――前編ではデジタルシフトを推進していくうえで、社内の意思統一を図る大切さについて教えていただきました。店舗もデジタルも協力し合う仕組みが必要だという感覚が藤原さんにあるのは、ご自身が店舗の販売出身で、現場の苦労がわかるということも大きいでしょうか?
それはありますね。私は1999年にコメ兵に新卒で入社して、最初はジュエリー事業部にいました。販売もやったし、鑑定の勉強もしました。自分たちの店舗に対して、現場の人たちがものすごく強い思い入れを持っているということはわかっています。その一方、2000年にECサイトをゼロから立ち上げたくらいなので、デジタルでお客様とコミュニケーションをしていくことの大切さもわかる。
結局、なぜデジタルを活用しなければならないかというと、単純にお客様との接点を増やせるからなんです。仮にお客様が平均で年2回来店するとして、そこにデジタルの接触を加えることができたら、もっと深く仲良くなれる機会を増やせるわけです。
だから我々は、ECサイトで毎日新しい商品を出すということをやっています。正月にも更新しています。お店は休むことがあっても、ECサイトを更新し続けることで、お客様が商品に触れる機会、コメ兵に触れる機会を増やす。それが結果的に、商品の購入にもつながっていくと思ってやっています。
――「トケイ通信」や「ブランドブログ」のようなオウンドメディアを運営されているのも、顧客接点を増やす戦略の一環ということでしょうか?
そうです。「トケイ通信」に関して言えば、どの会社にも、その道のプロフェッショナルはいますよね。彼らの知識はお客様にとってすごく役に立つ情報だし、尊敬されるきっかけにもなると思います。でも、会社で日々の業務に励んでいる側からしたら、その知識は仕事をしていくうえで当たり前に身につけたものに過ぎない。特別な価値があるとわかっていないんです。
彼らの知識をお客様とのコミュニケーションに活かすことができたら、絶対にいいと思っていたんですけど、基本的には1対1の接客のときくらいしか披露できる機会がなかったんですよね。でもインターネットの記事というかたちであれば、広く発信することができます。
だから、実際に「トケイ通信」を見ていただければわかると思うんですけど、開始当初からずっと、時計鑑定士の人が自分で書いている記事しか載せてないんですよ。店舗の接客と同じ言葉でコミュニケーションすることが重要だと思ったので、あえて素人の文章をそのまま載せています。