機密情報は「管理」から「利活用」へ。 指定変更を果たし、急成長市場でトップを目指すODKソリューションズ

株式会社ODKソリューションズ

企業の経営資源である「ヒト」「モノ」「カネ」に、「情報」が加えられるようになった。個人の生活においてもIoTプロダクトが入り込み、もはやITとは切っても切れない関係にある。キャッシュレス決済やマイナンバーの利用範囲の拡充など、個人の資産や情報をオンラインでやり取りする機会もずいぶんと増えるなか、情報セキュリティ対策の重要性は、ますます高まっている。こうした時代の要請に万全な体制で臨むのが、機密性の高い情報処理を強みとする、株式会社ODKソリューションズだ。
今回は、株式会社ODKソリューションズ 代表取締役社長 勝根秀和氏、統括経営管理担当 取締役 作本宜之氏に、同社のコアコンピタンスと目指すビジョン、IT業界の展望に加え、2020年12月29日に東京証券取引所市場第一部への指定変更を果たすに至った、その背景を伺った。

大学入試システムトップシェアを誇る、創業58年の老舗IT企業

ODKソリューションズの創業は1963年。“IT”という言葉が生まれるずっと前に誕生した同社は、これまで情報処理アウトソーシング、ソフトウェア開発、ネットワーク構築を主な事業として58年もの歴史を紡いできた。機密性の高い大量データの処理に強みを持つ事業基盤は、IT業界でひたすら積み上げてきた顧客からの信頼と実績に裏打ちされている。中でも教育分野におけるソリューション開発事業は、同社を支える屋台骨だ。

勝根氏
「大学入試業務において、当社はシェアナンバーワンを獲得しており、受験生の約2人に1人が当社のシステムを使用していることになります。こうしたポジションを確立できたのは、新サービスの積極的な展開と、これまで蓄積してきた業界に関する深い知識と経験を基にした開発力が、他社の追随を許さないサービスへとつながったことにほかなりません」
これらの一端として知られるものに、インターネット上での出願を可能にした『Web出願システム』がある。また、受験ポータルサイト『UCARO(ウカロ)』や入試向け動画面接サービス『Movie インタビュー for University』は日本初のサービスだ。同社は教育サービス以外でも先進的なサービスを打ち出しており、近年注目を集めているSaaS市場にいち早く参入。サービス提供事業者のカスタマーサクセスを支援する『pottos(ポトス)』はその一例だ。

勝根氏 
「また、当社は、金融、医療、HRの分野でも独自性の高いサービスを提供しています。いずれも社会的責任の重い分野であると認識しており、2007年に取得した情報セキュリティに関する国際基準『ISO/IEC27001』のもと、顧客からお預かりしている情報の管理に万全を期すための努力を続けることが、私どもの根幹にある基本的な考え方です」

その考えを具現化するための三大要件を『ISO/IEC27001』は「機密性」「完全性」「可用性」と設定している。同社はこれらを遵守し、情報漏洩等のIT事故を未然に防止するため、ハードや技術面だけでなく組織的な運用を含めたセキュリティマネジメントシステムに取り組んでいる。さらには、社内教育と運用実績によって認定されるプライバシーマークの取得はもちろんのこと、『プライバシーマーク制度貢献事業者』として表彰も受けている。

ただし、これらの三大要件を担保することは、もはや大前提であり、これからはそのうえで情報をいかに活用していくのかにウエイトが置かれていく。さらには、この要件が完全に守られるための仕組み化が重要、と勝根氏は説く。

会社存続を揺らがす2度の危機から得た教訓

2020年12月29日、ODKソリューションズは東証一部指定を果たした。これは、2007年のヘラクレス(現 東証ジャスダック)新規上場、2020年3月の東証二部市場変更に続く昇格となる。同社は、なぜ、いま東証一部指定変更を実行したのか。それを紐解く前に、会社の成り立ちを見ておきたい。

同社は、当時の大阪証券金融株式会社、大阪証券代行株式会社の計算代行業務を分離する形で、大証金グループの計算センターとして設立。当時の社名は、大阪電子計算株式会社と言う。以来、大証金グループの一員としてグループ会社との取り引きをメインにシステムを提供してきた。設立の翌年には大学入試業務システムを受託し、サービスの提供を開始。このように非常に安定した経営を続けてきたが、2000年代に入り、会社存続を危うくする事態に2度見舞われる。

作本氏
「1度目は2008年のリーマンショックです。現在、当社の株価は700円台で推移していますが、当時は120円を付け、不況への備えはもとより、分業による多重下請構造という業界特有の環境に依存するリスクを認識させられました。2度目は2013年、大阪証券金融株式会社と日本証券金融株式会社の合併です。これによって当社が属していた大証金グループが終焉を迎え、当社の売上もそれまでの約半分にまで落ち込みました。これらの経験から、証券金融主体という従前のビジネスモデルから脱却し、環境の変化に左右されない強固な企業体の早期確立を目指すようになります。順調に推移していた教育系サービスを中心とする方向に舵を切り直し、モデルチェンジを果たしてきたのです。この時期を業績不振の底とし、中期経営計画で次のステージを描き、独立した一企業として新しい道を歩んできています。もちろん、今までのビジネスも大切にしていますが、それだけでは企業として持続可能な成長を望めません。現状を補い、将来を見通すうえで、この二つは大きなターニングポイントになっています」
このような歴史をたどるなか、公開市場に対しても「東証一部指定を既定路線と定め、努力を重ねてきた」と、作本氏は振り返る。

作本氏
「当時、上場していたジャスダックは玉石混交。さまざまなステージの企業が多く存在するなかで当社のビジネスモデルは埋もれており、IR活動に精を出しても投下した労力に見合うリターンが得られないことに焦燥感を抱えていました。『UCARO』に代表される当社サービスが市場認知を獲得しつつあるなか、ベンチャー企業でも億単位の資金調達が実現できる今日の経済環境を踏まえると、20億~30億円程度の当社の期末現金残高では勝つまで勝負しきれません。そこで、上場によって実現できるはずの直接金融機能が活用しきれない環境に甘んじず、社員の頑張りに応え続けるためには、大きなマーケットに身を置き、我々の良さを伝えていくほうが応援してくださる方も増えるのではないかと考え、東証一部指定を目指してきました」
東証一部指定を目指すにあたり、「会社のインナーマッスルを鍛えることに重点を置いた」と話す作本氏。ビジネスモデルのブラッシュアップはもちろん、コーポレート・ガバナンスの強化、自社の認知度を高めるコーポレート・ブランディングに注力し、社風の改革、チャレンジ精神を醸成できる仕組みづくりに取り組んできたという。

作本氏 
「私は、IPOを担うために入社し、東証二部市場変更から東証一部指定変更の責任者を務めるなか、サステナビリティ実現を大きな役割として認識し、財務面でゴーイングコンサーンをどう担保するのかを自身の使命として受け止めてきました。幸い当社の業績は回復基調にあります。市中にマネーが流れているいまこそ、将来の成長投資に振り向けられる“分厚い財務”を築く好機と認識しています。今回の東証一部指定を一つの通過点とし、当面は2022年の新市場区分への移行時にプライム市場に残っていくことを目標に、まずは流通時価総額の向上に向け、企業努力を続けていきます」

機密情報の利活用で、生活者のよりよい生活に貢献していきたい

勝根氏 
「通信技術は5Gに変わりましたが、数年後には6Gになると言われています。来年9月にはデジタル庁が発足することも決定しました。世界中がデータであふれかえる世の中がまもなく訪れます。しかし、足元のIT業界は新型コロナウイルスの影響を受け、マイナス成長が見込まれています。企業によってはIT投資を削減する動きが出てくるでしょう。そうなると、既存のレガシーシステムにしがみついたままの企業やコンサルテーション能力の低い企業は淘汰され、業界再編は加速する、と考えられます。さらには、技術者の大量退職が生じる2025年に向けた準備も必要と感じています。機密情報管理は、もはや社会インフラです。こうした情勢に置かれてもなお、さらなる成長を遂げていくには、機密情報を徹底的に『管理』しながら『利活用』していくことがポイントになると考えます」
その一つの策として、勝根氏は受験ポータルサイト『UCARO』の活用を挙げる。大学と受験生をダイレクトにつなぐ、このサービスは、大学間の垣根を越えて受験のプロセスを共通化し、データを一元管理するプラットフォームである。今後は、情報管理の範囲を拡充し、受験生の高校在学時から大学入学後のデータを一気通貫で管理することで、文部科学省が進める「高大接続改革実行プラン」への対応を視野に入れていくという。

勝根氏
「学習履歴はもとより、部活動の成績、表彰履歴、校外活動など、本人が研鑽を重ねてきた実績や経験を『UCARO』で承認することによって、その人の多面性を際立たせ、より豊かな人生を実現するために活用していただく。そういった未来図を描いています。そのためには、親和性のある他社のサービスとの連携も視野に、さまざまな価値を掛け合わせ、新しい価値を創っていきます」

「データビジネスによる新たな価値の創出」の実現に向けて

目指す未来と様変わりする業界地図を見比べながら、ODKソリューションズは、中期経営計画の柱として掲げる「データビジネスによる新たな価値の創出」を、どのように実現していくのか。最後は勝根氏に、その展望を語っていただいた。
勝根氏
「『各事業領域における提供サービスの拡充』『保有するデータ量・種類の拡大』を基本としつつ、まずは『UCARO』を事業横断型のデータプラットフォームとして確立していくことを目指します。その実現プランとして、(1)アライアンスとM&Aの推進、(2)『UCARO』による多面サービスの拡充、(3)事業横断サービスの開発――を挙げています。これらに挑戦し続ける私たちの強い意志は、『ビジネスを、スマートにつなぐ。人生の、ストーリーをつむぐ。』という経営ビジョンに集約されています。ここに目がけて進む姿勢を常態化していきます。

本日、東証一部指定という新しいスタートラインに立つことができました。これを機に、ITの力で、すべての人の人生に喜びをもたらすべく、企業価値のさらなる向上とともに、未来永劫誰もが安心できる企業、社会の信用に足る企業を目指し、いっそう邁進していきます」
58年にわたり培った強みを伸ばしながら、社会インフラの一端を担う責任を果たしていくことは、ODKソリューションズの不変のミッションである。しかし、そこで歩みを止めず、その知見を社会のため、日本の将来のために活かし、生活者の人生をより豊かなものにしていこうとする姿勢は、我々が足を踏み入れようとしている超情報化社会のなか、企業が目指すべきあり方の一つを表していると言えるだろう。
2020年12月29日 東証一部上場セレモニーにて

PROFILE

  • 株式会社ODKソリューションズ 代表取締役社長 勝根秀和

    株式会社ODKソリューションズ 代表取締役社長 勝根秀和 1987年の入社以来、教育部門を中心に幅広い実務を担当。取締役就任後は、(株)学研ホールディングスをはじめ、数々の業務・資本提携を実現。「大学入試 Web 出願」の拡販、受験ポータルサイト「UCARO」提供開始にあたっては陣頭指揮をとった。

  • 株式会社ODKソリューションズ 統括経営管理担当 取締役 作本宜之

    株式会社ODKソリューションズ 統括経営管理担当 取締役 作本宜之 2006年の入社以来、IPO関連業務、資本提携関連業務に従事。経営戦略やコーポレート・ガバナンスをはじめとした経営基盤整備も担う。

2020年12月29日

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