日露友好をたどる写真展「日露関係 写真でみる歴史」
2019年9月14日(土)、東京ミッドタウン日比谷1階アトリウムにて、外務省主催による写真展「日露関係 写真でみる歴史」が開幕した。これは、近現代史の日本とロシアの交流を伝える貴重な写真約80点を一堂に集めたもの。
2018年から2019年にかけて実施された「ロシアにおける日本年」の認定行事の一環として、2018年10月~11月にモスクワ、2019年1月~3月にサンクトペテルブルクにて開催された写真展の、いわば日本版だ。
時代の変化に分けて日露の交流を写真でたどる
展示は、3章に分けて時代によって変化していった両国の関わりを、写真資料と専門家の客観的な説明文で解説。章ごとにテーマを設け、日露の交流の軌跡をたどっている。
第1章の「出会い」では、鎖国真っ只中の幕末期にロシア帝国の使節団が長崎に来航した様を描いた絵巻物の一部(写真)に始まり、いくつかの紛争を経て国交を樹立、明治維新を迎えた日本にニコライ堂が建設されるなど友好関係が築かれるまでが伝えられている。
第2章の「対立・強調・戦争」では、地政学的対立から発展した衝突、第一次世界大戦期での同盟関係や文化交流、第二次世界大戦期の両国の苦しみ、さらには戦時下においても捕虜たちと市民たちが交流する様子などが紹介されている。
そして、第3章「交流の発展」では、戦後の傷痕を残す両国が復興し、経済的な発展を遂げながら、経済、科学、スポーツ、芸術などの分野で交流を続けてきた記録を展示。日ソ合作映画『デルス・ウザーラ』を撮影した黒沢明監督、日本の柔道家たちとの親交を深めるプーチン大統領などの画像を交え、互いの文化に敬意を示す人々の様子を映し出す写真が多くを占めている。
交流の歴史を知ることで相互理解を深め、今後について両国の国民一人一人が考えるための良いきっかけとなることを願って開催されている本写真展だが、80点にも及ぶ展示の中で興味深いのは、両国民が触れあう姿だ。トルストイ、ガガーリン、スタルヒンなどお馴染みの面々も登場。政治的に緊張関係にあった時代であっても、民間で続けられていた交流が、現在の友好の礎となっていることがよくわかる構成となっている。
「あなたの知らない日露がある」
日露交流年のキャッチフレーズである「あなたの知らない日本があります」「あなたの知らないロシアがあります」という言葉通り、両国の新たな魅力を提示するイベントが日本とロシアの各都市で目白押しとなった1年だったが、本写真展はその総集編とも呼べる象徴的な企画と言えるだろう。
外務省 欧州局 ロシア課長 宮本哲二
一般公開に先立って行われたオープニングセレモニーでは、外務省欧州局ロシア課長宮本哲二氏が、「限られたスペースではありますが、できるだけ幅広いテーマでの交流を紹介するよう心がけた。両国の相互理解が深まるよう願っています」とあいさつ。
続いて、日露戦争時代、愛媛県松山市に設けられたロシア兵捕虜収容所を舞台にした映画『ソローキンの見た桜』(2019年)に出演し、ロシアの巨匠アレクサンドル・ソクーロフ監督作『太陽』(2005年)で昭和天皇を演じたことでも話題となった俳優のイッセー尾形氏が、ロシアでの撮影秘話や凍てついたネヴァ川の思い出などを披露。「両国の交流の全体像がよくわかる写真展」と太鼓判を押し、「歴史だけでなくこれまで気づかなかった多くのものを読み取ってもらいたい。ゆっくりと一枚一枚、目を凝らしてご覧ください」と呼びかけた。
引き続き、宮本課長、イッセー尾形氏、監修に関わった東京大学史料編纂所長・教授の保谷徹氏、外交史料館副館長の中野洋美氏によるテープカットが行われ、写真展が正式に開幕した。
写真展は23日(月・祝)まで、11時から21時まで毎日開催されている。
写真展「日露関係 写真でみる歴史」
https://www.hibiya.tokyo-midtown.com/jp/event/4725/
【主催】
外務省
【協力】
共同通信社
東京大学史料編纂所
一般財団法人 日本カメラ財団
外交史料館
タス通信
スプートニク日本
中央海軍博物館
国立美術センター「ロスフォト」
リュミエール兄弟写真センター
下斗米 伸夫・法政大学名誉教授,神奈川大学特別招聘教授
【監修】
波多野 澄雄・筑波大学名誉教授
保谷 徹・東京大学史料編纂所長・教授
メシェリャコフ A.N・ロシア高等経済大学古典東洋,古代ギリシャ・ローマ研究所教授
外務省欧州局ロシア課兼ロシア交流室