2019年11月25日

急成長を見せる蒸し豆市場。業界トップを走るマルヤナギが開発にかけた想い

マルヤナギ小倉屋

蒸し豆の生みの親であるマルヤナギ小倉屋は、茹でるよりも栄養の損失が少ない「蒸す」という製法に着目した。2019年に市場規模は30億円を超え、水煮大豆の市場規模を上回るなど急成長する「蒸し豆」市場において、発売以来リーディングカンパニーであるマルヤナギ小倉屋が蒸し豆にかける想いやこだわりを、副社長・柳本勇治氏と執行役員・柳本健一氏のお二人に伺った。

「蒸し大豆」商品化にかけた情熱と社員一丸となった商品育成

―「蒸し大豆」が開発された経緯をお聞かせ下さい
柳本勇治氏
我々は1976年に日本で初めてレトルトの煮豆を開発し、煮豆の全国流通を実現した先がけとして煮豆製品の製造販売に取り組んできました。しかしその後健康志向の高まりを受け、「甘い煮豆」が徐々に敬遠されるようになり、市場のニーズは大きく変化しました。そこで2000年ごろから“甘くない豆”を求める消費者ニーズに対応した「おいしい水煮大豆を作る」ことを決めたことがきっかけです。商品化に向けて原料や製法など試行錯誤し、何種類もの試作品を作っているうちに、豆を茹でるよりも、蒸したほうがおいしいと気づきました。研究開発を重ねた結果、日本で初めての蒸し大豆製造技術を2004年に開発しました。

柳本健一氏
弊社の蒸し大豆は非常にシンプルで、水漬けした大豆を袋に入れて密封し、袋ごと加圧・加熱することで、豆に含まれる水分で蒸されてほくほくに仕上がります。窒素ガス充填を行っていますので風味の劣化を防ぐことができ、添加物を一切使わずに常温保存が可能なのです。2004年に弊社が初めて開発、商品化した蒸し大豆の製法は、安心かつ安全であるだけでなく、大豆本来のおいしさをそのまま味わってもらえる自信があります。
蒸し豆/水煮豆の比較イメージ
蒸し豆/水煮豆の比較イメージ
―「蒸し大豆」の市場拡大にあたっては、ご苦労などがたくさんあったのではないでしょうか?

柳本勇治氏
発売当初は、水煮大豆に比べて認知度も低く、また「蒸す」という調理法だと、ゆで水に栄養やアクなどが流出する水煮大豆に比べて豆そのものの色が出てしまうため、「色が悪い」という理由で販売にも苦労しました。

そのような状況の中でも美味しく、体にいい蒸し大豆を世の中に広めることが弊社の務めと考え、どうすれば育成できるかについて色々と考えていました。発売からほどなくして情熱的なファンレターが届くようになり「食べて頂ければ、良さを分かって頂ける!」という確信になり、全社員の力を結集して全国の小売店で試食販売をスタートさせました。外部の販売員ではなく営業を中心とした弊社社員が、15年間で約5000店舗以上は実施しています。

地道な試食販売活動で、おいしさに気づいて頂くことに成功し、売上も少しずつ伸びはじめました。さらに軌道に乗ったのは、2014年にNHKの情報番組「あさイチ」で取り上げて頂いてからです。そこで売り上げがいきなり倍になりました。それ以降テレビで取り上げて頂く機会が増え、今や蒸し豆市場は水煮豆市場を大きく上回るまでに拡大しました。おかげさまで消費者の方からマルヤナギの「おいしい蒸し豆」をご支持頂き、発売以来市場シェアNo.1(※KSP-POS全国データより)を獲得し続けることが出来ていますが、その背景には社員全員で一丸となり困難を乗り越えた苦節の10年があったのです。

開発者としてのこだわりと責任「食」を通じた農業振興や地域活性

―開発する中で特にこだわっていることについて教えて下さい。

柳本勇治氏
弊社の蒸し大豆の原料は、選び抜かれた特別栽培の大豆です。蒸し大豆という商品は素材の大豆の質が何よりも重要です。弊社は試作の段階から蒸し大豆にふさわしい“おいしい大豆”を探し、30種以上もの品種の大豆を試してきました。そうして選んだ品種を北海道の契約農家様に依頼し、農薬や化学肥料を通常使用の半分以下におさえた”特別栽培”の大豆を生産して頂いています。なぜなら、味付けをしない蒸し大豆は、豆そのものの品質が大切だと考えているからです。

昨今では、北海道の農家の方々も人不足など様々な課題を抱えており、作付けの判断基準が「生産性がいい」「病気に強い」などに変わりつつあります。我々が必要とする「おいしくて安全性の高い作物」と農家さんが作りやすい作物は必ずしも一致しません。

そのような状況の中で品種を指定した特別栽培大豆の使用を維持するのは非常に大変ですが、農家さんの事情をよく聞き、課題を一緒に考えながらいい大豆を買い支えていかなくてはならないと考えています。
農地視察写真
農地視察写真
―生産農家の方との協力を意識されているのですね。

柳本健一氏
弊社は「伝統食材の素晴らしさを次の世代へ」というメッセージを掲げ、豆や昆布、ごぼうなどの国産の伝統食材で作った食品を通じて健康増進の提案に取り組んでいます。国産農産物の消費が増えれば生産農家の皆様の収入が増えるばかりでなくその地域の活性化につながります。一食品事業者としての商売にとどまらず、国内の農家さんと協力し合って良い関係を築き、農業振興にも繋げていきたいと考えています。

柳本勇治氏
「おいしい蒸し豆」シリーズからうまれた”蒸しもち麦”という商品がありますがこの”もち麦”も国産原料を使いたいと国内栽培に取り組んでいます。弊社の工場のある兵庫県加東市では、2017年から栽培を始め、2019年11月に加東市産もち麦を使った商品の発売にこぎつけました。弊社が加東市に進出して50周年の2019年7月22日にもち麦を通じた農業振興や地域の活性化、市民の健康増進などで同市と連携協定を結びました。そして加東市産のもち麦を使った学校給食やもち麦がいかに身体に良いかをお知らせする健康セミナーなどを開催しています。
このように蒸し大豆の原料開発で培った考え方を他の原料にも展開しています。

急速に変化する消費者の嗜好の中で「蒸し大豆」が評価される理由とは

―「蒸し大豆」が評価される理由は何だとお考えですか?

柳本勇治氏
大豆は七大栄養素が全て入った天然のマルチサプリと言われています。マルヤナギの「おいしい蒸し豆」はその大豆の栄養価と美味しさを損なわずに製品化している点が一番のメリットです。また常温でも保存できて、パックを開けたらすぐに食べられる簡便性や用途の広さも大きな強みです。おやつに食べたりご飯に混ぜたり、サラダにするなど、ユーザーの方が次々に新しいレシピを開発できるところも、評価される理由ではないかと思っています。
柳本健一氏
弊社の「蒸し豆」は素材そのものがしっかりおいしい商品なので、炊き上がったご飯に混ぜるだけの蒸し豆ご飯や、それを塩おにぎりにしただけのものなど蒸し大豆のおいしさをより感じることのできるシンプルな調理法がオススメです。もちもちしておいしいので、都内のイベントでも、いつもお子様にも評判です。

――おいしさはもちろんですが、その利便性、手軽さが時代にマッチしているのかもしれませんね。

柳本勇治氏
蒸し大豆は袋をあけたらそのまま食べられるので、ササっと料理に足して栄養バランスを補填できる。水煮大豆のように煮込んだり、味をつけたりする必要がありません。そういったところが現代社会のニーズに合致しているのでしょう。

こだわりぬいた「蒸し豆」のポテンシャル

―「蒸し豆」は手軽に豆をおいしく食べられることが喜ばれているのですね。

柳本勇治氏
神戸市の学校給食に関するこんなエピソードがあります。給食で水煮大豆を使った「大豆ご飯」がありましたが、子供たちが大豆を残してしまうという話がありました。そこで弊社が水煮大豆を蒸し大豆に変更することを提案し実現すると「大豆ご飯」が、学校給食の人気アンケートでベスト5に入るまでの人気メニューになったのです。弊社の「蒸し大豆」が、鋭敏な味覚を持つ子供にもおいしいとわかってもらえたことも自信につながりました。
――米国での展開も進められているとか?

柳本健一氏
豆の蒸し加工技術や商品へのこだわりにおいては日本でナンバーワンという自負がありました。そこで、2015年に健康志向が高いと言われる米国西海岸に視察に行き、シリコンバレーのIT企業や生活にオーガニックを取り入れているヨガスタジオなどに試作品を持参し試食してもらいました。その結果、栄養価が高い豆を、袋を開けてそのまま食べられるという技術やクオリティは、米国にはないと驚かれました。フィットネスだけでなく食生活にも気をつかう人たちに「蒸し豆」のポテンシャルを高く評価され、口コミで評判が広がったことが、海外展開の足がかりとなっています。現在では米国西海岸、カリフォルニアを中心とした地域で販売を進め、約1,000店舗まで展開が進んでいます。


柳本勇治氏
米国でも「蒸し大豆」の本当の価値を知ってもらうために、丁寧な店舗展開と育成を心がけています。世界で4番目の規模を誇るスーパーマーケットチェーンのコストコからも、3年ほど前からオファーを頂いておりましたが、パッケージや商品の説明など時間をかけて協議を重ね、ようやく2019年1月から蒸し大豆の販売を開始しました。米国市場についても丁寧にマーケティングし、そのエリアや人々のニーズに合っているのか、拡販の可能性や中長期的に継続して需要があるかを見極め判断しています。

人々の健康のために蒸し大豆を食卓のあたりまえに

―今後の展開についてお話を伺えますか?

柳本勇治氏

2018年末に蒸し大豆と水煮大豆の市場規模が逆転しました。しかし、まだ蒸し大豆をご存知ないお客様もいらっしゃるので、これまでと同様に丁寧に魅力をお伝えしながら販売していきたいと考えています。
1951年の創業以来、「働き甲斐のある会社を作り、広く社会に貢献する」という企業理念のもと昆布佃煮や煮豆、蒸し豆を開発・製造してきました。「働き甲斐のある会社」という点では、全従業員の物心両面の幸福を追求するということを第一に取り組んできました。

そして「広く社会に貢献する」と言う点では、我々が長年取り扱ってきた昆布や豆、惣菜の原料であるさつまいもやごぼうなど、伝統食材が日本人の健康を支えてきたことに着目し、伝統食材の素晴らしさを次の世代に伝えていくことを常に考え、これからの時代にあった食の提案を通じて社会貢献していきたいと思っています。

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お二人のお話しから「蒸し豆」にかけるひたむきな情熱を強く感じることができた。また、人々の健康増進や農業振興など「食」を通じた社会貢献への真摯な想いにも心を打たれた。今後もマルヤナギ小倉屋の企業活動について注目していきたい。

PROFILE

  • 株式会社マルヤナギ小倉屋・代表取締役 副社長 柳本勇治氏

    株式会社マルヤナギ小倉屋・代表取締役 副社長 柳本勇治氏 1955年神戸市生まれ。京都大学卒業後、自動車メーカーに勤務。1980年株式会社マルヤナギ小倉屋に入社。創業者である父が病気で倒れたのを機に1988年から兄の社長と共に経営の舵を取り現在に至る。

PROFILE

  • 株式会社マルヤナギ小倉屋・執行役員 柳本健一氏

    株式会社マルヤナギ小倉屋・執行役員 柳本健一氏 1982年神戸市生まれ、大阪大学卒業後、電気機器メーカーに入社し7年間HR等を担当。2012年に家業に参画するためマルヤナギのグループ会社である株式会社だいずデイズの経営推進を担当し、2016年株式会社マルヤナギ小倉屋の執行役員に就任。海外事業部長、開発本部部長等も兼務。

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