そんな「ランチ難民」の悩みを解消すべく、パナソニック アプライアンス社は、昨年10月にオフィスの置き弁プロジェクト「Bento @ your office」を立ち上げた。オフィスに据え置きされている冷蔵庫に後付けするだけで導入できるという手軽さに加え、スマートロック機能とスマートペイメント機能、さらには冷蔵庫の稼働モニタリング機能を兼ね備える彼らのプロダクトは、まさにIoT時代の「オフィス置き弁」といえる。
“自分や家族が抱えている困りごとすら解決できないのであれば、社会課題を解決することなどできない”。そんな真鍋さんの志は、GCカタパルトのメンバー全員に共通しているものなのかもしれない。真鍋さんのビジョンに賛同し、Bento @ your officeのメンバーとなった事業企画部ビジネスインキュベーション課の井上さんも、どうやら個人的な動機をモチベーションに変えたクチらしい。
井上「私の家庭は共働きなのですが、昨年の7月に妻が単身赴任することになって以来、食生活が狂いに狂ってしまいました。これまではふたりで分担して自炊をしていたのですが、ひとりで暮らすようになると、わざわざ作るのが面倒でついコンビニ弁当に頼ってしまいます。おかげで信じられないくらい体重が増えてしまいました……。できるだけ早くBento @ your officeを実用化して、ヘルシーでおいしいお弁当を夕食用に持ち帰りたいですね(笑)」
プロジェクトメインメンバーのうちの1人の藪野寛之さん
パーソナライズされた食の提供を目指して
Bento @ your officeは、単なる置き弁提供装置にとどまらない。IoTによって顧客のライフログを取得し、よりパーソナライズされた食生活を提供するためのプラットフォームとして展開していく予定だ。
真鍋「Bento @ your officeは、いわば顧客とのタッチポイントです。個々人の食事のログを蓄積することで、ゆくゆくは一人ひとりにパーソナライズされた食の提案が可能となるでしょう。たとえば子持ちの世帯であれば、朝食と夕食に比べると外食の割合が多い昼食のログは、十分に収集できていない現状があります。Bento @ your officeによって、オフィスや学校で家族の食生活を記録できるようになれば、そのような課題も解決されていくはずです」
顧客の食生活を包括するプラットフォームとしてBento @ your officeを展開していくためには、スマートペイメント機能や専用アプリをより簡易で普段使いしやすいものにブラッシュアップしていく必要がある。プロジェクトメンバーのひとり、ライセンス部企画課の藪野寛之さんは、これらのソフト部分にも確かな手応えを感じているようだ。
現時点の製品は、まだプロトタイプだが、3月より本格的な実証実験を開始し、同月開催される、世界的規模の大型展示会サウス・バイ・サウス・ウエスト(SXSW)への出展も決定しているという「Bento @ your office」。まずは社会にその価値を問うことで、サービスのさらなるブラッシュアップを目指す。