2019年9月13日

スーツを「着るだけ」で働きたい人の未来を支援できるプロジェクト“Wear For The Future”とは

株式会社レナウン

PROFILE

  • 認定NPO法人育て上げネット 理事長・工藤氏

    認定NPO法人育て上げネット 理事長・工藤氏 1977年、東京生まれ。米ベルビュー・コミュニティー・カレッジ卒業。2001年に育て上げネットを設立。2004年にNPO法人化し、理事長に就任。金沢工業大学客員教授、東洋大学非常勤講師。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員、「一億総活躍国民会議」委員等歴任。著書に『無業社会 働くことができない若者たちの未来』(共著・朝日新書)など

PROFILE

  • 株式会社レナウン UX事業部・課長・越田氏

    株式会社レナウン UX事業部・課長・越田氏 1978年、京都生まれ。他社アパレルにて販売スタッフを経験後、2004年に株式会社レナウン入社。入社後は営業、ディストリビューター、生産、マーチャンダイザーなど複数の職種を担当し、百貨店アパレル事業の一連の流れを経験。2017年より『着ルダケ』開発担当に着任。2019年より現職。サービスの構築から運営、他社サービスとのアライアンス提携など、事業全体のマネジメントを担当。

アパレル製品の販売などで知られる株式会社レナウンの月額制・ビジネスウェアトータルサポートサービス『着ルダケ』が、認定NPO法人育て上げネットとタッグを組んだ“Wear For The Future”というプロジェクトを始動した。これは、月額制のサブスプリクションサービスの利用が働きたい人のスーツに関するサポートに繋がるというもので、シンプルに言うならば「スーツを着るだけで働きたい人の未来を支援できる」ということ。
株式会社レナウンのUX事業部・課長・越田氏、認定NPO法人育て上げネットの理事長・工藤氏に、今回の活動についてお話を伺った。

ごく普通の民間の塾が駆け込み寺に。社会にとって非常に有意義な活動をしていた自宅のあり方が活動のスタートライン

――育て上げネットで取り組んでいる支援活動についてお聞かせ下さい。若者を対象とした活動とのことですが、活動の詳細や設立のきっかけなどを伺えますか。

工藤氏 
両親が私塾を経営していたのですが、血の繋がらないお兄さんお姉さんたちが30人ぐらい一緒に住んで、学校に通ったり仕事に行ったりしていました。彼らは障害を持っていたり、少年院から出てきたとか、不登校だったりという人々でした。職員も一緒に暮らしていましたが、NPOもない時代だったので、今ほどの処遇ではありませんでした。職員たちは結婚や出産をされると、そのままでは食べていけずに泣きながら辞めて行く、という姿を見て、何かもやもやするものを感じていました。

アメリカの大学に留学していた時に、イギリスやドイツの若者の支援活動が非常に進んでいるということで現地まで見学に行ったんです。大きな施設で、たくさんの若い人たちが一緒に住んで訓練を受けていました。そこで誇らしげに話されたことが二つあります。ひとつは、『私たちは24時間365日、この若者たちを支えながら社会的な自立を応援している』ということです。それを聞いた時に『僕の家じゃん』と思いました。もうひとつは、『私たちの活動は社会的な投資である』ということです。『自分の時間や情熱や知識や能力、場合によってはお金を問題解決に投じて、うまくいけばリターンがあって社会がよくなるよ』と。また『自分達の生活も豊かになっていいんですよ』とも言われました。

その視察がきっかけで留学をやめて帰国し、2001年に育て上げネットを設立しました。活動を通じて、社会的にさまざまな困難を抱えた若者たちも、きっかけがあれば自立できるということを証明しなきゃいけないと思っています。もう一方で彼らを支えている人たちも、望まない形で退職する、ということはなくさないといけない。社会的な文脈と、事業的な文脈を両立させることを僕自身の役割としてNPO法人化したのが2004年です。 

――それで具体的にはどのような活動を始められたのですか。

工藤氏 
働きたいけれど、なかなか働くことが難しい若者に通う場所とトレーニング、さまざまな機会を提供し、色々経験したうえで目指す業種や業界、働き方があれば応援していく、という活動をしています。学校と職業訓練校の間みたいなイメージです。なぜ人が仕事につけなくなり、関係性が途切れるんだろうということを、一万人ぐらいのデータをとり、支援経験を加えて独自に考察しました。基本的には低所得家庭と低学歴の人がこのような状況に陥るということは政府の調査でも出ています。このような人々は高校であれば全日制普通科よりは定時制や三部制や通信制に多いですね。少年院にも数多く見受けられます。そこで教育事業を始めたり、生きづらさを抱える子どもたちを支える事業も展開しています。

――レナウンとはどういった経緯で繋がったのですか。

工藤氏 
スーツを買えなくて、高校の時のブレザーを使って就活している若者がいるんですよ、ということをブログで書いたらとても反響があり、スーツが1か月で4000着ぐらい送られてきました。でも、定年退職された方のスーツやモーニングなども入っていたんです。それを整理して同じような活動をしているNPOの方々と分けましたが、クリーニングや配送コストでお金がなくなりました。それ以降は、企業に社員さんのスーツを頂けませんかとお願いして、細々と回していたんですが、人によっては体型が違いますし、スーツの需要が増えてきていることを改めて社会に発信したいなと思って原稿を書いたところ、それを読んで下さった越田さんからご連絡を頂きました。

レナウン『着ルダケ』が始める新プロジェクト“Wear For The Future”~着るだけで誰かの未来に~

――それでは“Wear For The Future”というプロジェクトについて、経緯を伺えますか?

越田氏 
『着ルダケ』というサービスはお客様に新品のスーツをご提供し、クリーニングと保管も全て当社が行いますので、お客様は「着るだけ」という月額制のスーツレンタルサービスです。二年間でサービスは終了し、お客様からスーツが返却されるのですが、サービスローンチ当初から、返却されたスーツをどうするかということをずっと考えていました。古着として販売することも考えたんですが、わりと状態のいいスーツが返ってくるんです。スーツとして形や役割を保ったまま着て頂くのが、環境負荷もなく良いと思いスーツが必要な方を探していました。

色々な自治体で就職支援のスーツ募集という記事を見たのですが、個別の公共団体や自治体に小分けにして送るのは難しいですし、手間がコストになって継続できなくなるところが問題でした。そこへ育て上げネットさんが全国的に支援をされていて、窓口としてワンストップで受けて頂けるということを知りまして、お声がけさせて頂きました。就職したいけれど就職活動の準備ができないという方に支援ができれば、と考えたわけです。

――『着ルダケ』のサービスがスタートしたのはいつでしたか?

越田氏 
2018年3月にローンチ、一般ユーザーに向けて大きく募集をかけたのは7月です。

――『着ルダケ』のサービスについてと、“Wear For The Future”というプロジェクトそのものの仕組みについて伺えますか。
越田氏 
打ち合わせをする中で、就活用のスーツなので色は黒だけで良いというご要望を工藤さんから頂きましたが、お客様から返ってきたスーツの中から黒で、しかも使えるものだけをどうやって選んでお届けするかを悩んでいました。その時に株式会社デファクトスタンダードさんの『FASHION CHARITY PROJECT』という取り組みがあって、そこを経由するという方法がありますよ、とお話を頂きました。期間が終了し返品されたスーツを一括して『FASHION CHARITY PROJECT』に送り、その中から黒のスーツを、育て上げネットさんへお送りします。それ以外の色のスーツは『FASHION CHARITY PROJECT』のECサイトを通じて販売していただき、その売り上げを利益として寄付します。こちらとしては選んだり検品したりという手間を省いてスムーズに運営することができます。

工藤氏 
要望みたいなものですが、いいスーツを頂いても自分に合うスーツを選ぶことや着こなしが難しいという若い人も多いです。スーツの着こなし講座、のようなものがあるといいと思います。

越田氏 
では、そういうことも視野に入れていきたいですね。映像化して、育て上げネットさんからリンクで飛べるようにすれば自宅で映像を観ながら学べますから。

社会貢献と事業が噛み合った現実的で理想的なバリューチェーン

――今後、育て上げネットの支援活動をレナウンがサポートして、『着ルダケ』を利用している方が社会支援に参加できるということになりますが、CSRや社会貢献についてのお考えや課題などについてお二人のお考えをお聞きかせください。

越田氏 
今までのCSRの中には企業PRに近いものも多かったと思うんです。でも、社会が変化していく中で、そのようなやり方はどんどん成り立たなくなっていくんじゃないでしょうか。そういう意味では今回の取り組みは、『着ルダケ』のサービスが回っていくほど回収したスーツを定期的にお届けができて、しかもそれが事業として企業のマイナスにもならないし、止まることもない。サスティナブルで、永続的なサービスとしてやっていけるんじゃないかなと思っています。

そして、これをきっかけに社会に出られた方が将来何かを買おうと思った時に、「そういえばレナウンってああいうことやってたな」と、いつかぐるっと回ってファンになって頂ければ、新しい顧客を作り出せるのかなと思います。企業が運営する事業が無理なく回ることで自然と支援活動に繋がるサービスが広がれば、今後、社会におけるCSRの形が変わっていくかもしれないという思いもあります。

単純に「何か社会にいいことをしましょう」ではなくて、きっちりとリターンを見越した上でこちらもやっていて、ビジネスとして当社にもメリットがあって、だから続けていけるというような取り組みを今後も進めていけたらなと思っています。

工藤氏 
企業と連携活動をやってきた中で、今回ほどきれいなビジネスモデルというか、バリューチェーンはみたことがありません。僕らの課題はスーツがないことと、中古スーツとはいえクリーニングして渡したいということです。ここに「FASHION CHARITY PROJECT」が入ることで、就活用には向かない色柄のスーツを、ECサイトで販売することができます。その売り上げが育て上げネットへの寄付となるので、その中からクリーニング代もまかなうことができます。

今はスーツを着なくてもいいんじゃないかという時代でもありますよね。でも、面接で失礼にならないよう、出来るだけいい状態で臨みたい若者の気持ちも理解できます。また、クリーニングされたスーツで「頑張ってね」って応援されてうまくいった若者が、今度は誰かを、もしくは何かを応援することで社会が回って行くような形にしたいのです。やっていることは若者の支援なんですけど、社会づくりに繋がりゆくものとして期待をしています。

初めて働き始める場合、経済的に余裕ができるまでには時間がかかります。『着ルダケ』というサービスを知って、スーツを買う資金として月々5千円ぐらいでスタートできるサービスがあると知ることで、他のことにお金を回せるようになります。新しい経済の動きがこういうところからつくられたりすると、広がりがあるかなと思います。

■着ルダケの詳細はコチラ
https://kirudake.e-shop.renown.com/
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