店舗の予約・顧客管理の課題解消 予約台帳アプリ「レストランボード」
近年、航空券や宿泊施設を「ネット予約」することは、あたりまえのものとなってきた。この、電話や窓口での予約からネットでの予約の波は、美容院やアクティビティなどさまざまな業種に広がってきている。特に、飲食店のネット予約の増加は顕著となっており、2015年度は昨対約35%増加している。ここまで拡大している理由のひとつは、ネット予約は消費者とお店、双方にとってメリットを享受できる仕組みであるからだ。
消費者からすると、「今から4人で行けるお店を探す」場合、わざわざお店の営業時間に合わせて、仕事中であれば声を潜めながら、何件も電話をかけて空席を確認するそのプロセスが不要になり、スマホで24時間好きな時に好きな場所で予約できるとても便利な機能である。
一方で、飲食店にとっては、紙の台帳を継続して利用している所も多い。ネット予約を管理するうえで、紙をベースとすると転記の煩雑さや、店舗のオペレーションで不安を抱いている飲食店経営者や店長も多いのが事実だ。それらの不安を解消するものとして、昨今注目を集めているのが予約台帳アプリ「レストランボード」である。
株式会社リクルートライフスタイルのネットビジネス本部 執行役員の山口順通さんに、同社が開発・運営する「レストランボード」を活用することによって、単に業務の効率化だけではない、店舗が得られる効果について伺った。
リクルートライフスタイル ネットビジネス本部 執行役員 山口順通さん
1:0円から利用できる予約台帳アプリ「レストランボード」
――まず、「レストランボード」についてお伺いさせてください
「0円からカンタンに利用できる、飲食店向けの予約台帳アプリです。従来、紙の台帳や別々のデータとして管理していた、予約・空席管理や顧客情報を一元管理できます。」
――予約台帳アプリを利用するメリットは何でしょうか
「ひとつは予約管理のミスをなくす、という利点があります。これまでの紙での予約管理では、ネット予約の書き写しのミスや、変更を何度も上書きするうちに文字が判読できなくなる…といった、単純ですが、お客様に対する影響の大きい問題がありました。予約台帳アプリの場合、ネット予約は自動的に反映され書き写す必要がなくなり、変更前と変更後の情報をわかりやすく整理することができます。 もうひとつは、データを蓄積することで、接客の質の向上や、集客施策に活用していける点です。別々に存在していた予約履歴やお客様の好みなどを一元的に管理し、すぐに閲覧できます。そうすることで、今まで属人的に管理されていたお客様との繋がりが明確化される事により会話のきっかけが増えたり、再来店促進のメッセージが送れるようになります。」(山口さん)
――どの様な飲食店で利用されているのでしょうか
「十数席の小規模のお店から、100席を超える大規模な店舗まで、幅広いジャンルの飲食店でご利用いただいております。また、複数店舗を統括するエリアマネージャーや管理部門の方には、各店舗の予約状況をリアルタイムで把握する目的でもご利用いただいています。予約時に満席の際は近隣の空席のある店舗をすぐにご案内を差し上げることや、シフトの割り振りや集客戦略にも活用していただいています。」(山口さん)
――利用するためには何が必要ですか
「基本的に、『レストランボード』はiPadにアプリをインストールしてご利用いただいていますが、予約の確認・登録はスマートフォンやパソコンからでも可能です。システムの導入にあたって、いまお持ちの端末をできる限り活用いただくことで、先行投資を抑えることができます。」(山口さん)
――特に、飲食店で使えるサービスにするために、こだわっている点は何ですか
「ひとつは、使い勝手の良い操作性です。業務が非常に膨大で、スタッフの入れ替わりも多い飲食店のシステムである以上、店長から新人のアルバイトまで、誰でも簡単に使える事が重要です。たとえば電話の予約の場合、画面にある項目を順に入力するだけで完了できます。その結果、必要事項の聞き漏らしやメモの紛失を防ぐことができます。さらに、ネット予約の場合は自動的に「レストランボード」へ連携されるので、そもそも管理画面で予約を手入力の転記をするといった手間がなくなります。」(山口さん)
実際に「レストランボード」を操作させてもらったが、シンプルでわかりやすいデザインとなっており、使い方の説明がなくても自由に入力・操作する事ができた。管理においても、予約できる日程や座席などが一目で確認することができ、革新的なアプリだと感じた。たとえITに関して自信がない飲食店であっても、この直感的なデザイン設計ならスムーズに操作することができるはずだ。
2:顧客情報を蓄積し、接客力向上へ活かす
「レストランボード」では、単に予約を管理するだけでなく、顧客情報を蓄積していくことで、これまでの紙の予約台帳では難しかった、データを活かした接客力の向上を可能にしている。
――顧客情報はどのように蓄積されていくのでしょうか
「予約管理やテーブル管理を通して、お客さまの名前、電話番号、メールアドレス、頻度などの情報が蓄積されていきます。また、予約時のリクエストや接客を通してわかった、食べ物の好みやアレルギー情報、誕生日やイベントなど記念日の情報などを記録することができます。」(山口さん)
――たまった情報をどのように活用できるのでしょうか
「たとえば、再来店の予約を受けた際、電話番号を入力するだけでお客さまの来店履歴が表示されるので、“いつも、ありがとうございます”という一言をかけることや、事前に好みを把握することで、仕入れにも役立てることができます。さらに、再来店時にお誕生日のサプライズや、お客様に合ったメニューのレコメンドができるなど、お客様との距離を縮める接客に活用していただけます。」(山口さん)
――よく行く飲食店に電話して「いつもありがとうございます」と言われたらちょっと嬉しいですね。飲食店の利用者としても、サービスが良い飲食店が増えると嬉しいです。
「そうですね。実際に、レストランボードをご利用いただいている渋谷の『道玄坂バル克ッHANARE』様からは、「台帳に記録した情報を確認してお客様と会話がはずむようになった」という声をいただいております。開発者冥利につきる、ありがたいお話です。」(山口さん)
――ところで、リクルートでは、0円でカンタンに使えるPOSレジアプリ「Airレジ」を提供されています。レストランボードとはどのように連携できるのでしょうか
「レストランボードのテーブル管理をタップすると、直接Airレジに遷移して、会計を行うことができます。また、Airレジの会計情報がレストランボードの顧客管理に蓄積されるため、さらに詳しいお客様の情報を記録することができます。」(山口さん)
――個別のお客様ごとに、注文履歴を確認する事が出来るのですか
「はい。“Airレジ”と連携すると、過去の注文内容が分かります。例えば、好みがはっきりする“ワイン・日本酒”などの過去のオーダーから、お客様の好みに合いそう銘柄をご提案するなど、接客の質を高めていく事ができます。」(山口さん)
さらに、他の予約台帳をしのぐ、レストランボードの魅力は、データの蓄積と再来店の促進を図るオプション機能(有料)を搭載している点である。
――オプション機能はどの様なものになりますか
「一つは、『メッセージ配信機能』です。レストランボードに蓄積している顧客情報を活用して、誕生日メッセージや、来店後のお礼の連絡、クーポンなどのキャンペーン情報をメールで送信できます。
そして、配信したメッセージからお店の詳細情報の発信や、ネット予約を可能にするのが、『ホームページの作成機能』です。お店独自のホームページを約100種類のテンプレートからブログのような感覚で簡単に作成できます。スマホやパソコンから、ネット予約をカンタンに受け付けることができるようになります。」
――日々の業務に忙しい飲食店関係者からすると、お店のサイトがカンタンにつくれて、さらにネット予約を増やすことで、電話予約の手間を減らしていけることは嬉しいですよね。
「さらに、お店のホームページをYahoo!やGoogleなどの検索サイトから探しやすくするのが『ネット広告配信機能』です。従来だと、個別に広告予算を投下しカスタマイズしたり、クリック単価や出稿額の調整などが必要だったりと、専門の知識がないと難しい分野でした。これがカンタンな設定で、最適化された広告を出稿することができるようになっています。」(山口さん)
3:有料サービス開始1ヶ月で、利用店舗数1万件突破
――現状、何店舗で利用されているのでしょうか? 「オプション機能(有料契約)に限ると、1月時点で、利用店舗数は1万件を超えています。これは、先ほどのオプション機能である、メッセージ機能やホームページ作成機能など、月額1万8000円でご利用いただいている店舗数になります。」(山口さん)
――今後はどの様なアップデートをしていく予定ですか
「まずは予約・顧客管理のベースとなる機能を充実させていきたいと考えています。飲食店の課題を聞き、中小規模の店舗でもITを活用できるようなサービスを開発して、経営支援をしていきたいと考えています。」(山口さん)
――最後に何かメッセージはありますでしょうか?
「リクルートは、ホットペッパーグルメをはじめ多くのレストラン向けのソリューションを提供しています。ネット予約については、まだまだ成長期でして紙での台帳のままの方が楽と考えている方もいらっしゃいます。しかし、そうしたお客様ほど、実際にレストランボードを使ってみて感心される事が多いです。
レストランボード等を使用してもらう事により、実際の調理やお客様とのコミュニケーションにより集中していただける環境づくりができます。そうした、公共的なミッションとしての意味合いも“レストランボード”にはあると考えています。」(山口さん)
――ありがとうございました
文・写真:佐藤大介
※参考文献:
http://www.meti.go.jp/press/2016/06/20160614001/20160614001-2.pdf
リクルートライフスタイル