな使いかた――「思い出の場所」というタグをつくり、家族や恋人間で共有する――に対応することも考えています」


さらに、今秋にはアプリ版のリリースも計画。年内には、月間ユーザー数100万人、場所登録数250万を目指す。多言語対応、海外での場所探し等、ますます使い勝手よく進化していくそうだ。


これらのように情報、機能両面の充実を図るなかで、社会的なアクションにもつながれば、と市川氏は期待を込める。


「タグには、「#ベビーカーOK」「#ビーガン」「#アレルギー対応」などをすでに実装しているとおり、母数としては多くない層の方に対しても、価値を発揮できるサービスに育てたいと思っています。そして、そういった人たちに対応する場所が増え、そこが繁盛するようになり、それを見た他のお店や施設が追随し、繁盛店がさらに増える。そんなサイクルを世の中につくりたい。MachiTagをきっかけに、困っている人がいなくなる社会が出来上がることを理想にしています。いつも通る場所に、今まで気づかなかった個性がある、新しい発見がある――そんな体験をこれからたくさん生み出していきたいですね」

インターネットにこだわらず、「もっとこうだったらいいのに」に応えるサービスを提供したい

今後はMachiTagを事業の軸にしつつもウェブサービスにこだわらず、色々なことを手がけていきたい、と市川氏は言葉に力を込める。
「インターネットサービスから店づくりや街づくりにアプローチできる点は、大きなやりがいです。ただ、それ以外にも、モノづくりやお店づくり、街のインフラ整備など、さまざまなことに携われる企業をジギョナリーカンパニーは目指しています。MachiTagもコンシューマー向けにスタートを切りましたが、ビジネス向けの活用もすでに検討しています。アライアンスの話も進んでいますし、自分のアイデアも、周囲からのアドバイスも色々ある。やりたいことはたくさんありますが、『世の中の困っていることを解決できるのかどうか』の視点だけは、決してブレないようにしたいですね」


一つの手法やサービスにとらわれず、一社だけで事業を営むことにもとらわれない。柔軟に多くの事業を展開し「もっとこうだったらいいのに」の声に応えていく。市川氏が創業時にこめたこの想いは、まずMachiTagというカタチで現れた。


『時代を超え、300年後も輝き続ける、世界一の“お役立ち事業”創造集団へ』というビジョンのもと、第2弾、3弾と続くプロダクトも、そう遠くない未来に私たちのもとに届けられるのだろう。これらもまた、誰かのささやかな不満や不安を解消できる、ありそうでなかった画期的な創造物として、個人の、社会の期待に真摯に応えていくはずだ。

2019年4月12日

ジギョナリーカンパニー

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