愛媛県の新たなPR戦略、「まじめえひめプロジェクト」とは
あなたは「愛媛県といえば?」と聞かれてすぐに答えることができるだろうか?
愛媛県には、道後温泉・しまなみ海道・高級かんきつ・今治タオルなど、実は観光名所や名産品がとても多い。しかし、それらと愛媛県を結び付けられる人はあまりいないかもしれない。
愛媛県は素晴らしい観光名所や名産品を保有しているにも関わらず、それらが「愛媛県」と結びつけられず、イメージしてもらえていないことに長年悩みを抱えていた。そこで今回、新たなPR戦略として『まじめえひめプロジェクト』を発表。2019年4月9日に都内で行われた記者発表会では、愛媛県の中村時広知事より、統一コンセプトの発表や新部署の発足、人気アニメとのコラボレーション企画の紹介など、盛り沢山な内容が発表された。
「まじめ」すぎる、かつ「意外性」に富んだその内容とはどのようなものなのだろうか?
愛媛県民は「まじめ」なのでは?というところから着想
プロジェクト名はずばり、『まじめえひめ』。その目的は、お遍路文化によるおもてなしの心や、他県ではあまり見慣れない自転車通勤時のヘルメット着用率の高さなど、「真心がある」「正直で嘘がない」「誠実である」という愛媛県の県民性としてのポジティブな一面である「まじめ」さをフックに、情報の訴求力を高め、地域の活性化につなげるというものだ。
記者発表会に登壇した中村知事は「よく愛知県知事、と間違われることもあります」と苦笑しつつ、「愛媛県にはこれだけいいものが揃っているのにも関わらず間違われたり、「愛媛のものだ」と知ってもらえていなかったりするのは情報発信に問題があるのでは?と仮説を立て、統一コンセプトに基づく情報発信が必要なのではないかという思いから、今回のプロジェクトに至りました」と語る。認知度アップ、知名度向上を目指すための手法として、愛媛らしく、かつわかりやすい統一コンセプトがあればと考えたという。
そこで考案されたのが「愛媛県民は他県の人たちにくらべ、まじめなのではないか」ということ。「まじめ」という言葉だけを聞くと、「頑固そう」「堅苦しい」といったイメージがあるかもしれない。しかし、敢えてその「まじめ」という良さをポジティブにアピールしていくことこそが愛媛県の認知度アップにつながるのではないかという狙いもあったという。さらに、愛媛県の名物である『ポンジュース』の存在も「まじめ」というキーワードを後押しした。『ポンジュース』は、「愛媛のまじめなジュースです」のキャッチコピーでもおなじみ。それゆえ、県民にも浸透しやすいのではないかと考えたという。
そこで、『まじめえひめプロジェクト』と題し、PR専属部隊として『まじめ課』を設置。愛媛県のイメージアップキャラクター『みきゃん』が、『まじめ課長』に就任し、まじめ係の職員2名と一緒にコンセプトの浸透にむけ、さまざまなプロモーションを展開する。今回は、『まじめ課』の『まじめ係長』越智一浩さん、『まじめ係員』河原志帆子さんに話を聞いた。
「まじめえひめプロジェクト」とは?
――『まじめえひめ』という統一コンセプトを掲げることによって、観光・物産・移住促進・企業誘致などの分野においてどのような影響が見込めるとお考えでしょうか。
「『まじめ』は、「嘘がない」とか「誠実である」という意味の言葉です。例えば、観光であれば「温かいおもてなし」、物産品であれば「手間ひまかけて、丁寧につくったもの」、さらに移住であれば「親切にお迎えしますよ」など、いろいろなものをポジティブに表現することができる言葉だと思います」
――このプロジェクトを、県民にどう活用してほしいですか。
「まずは県民の皆様に知ってもらわなければいけないと思っています。県全体で「愛媛=まじめ」なんだ、ということを浸透させたいですね。
県民の皆さんは、自分たちが「まじめ」だという自覚はあるものの、「堅苦しい」「頑固」「細かい」などのイメージが先行するためか、自分たちが「まじめ」であることを表に出していない人が多いように思います。しかしそうではなくて、これからはポジティブな意味で、みんなでやっていきましょう、と「まじめ」というキーワードを愛媛県全体に広めていくことができたら嬉しいですね」
――愛媛県イメージアップキャラクター「みきゃん」を新部署の担当課長に任命された意図をお聞かせください。
「実は「みきゃん」は『PR特命副知事』という肩書きがあり、今回、『まじめ課長』を兼務してもらうことにしました。この兼務という体制は、県庁内ではよくあることなのですが、『まじめえひめ』プロジェクトをより対外的にアピールするためには「みきゃん」の存在が欠かせないと考えました。「みきゃん」にとっても「まじめえひめ」にとっても双方に良い影響力をもたらすと思います」
アニメ「進撃の巨人」とのコラボレーションについて
今回の記者発表会では、『まじめえひめ』プロジェクトの構想と共に、コラボレーション企画第一弾として、アニメ『進撃の巨人』とのコラボ企画も発表された。中村知事は記者発表会の中で「進撃の巨人といえば、服も着ていないし、暴れ放題というイメージがあると思います。しかしそんな進撃の巨人ですら、愛媛県に来るとスーツを着てメガネをかけ、まじめになってしまうという面白さを表現しました」と、その意表をついた設定を発表。大きな話題を呼んだ。
――大人気アニメ「進撃の巨人」とコラボレーションする狙いについて教えて頂けますか。
「『進撃の巨人』とのコラボレーションを第一弾として発表させてもらった理由は、まず4月からアニメの続編がはじまるというタイミングで話題性があったこと、そして巨人がスーツを着るという意外性を狙ったことです。今年はマンガの連載10周年ということもあり、「進撃の巨人」さんも面白がってくれたのはとてもありがたかったですね。今後はアニメや漫画に限らず、「まじめ×話題性」「まじめ×意外性」という軸でさまざまなブランドなどともコラボをしていきたいと考えています」
「まじめえひめ」の今後の取り組みとは
――今後愛媛県として力を入れていきたい取り組みを教えてください。
「愛媛から発信する情報を一目で愛媛のものとわかってもらうため、今回のプロジェクトをスタートさせました。『まじめ』というコンセプト、そして『まじめえひめ』という言葉そのものを、皆さんに知ってもらう必要があります。そのために、県民の方にも参加してもらえる「県民参加型インタビュー動画」の制作や、若者を中心に情報拡散をはかるためのSNSやスマホアプリを活用したプロモーションの実施、さらには愛媛県内でも盛り上がりを作るための県内向けのPR活動も継続的に実施していこうと考えています。
『まじめえひめ』のこと、そしてこのロゴのことを知ってもらうためのプロモーションを『まじめ課』として積極的に仕掛けていこうと考えています!」
記者発表会内でも中村知事は自身について、「やるとなったら計画的にコツコツやるタイプ。私は現在59歳ですが、今でも毎年フルマラソンにチャレンジしています。2か月かけて準備をするのですが、完走するためにはどのようなトレーニングをすべきか、5時起きで走らなければ、などすごく真剣に考えます」と、やはり「まじめ」な印象であった。
さらに、コラボレーションしている「進撃の巨人」についても「マンガを18巻まではスマホにダウンロードしたのですが……続きはまだ読めていないんです。最初は正直、なんだこれは?と思いましたが、読み進めるうちにストーリーや人間関係にどんどん引き込まれていきました」と記者に対し「まじめ」すぎる正直な回答をしてしまう一面も。
そんな知事と「まじめ課」のメンバーがどんどんチャレンジしていく「まじめえひめ」プロジェクト。ぜひ愛媛県民の「まじめ」な一面に触れてみてはいかがだろうか。
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