2019年4月19日

小さなおみせのキャッシュレス化で地方活性化。「ペイペイ戦争」に一石投じる、ニッポンプラットフォームの「おみせに10%上乗せ還元キャンペーン」とは

NIPPON Platform

政府が明確な目標を掲げて積極的な導入を推し進めるとともに、大手事業者の相次ぐ参入により成長が著しい日本のキャッシュレス決済市場。そんな中、「日本をキャッシュレス化する」と「中小個人商店を中心とするおみせ活性化を起点とした地域創生・地方創生の実現」をビジョンとして掲げるNIPPON Platform(ニッポンプラットフォーム)は、この4月から同社のタブレット端末導入店を対象にした「おみせに100億円あげたい気持ち満載! おみせに10%上乗せ還元キャンペーン!!」をスタートした。この取り組みが画期的な点は、消費者ではなく店舗に決済額の還元を行うところにある。なぜ、このようなキャンペーンを企画したのか。その真意を同社の代表取締役会長である高木純氏に伺った。

キャッシュレス事業者によるQRコードバラまきで加熱する「ペイペイ戦争」

―現在、貴社は複数ブランドのマルチ決済機能を持つタブレット端末の無料配布を通じて、日本のキャッシュレス化に貢献されています。まずは、ニッポンプラットフォームという企業のこれまでの歩みを教えていただけますか。
「当社は2016年創業の若い会社ですが、創業から約3年でグループ全体で年商28億円の企業に成長することができました。タブレット設置数は3万台を越え、昨年8月にはamazon pay(アマゾンペイ)の実店舗向け決済サービスを日本で初めて開発し、12月にはシンガポールで広く普及している決済サービスNETS Pay(ネッツペイ)のアジア7カ国における独占営業権を獲得して、業界内での知名度を高めてきました。現在は国内4都市、海外では9つの国と地域に拠点を置き、世界各地の決済サービスブランドと全方位的に提携関係の構築を進めています」
―Apple PayやLINE Payといったスマホ決済の浸透もあり、ここ数年の間に広く普及してきた日本のキャッシュレス決済サービスですが、特に昨年末にソフトバンクとヤフーが共同出資するPayPayが利用者に合計100億円を還元するキャンペーンを行ったことなどによって事業者間のユーザー獲得競争が加熱しつつあります。高木さんはこうした状況をどのように見ていますか。

「キャッシュレス元年と呼ばれた昨年から加熱した競争を、我々は『ペイペイ戦争』と呼んでいます。こうした競争の中で従来を覆すようなビジネスモデルも生まれていて、今では決済手数料0%というペイゼロ事業者のほか、さらにPayPayのように消費した金額の一部を消費者へ還元するバラまき戦略も登場し、毎日のように世間を賑わせています。国内ではキャッシュレス決済に関するQRコードの規格統一が図られつつあるものの、決済以外のサービスなどのQRコードも続々と増えている中、世界的なQRコードの規格統一はまだまだ難しいと思っています。東京五輪、大阪万博と外国人観光客が増える中でこうした状況が続けば、いずれ日本中に様々なサービスのQRコードがあふれてしまい、消費者もどの決済ブランドやサービスを選べばいいかわからなくなることが予想されますね」

大手キャッシュレス事業者の手が届かないところにもキャッシュレス化の恩恵を

―複数ブランドのキャッシュレス決済やサービスにマルチ対応できる貴社のタブレットは、その「ペイペイ戦争」が招く混乱の解決策とも言えます。こうした過渡期にあって貴社はどんなポジションを狙っていますか。
「あまり馴染みがないと、キャッシュレス化といえば中国での爆発的な普及を思い浮かべる方が多いと思います。しかし、世界各地のキャッシュレス化を研究してみると成り立ちや広がり方には各国それぞれの特徴があり、日本も日本らしいキャッシュレス化への進み方があると思っています。例えば、日本にはコンビニや量販店などを中心にキャッシュレスブームの以前から便利な決済サービスがいくつもあります。そうした日本ならではの特殊性がある中で、我々はテクノロジーと親和性が薄いと思われている中小・個人商店の店舗をメインターゲットとし、大手事業者の手が届かないところからキャッシュレス化を加速させていこうと考えています」

―「中小個人商店を中心とするおみせ活性化を起点とした地域創生・地方創生の実現」というのは、貴社が以前から掲げられているビジョンのひとつですね。中小・個人商店の店舗というのは、いわゆる地域の商店街にあるような商店や飲食店のことでしょうか。

「そうですね。いま全国には120万店舗の中小・個人商店があり、その市場では年間30兆円の決済消費額が発生しているといわれています。対して、都市部を中心としたこれ以外の商店の決済消費額は年間270兆円(※)。今のペイペイ戦争はこの270兆円の方に目が行きがちで、これをどうキャッシュレス化するかというところで縄張り争いが起こっています。ここで見落としてはいけない点は、この都市部の市場も中小・個人商店の市場も接触できる消費者の数はほぼ同じということです。例えば、地元の中小・個人商店の周りを通って通勤通学している人たちが、会社や学校のある都市部のコンビニやレストランで消費を行っているという現実があります。つまり、多くの人が270兆円の市場と30兆円の市場との間を毎日行ったり来たりしているわけで、私はそこに中小・個人商店の潜在性を生かしたキャッシュレス化のチャンスと必要性を感じています」

(※)出典:NTTデータ経営研究所

利用者ではなく「おみせ」に還元する

―続いて、この4月からスタートされた「おみせに10%上乗せ還元キャンペーン」についてお伺いします。まずは、このキャンペーンの概要から教えて下さい。

「このサービスは当社のタブレット設置店に一定の条件を達成していただくことを前提として、“おみせで発生した決済金額に”10%のボーナスを上乗せしてお支払いさせていただくという取り組みです。現時点での決済ブランドは、日本人向けにアマゾンペイとNTTドコモのd払い®︎、外国人向けにWeChat PayとNETSPayを対象にしており、今後も順次追加していく予定です」

―多くのキャッシュレス決済サービスが利用者に対して還元しているのに対して、貴社のキャンペーンは店舗を還元先としているのが画期的ですね。

「このキャンペーンを行う背景には、キャッシュレス決済に対する店員さんのモチベーションを上げたいという狙いもあります。以前、いくつか加盟店のご店主にインタビューしたのですが、その中に『お客様からのスマホ決済の要望は多いけど、スタッフが対応したがらない』という声がありました。そこで店員さんにも話を聞いてみたのですが、本人たちは『コンビニでキャッシュレス決済を使っている』と言うんです。つまりキャッシュレスの利便性は肌で感じているけれど、自分自身がそれに対応するとなると、新しいものへのストレスが大きいということに気付かされたのです。今も多くの事業者が消費者に還元すればキャッシュレス化が進むという仮説を持っておられますが、実はキャッシュレスのサービスが増えれば増えるほどおみせ側のストレスが増えているという現実もある。ただ、我々が店員さんに直接何かを還元することはできないので、間接的に店員さんのモチベーションアップにつながる手段としておみせに還元する今回のキャンペーンを考えました」

中小の商店・飲食店が持つデータをうまく活用する

―「おみせに10%上乗せ還元キャンペーン」は大きく話題を呼びそうですが、それでも地方にあるような昔ながらの商店では、新しいものを取り入れるというだけで拒否的な反応も起こりそうです。そうした点も踏まえて貴社ではどのような提案を行っていますか。

「確かに、中小・個人商店のデジタル化というのは、これまでも様々な事業者がトライしながらどこも開拓できなかった難題です。それゆえ、キャッシュレス化という話を急に持ち込んでもなかなか共感を得られない側面があるので、地域や商店街の活性化を絡めたマーケティング活動に力を入れています。また、当社が支援する一般社団法人と協力して『おみせ応援プロジェクト』というものを立ち上げ、自治体と連携して『おみせ応援マップ』の作成や地域のお祭りの支援などにも乗り出しています。取り組みの一例として東京・赤羽では飲食店とコラボし、エリア全体が盛り上がる様々な企画を実行中です」
―貴社は自社でキャッシュレス決済ブランドを持たず、あくまで他社の決済ブランドを仲介する立場にあります。それでいて店舗に配布するタブレット端末のレンタル料は基本無料とのことですが、そうした中でどんな収益モデルを描いているのでしょうか。

「そこについては国内での収益とインバウンド需要による収益という2つの収益モデルを考えています。まず1つ目は、タブレット端末をプラットフォームに育て、決済機能以外にも中小・個人商店に役立つサービスを届けていくこと。例えば、大手企業や金融機関が中小・個人商店向けに行っているサービスを当社のタブレットを通じて仲介していくことなどを考えています。他社との取り組みという点で例をあげると、エン・ジャパンと提携し、タブレット端末から簡単に求人広告が出せる仕組みを作りました。そして2つ目は、日本市場に参入したいけど余力がないという海外の決済事業者の日本進出サポートです。こちらは日本の中小・個人店舗だけではなく、日本の決済事業者全てへの仲介役を担えると考えています」

―タブレットには来店客数などもグラフや表に“見える化”され、データが蓄積されていくそうですね。

「『おみせ応援プロジェクト』の加盟店にはタブレットと一緒にAIカメラを配布しており、自動画像解析による『おみせアナリティクス』が見られるようになっています。そこでは曜日や時間ごとの来店者数だけでなく、年齢や性別などの来客属性も見られるようになっています。こうしたデータをおみせ自身で活用していただくことで、来店数の多い年代に合わせた商品ラインナップの構成やアルバイトのシフト調整など、いろんな経営改善も可能でしょう」
―貴社としては、こうしたデータの活用にもビジネスチャンスの可能性を感じているのでしょうか。

「そうですね。ここまでの取り組みで得られた大きな知見のひとつが、中小・個人商店のデータを利用したいという事業者の存在を知ったことです。例えば、今、地域密着の金融機関の多くが抱えているのは、融資のリスクを回避しづらいという問題です。さらに融資の担当者が、融資を申込に来る街の経営者に経営について教えてあげなければならないようなケースも多々あると聞きます。大きな金融機関には最先端のフィンテック技術が導入されていますし、取引先である大きな企業であれば過去2年分の決算書があれば、その先何年かの予測が可能です。しかし、小さな商店の融資判断には半年、1ヶ月、1週間単位の小さなデータが必要で、我々のもとに蓄積されたデータがそこを補完する役割を担えると考えています。また、蓄積データの活用についてはニッポンソーシャルバンクというグループ会社を4月3日に設立し、日本で初めての店舗データを活用した情報信託銀行という形での効果的な運用を開始しました」

―キャッシュレス事業者の中には自社で圧倒的シェアを取りたいというところもありそうですが、決済ブランドとの提携は円滑に進んでいますか。

「アマゾンペイやネッツとの提携が自信となり、さらにはNTTドコモとの提携も決まったことで、今では様々な決済事業者さまから提携のお誘いを頂いています。先程も申し上げた通り、我々は大手事業者の手がなかなか届きにくい30兆円のマーケットを狙った事業なので、お互いの利点がマッチしたWIN-WINな協力体制が築けていると感じています」

―最後に今後の目標を教えて下さい。
「まず第一に重要視しているのは、やはりタブレットの設置店舗数です。続いて今回のキャンペーンをきっかけに重視しているのが決済金額の総額ですね。この2つについては、2019年の終りまでに加盟店舗数10万店、月間100億円の決済総額を目指していきます。無駄に競争をせず上手に市場を掴むことこそ私の経営哲学であり、ベンチャー企業が生き抜く術だと考えています。その上で、大手事業者の手が届きにくいデジタル化されていないアナログな市場にフォーカスしていくことが、我々の事業モデルです。今後も他者との差別化を図りつつ、様々な事業者と全方位的に提携関係を築いていきたいと考えています」


同社の「おみせに10%上乗せ還元キャンペーン」は、9月30日(申込み期日7月31日)まで展開される。中小の商店や飲食店でも今流行りのキャッシュレス決済に興味を持っている店主は多いのではなかろうか。キャッシュレス決済導入に合わせておトクもやってくるこの機会に、ニッポンプラットフォームのタブレット端末導入を検討してみてはいかがだろう。
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