シニア社員がウェブサイトのコンサルとして大活躍。ウェブコンサル会社がシニア雇用に大胆に踏み切ったワケ

ペンシルはダイレクトマーケティングのウェブコンサルティングで多数の大手企業をクライアントに持ち、PDCAサイクルを一括して行う結果重視の「研究開発型」コンサルティングで確かな実績を残し続けている。1995年創業の同社は創業20周年を機にダイバーシティ経営を推進するプロジェクトを立ち上げ、多様性のある人材が生き生きと働ける環境整備に積極的に取り組んでいる。その一端となるのがアクティブシニアの積極雇用だ。ここでは同社の倉橋美佳社長と、実際にこの取り組みで採用された金森洋介さんと森村茂美さんにインタビュー。アクティブシニアの雇用がウェブコンサルティングの分野、ひいては企業経営にもたらす効果などについて話を伺った。

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もうコンサルの知恵だけでは足りない、あらゆる価値観を持つユーザーの声が知恵となる

同社がアクティブシニア雇用を積極的に推し進める根本には、3年前から始めたダイバーシティ経営の推進プロジェクトがある。まずは倉橋社長にこのプロジェクトを始めたきっかけを伺った。

倉橋氏「ペンシルは社員の半分が女性の会社なので、もともと女性活用やテレワークの推進などには積極的でした。ただ、創業から20年を迎えてこれから先を考えた時に、もっと自分たちができることを増やしていこうと思って始めたのがダイバーシティ経営のきっかけでした」

そして、そうした多様性ある人材を雇用・活用していく背景には、ますます成長するEC市場に対する“時代からの要請”もあったと倉橋社長は語る。

倉橋氏「市場が大きくなるにつれ、『こうすれば上手くいく』とか『これなら商品が売れます』とこれまでやってきたやり方だけでは通用しなくなっていて、これからはコンサルタントの知恵だけではなく、新しい発想や考え方を取り入れていく必要があると感じていました。実際に様々な生活者の方々から意見を集めてみると参考になることがたくさんあり、主婦やシニアの方、LGBT、チャレンジドの方々など、様々な価値観を持つ方々が社内にいることは企業として本当に心強い味方になっています」

シニアを積極雇用。シニアが本当に使いやすいサイトは、シニアにしかアドバイスできない

超高齢化社会に突入している今の日本で、インターネットを利用する高齢者の数は確実に増えている。「我々のお客様にも50代以上の中高齢者に向けた商品を扱う企業が増えてきている」と倉橋社長も実感しているという。ECサイトなどのコンサルティングを行う上では、商品の知識はもちろん、わかりやすいユーザビリティーを構築するためにもシニアの声を聞くことは欠かせない。

倉橋氏「お客様の商品を売るために、コンサルタントはその商品が何に役立つのかを十分に知っていなくてはなりません。でもペンシルは社員の平均年齢が比較的若い会社で、中高年者の生活の上での悩みを20・30代のコンサルタントが本当にしっかり理解できるかといえば、なかなかそうはいきませんよね。そこでプロ視点で“気づき”をくれる人が社内の身近な場所にいるということで、若い世代では抜け落ちそうな部分を拾ってくれる存在になっています」

そこでペンシルでは、福岡の天神と長崎の壱岐に設けた「PIC(ペンシル・イノベーション・セントラル)」というオフィスでアクティブシニアを積極的に採用。彼らは、「SFO(シニアフレンドリー最適化)」サービスの調査員としてシニア向けサイトの開発や改善に従事する。SFOでは「Findability(見つけやすさ)」「Functionality(見やすさ、使いやすさ)」「Reliability(インターネットへの信頼性)」「Offline(オフライン連携、デバイス最適化)」の4点を柱に明確なチェック項目を設けてサイト評価に取組んでいる。

走り出しの取り組みゆえ業務としての実績作りはまだこれからだが、シニア視点の提案を持ち込んだ既存のクライアントからも上々の反響を得ているという。

シニアにウェブコンサルが本当にできるのか、シニア活躍の裏側とは?

今回、ともに60代前半で採用され、PIC天神で働く金森洋介さんとPIC壱岐で働く森村茂美さんにインタビュー。それぞれ、どんな想いや目標を持って働いているのか伺った。

金森氏「私は前職でもウェブ関係に携わっていましたが、最近のサイトでまず課題と感じるのは、高齢者が感じるインターネット利用への不安です。『使ったことがないから怖い』とか、『クレジットカードで決済しても本当に大丈夫か』といったことですね。また、最近のサイトは動画やアニメーションなどが盛り込まれてきていますが、高齢者はそのスピード感についていけず、本当に探したいものが見つからないという声もあります。そうしたことへの解決にどんなリコメンドを送れるかがポイントになると思っています」

森村氏「私は金森さんのようにウェブを使いこなしていなかったですし、スキルアップしたいなという思いで入社した人間なので、自分自身が今まさに勉強をさせてもらっているような状況です。ただ、ウェブに遠い人間だからこそ、アドバイスできることがあると思いながら業務に取り組んでいます」

金森氏「SFOを担うには、同年代のシニアであってもITリテラシーには大きな格差があることを理解するのも大切です。これから様々なバックグラウンドを持つシニアの方々と手を取り合い、意見をミックスしていきたいです」

それぞれ、これまでの経験をふまえた上で、シニアの自分がどんなアドバイスをできるかということを考えながら業務に取り組んでいる。これらのリアルユーザーの声こそが、コンサル会社としては何よりも財産になっているようだ。

シニアで働くのは大変?新たな働き方にも注目

2人は同社で「メイト」と呼ばれるパートタイム採用での雇用だが、金森さんは週4日フルタイム、森村さんは週5日フルタイムと、自分の生活に合わせた働き方で生き生きと勤務している。実際にペンシルで働いてみての感想を伺った。

金森氏「親の介護があるという条件があることを理解してもらった上で採用してもらえたのは非常に嬉しかったです。あと、入社してみて、自由な風土の中で新しいことに挑戦できるという環境はとても働きやすく感じています」

森村氏「壱岐は誰に話しても『ウェブコンサルって何?』ってなるよう土地柄なので、まったく違う業種での新しい考え方の会社で働くことに初めは驚きばかりでした。でも慣れてみるととても働きやすい環境で、まだ4名ほどの小さなチームですが、若い社員の方々と毎日楽しく働いています」

雇用する側もされる側もWin-Winの関係で輝く

大手企業での管理職経験のある金森さんを講師として社内研修会を開くなど、アクティブシニアの経験値を若い企業に還元するような機会も設けているというペンシル。「今では60代の3人に1人がLINEを使っていると言われていて、考え方も発想もとても若い。そうした方々の声をもっと業務に活かしたい」と倉橋社長は語り、今後のさらなるシニア活用に意欲を見せる。

倉橋氏「コンサルタントという職種は、弊社では『プロデューサー』と呼んでいるのですが、私自身も会社のリーダーとしてプロデューサー的な存在でありたいと思っています。会社が持っている『人』という資源を魅力的に見せる、または魅力的に活躍してもらうためにはプロデューサーの力量が重要。経営者というのはその手腕を試されている立場ですね」

インタビューの最後に、人材活用への思いをそのように語ってくれた倉橋社長。SFOに関わる2人から聞こえてきたのも「新しいチャレンジ」や「仕事のやりがい」といった前向きな声ばかりだ。ペンシルが素晴らしいのは、世間で叫ばれている社会のダイバーシティの波にただ乗るのではなく、その多様性を「財産」として自社のサービスに還元させ、雇用する側もされる側も輝けるWin-Winの関係を築いているところにある。それはクライアント側にとっても、上辺だけではないリアルな意見をもとに意見や助言をもらえるというコンサルタント企業としての信頼にも繋がるものといえるだろう。

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