田中
前編では鉢嶺さんのお考えをもとに、デジタルシフトに重要な視点を話題にしてきました。企業がデジタルシフトを遂げていくには、スタートアップ企業のように新鮮かつフレキシビリティさを保ち、スタートアップ企業のようなスピーディーさを取り戻す。さらには成功体験にとらわれない精神で挑むなど、必要な要素は数多くありますが、すでにオプトグループは、これらを網羅するかのようにクライアントの事業のデジタルシフトのみならず、戦略の構築、それにともなう組織の構築までさまざまな事例をお持ちです。そして、これからさらに手がけようとしているのは、ビジョン、ミッション、バリュー、といった企業DNAの刷新ではないかと思っているのですが、いかがでしょうか。
鉢嶺 おっしゃるとおり、ビジョン、ミッション、バリューを新たにするところまでオプトグループにお任せいただきたいと考えています。なぜなら、これらを変えないことには、デジタルシフトはうまくいかないからです。デジタルシフトは、イノベーションですから。この領域にまでぜひ携わりたいですね。
田中 とはいえ、いきなり抜本的に変えるのは難しいですよね。典型的な企業がデジタルシフトを遂げていくにあたり、まずは何から着手するとよいと考えていますか。
鉢嶺 トップが本気になることからではないでしょうか。振り返ると、僕たちは2008年に株式会社電通と提携し、同社のデジタルシフトを手がけてきました。それ以外にも、カルチュア・コンビニエンス・クラブ社、日本経済新聞社等のデジタルシフトに挑戦してきた実体験があります。これらが僕らにとってのデジタルシフトのノウハウの原点になっていて、さらにはどの会社にも共通する五つの障壁も見つけています。前半にお話しした「デジタル人材の育成」もそのうちの一つですが、もう一つお話しすると、「既存組織の反対」もネックです。たとえば、小売店がEコマースサイトを立ち上げようとすると、既存組織から反対の声が挙がるというシーンは思い浮かべやすいでしょう。Eコマースが立ち上がるまでは赤字が続くし、リソースも割かれます。本業からしてみれば何のプラスもありません。ですから、話が出た時点でつぶされる場合がほとんどなのですが、それでも推進していくにはトップの本気からくる判断に任せるしかありません。
デジタルに移行しないと会社は変われないし、生き残ることもできない。この事実を自分ごととして、いかに認識できるのか、重要と捉えられるのか。その覚悟をトップが持つことからデジタルシフトは始動していくと考えます。