ワークマン土屋氏が期待する、中小企業の底力。ニューノーマル時代を生き抜く経営に必要な行動とは?

産業交流展2020実行委員会

ニューノーマル時代の生き残りを懸け、新たなビジネスモデルを検討している企業は多いことだろう。単独で未来を切り開くことはもちろん、ビジネスパートナーの発掘や新たな収益源確保に向けた情報収集、相乗効果の期待できる企業間コラボレーションなど、その打開策はさまざまに考えられる。これら未来につながる技術やノウハウとの出会いを期待できるのが、中小企業による国内最大級のトレードショー「ヴァーチャル産業交流展2020」だ。今回は、この「ヴァーチャル産業交流展2020」にスピーカーとして登壇する、株式会社ワークマン 専務取締役 土屋哲雄氏に、ニューノーマル時代を闘い抜くためのビジネスアイディアの発想と、その心構えについて話を伺った。

経営者が自らビジネスパートナーを探し、取りに行く時代に

――ニューノーマル時代に突入し、企業は従来のビジネスモデルからの方向転換を迫られています。これに取り組むにあたり、企業に求められる行動や思考を土屋さんはどうお考えでしょうか。御社で実践している試みがあれば、あわせてお聞かせください。

土屋氏
「コロナのような未曽有の危機のなか、先を見通す力を発揮できずに思い悩む経営者は増えていることでしょう。こうした環境下では、“現場で考える経営”に重点を置くことが大切になる、と考えます。そこで、当社では店舗で働く社員が日々考えていること、気づいたことに着目し、現場で生まれたビジネスアイディアを実験的に取り入れてみるなど、お客様に近い感覚を大切にした経営を行っているところです。
また、新しいパートナーとの出会いも経営に大きな力をもたらしてくれます。物理的に広い探索がままならない状況ですから、近場にいる優れた企業とお互いに刺激を与えられる関係のもと協業体制が生まれることを期待しています。自社にはない良さや強みをお借りし、それを企業活動に生かし、売上を伸ばしていくことが一つの活路になると思います」
――こうした出会いを生み出し、効率的な経営につなげるためには、どのような行動が経営者に求められていると思われますか。

土屋氏
「経営者の方は、普段からいろいろな会社を紹介されていると思うのですが、受け身でいては、視野は狭まってしまいます。自ら探し、情報を取りに行く姿勢が大切です。私はこれを『追っかけ』だと思っています。オンライン会議システムが普及したおかげで、会議やミーティングを実施するハードルがずいぶん下がりました。私自身、面識の無い方であっても声を掛けられたら気軽に商談の場を設けるようにしています。その際、私だけが社外の知見を聞くのではなく、複数の社員が参加することでさまざまなアイディアが生まれることもあります。そこで、当社では多い時には20人程度の社員に参加してもらい、一緒に話を聞いています。オンラインは移動にかかる時間コストや経済コストがかかりません。こうした利点も踏まえ、これからの時代はオンラインを大いに活用していくべきと考えています」

――「必要な情報を明らかにしてアンテナを立て、出会いに敏感に反応する」「出会いの場を社内で共有する」。いまのお話から、これらの視点もまた厳しい環境下を生き抜くための大きなヒントになると感じました。では、この機会を最大限活用するうえで大切にしたいポイントは、どういうところでしょうか。

土屋氏
「『何か良いものはないか』ではなく、『自分(自社)は何が欲しいのか』の視点が不可欠です。たとえば、当社は、『新しい機能を提案できる会社なのか』を最優先事項として、メーカーの情報を国内外問わず広く集めるようにしています。こうした視点を得るためには、新たに生まれているニーズを読み取り、自社として今、何が必要なのかをしっかり見極めることがポイントになるでしょう」

他社にはない強みを持つ中小企業の可能性

――ワークマンでは、企業規模を問わず多くの企業との取引が盛んだと伺っています。その中でも、中小企業とビジネスを行うメリットはどこにあると考えていますか。

土屋氏
「小回りが利く、さまざまなアイディアを持っている。この2つが大きいです。そのうえで後者は、『他社と比べて、ここだけは負けない』という得意技のあることが重要です。私どもは法人向けの特殊な製品も多く、ロングテール製品も広く取り扱っています。たとえば、高所作業に耐用できて滑り止めが付いているなど、用途が限定されているものほど、その技術に特化した企業とのお付き合いが大切になります。これらは、企業規模で測れるものではありません。当社は東京を含め、各地の中小企業と連携していますが、どの企業もキラリと光るものをお持ちです。こうした独自の強みを求め、日々お取引の幅を広げているところです」
――中小企業との連携で大切にしていることがあれば、お聞かせください。

土屋氏
「先述した内容と重なりますが、テーマを決めて臨むことです。私たちは常日頃から熱心に探していますから、かなり小さな企業の情報まで入ってきます。また、自分はピンと来なくてもスタッフに回したら、実はテーマと非常に近い情報だったということも少なくありません。
お付き合いのあるメーカーにも当社の構想から足元の状況までいろいろとお話ししています。ただ、ここで大切なのが、何がしたいのかを明らかにすることです。『何かいいものはありますか?』ではダメなんですね。ひらめきで取り組んでしまうと拡散につながってしまい、深堀りにはなりません。これは、私の提唱する『しない経営』に反することになります。繰り返しになりますが、本当に必要なものを周りと共有し、自分で探して取りに行くからこそ情報は入ってくるし、探しものが見つかる可能性も高まるのだと考えています」

特徴ある企業との出会いに期待。「ヴァーチャル産業交流展2020」に求めること

ヴァーチャル産業交流展2020がいよいよ1月20日(水)より開幕!超豪華な登壇者によるステージイベント企画目白押し。中小企業600社からなる国内最大級のトレードショーでビジネスチャンスを獲得!

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――2021年1月20日(水)から始まる「ヴァーチャル産業交流展2020」について伺います。まずは、土屋さんがもっとも期待されていることを聞かせてください。

土屋氏
「なんといっても特徴のあるメーカーとの出会いです。自社の探す機能やテーマに適った企業と交流できるとよいですね」

――多くの企業の出展が予定されていますが、各社は強みをどのように訴求すると、マッチングの確度が高まるでしょうか。

土屋氏
「会場で配付されるパンフレットや企業のリリース情報をすべて読み込むのはなかなか大変ですから、会社情報やコメント欄といった数行にアピールポイントをしっかり詰め込んでほしいですね。結果として、来場者、出展者双方にとって効率がよく、効果も期待できる場になると思います」

――新たなビジネスパートナーとの出会いを求めて「ヴァーチャル産業交流展2020」に参加する来場者は、出展企業のPR内容のどんなところに注目するのが良いと考えますか。

土屋氏
「その企業が得意としている分野・ジャンル、異業種で応用可能な機能、オンリーワンの強み。この3点に注目しながら、自社の探す機能やテーマとの相性を探るのが良いのではないでしょうか」

――自社の強みを明らかにし、情報を整理して臨むことが、事前準備として大切になるということですね。なお、今回の「ヴァーチャル産業交流展2020」は、初のオンライン開催となります。そこで、オンライン商談を行う際のポイント、土屋さんご自身が交渉の席に着くときに気をつけていることがあれば、ぜひ教えてください。

土屋氏
「探索活動を数多くこなすことが私の仕事でもありますので、効率よく行うために普段から何を聞きたいのかを3つ程度にまとめています。①どんな特徴があるのか、②同業者はどのくらい存在するのか、③想定価格はいくらなのか――という具合です。細かい数値は必要ありませんが、相手側からもこれらの情報がタイムリーに返ってくると、次のアクションが取りやすくなります。そして、リアルとは違って間合いが離れていますから、冒頭からビジネスの話を始めてもさほど失礼ではありません。私も単刀直入に切り出すようにしています。そのなかで、感触が良ければ具体的なミーティングの場を設けることになりますし、見当と違えば、また探す。このように早いサイクルでパートナーを探していますから、ヴァーチャル上の商談は、非常に効率が高い。来場する方にも、このメリットをぜひ活用していただきたいですね」
「ヴァーチャル産業交流展2020」のデモサイトでヴァーチャル空間を体感する土屋氏。「展示会に足を運んで、歩きながら面白そうな企業ブースを探し回るのと同等の体験ができますね」と、思わず前のめりに。
「ヴァーチャル産業交流展2020」のデモサイトでヴァーチャル空間を体感する土屋氏。「展示会に足を運んで、歩きながら面白そうな企業ブースを探し回るのと同等の体験ができますね」と、思わず前のめりに。
――「ヴァーチャル産業交流展2020」をきっかけに、ビジネス拡大の糸口をつかむ企業が増えることに期待が高まっています。

土屋氏
「ぜひとも、そういう場であって欲しいと願っています。ビジネスにつながることが、もちろん一番の目的だと思うのですが、個人的には産業交流展を機会として会社間の軽いお付き合いが広がり、闊達な情報交換が繰り広げられる世の中になるとよいな、と思っています。ヴァーチャルの世界をうまく活用することが、企業活動の活発化、日本の活性化の大きな手立てになると信じています」


「ヴァーチャル産業交流展2020」概要

中小企業の優れた製品・技術を一堂に展示する国内最大級のトレードショー。原則として、首都圏(東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県)に事業所を有する個性あふれる中小企業などの優れた技術や製品を一堂に展示し、販路拡大、企業間連携の実現、情報収集・交換などのビジネスチャンスが生まれる場。今年で23回目となる「産業交流展2020」は、初のオンライン開催。3D空間上に展示会場を再現し、直感的な操作で、実際に会場を歩いているような環境を再現する。テレビ会議やテキストチャット等のオンラインコミュニケーションツールを実装し、リアル展示会同様、来場者との商談も可能。

●開催テーマ 「MAKE FUTURE~シンカする日本の未来~」
●開催期間   2021年1月20日(水)~ 2月19日(金)
●入場料 無料

PROFILE

  • 土屋 哲雄(つちや てつお) 株式会社ワークマン専務取締役

    土屋 哲雄(つちや てつお) 株式会社ワークマン専務取締役 東京大学経済学部卒。三井物産入社後、海外留学を経て、三井物産デジタル社長に就任。企業内ベンチャーとして電子機器製品を開発し大ヒット。本社経営企画室次長、エレクトロニクス製品開発部長、上海広電三井物貿有限公司総経理、三井情報取締役を経てワークマンに入社。プロ顧客をターゲットとする作業服専門店に「データ経営」を持ち込んで社内を改革。一般客向けに企画したアウトドアウェア新業態店「WORKMAN Plus」が大ヒットし、「マーケター・オブ・ザ・イヤー2019」大賞を受賞するなど、注目されている。2019年6月、専務取締役経営企画部・開発本部・情報システム部・ロジスティクス部担当(現任)に就任。2020年10月には自身初の著書である 『ワークマン式「しない経営」~4000億円の空白市場を切り拓いた秘密~』(ダイヤモンド社)を上梓。アマゾンの企業経営カテゴリーでベストセラー1位に輝いている。

2021年1月18日

産業交流展2020実行委員会

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