“だけ”へのこだわりに時代が追いついた。「麦」と「ホップ」”だけ”でつくり続けた10年目の答え
ユーザーの趣向の多様化により各社新製品を投入するアルコール飲料業界。その中でも、こだわりのある商品をつくるサッポロビール株式会社の定番商品として愛飲される「麦とホップ」は、3月6日にブランドリニューアルを行なった。麦とホップの誕生から今日に至るまでのブランドストーリーについて、サッポロビール株式会社 ブランド戦略部 サッポロブランド第2グループ豊田崇文氏と同社新価値開発部 第1新価値開発グループ新木絵理氏に話を伺った。
(左)サッポロビール株式会社 ブランド戦略部 サッポロブランド第2グループ 豊田崇文氏 (右)同社 新価値開発部 第1新価値開発グループ 新木絵理氏
10年の積み重ねが多くのファンをつくり出した
様々な特徴を持つアルコール飲料が続々と発売される中、味と品質にこだわり続ける商品が存在する。それが「麦とホップ」だ。誕生から今日に至るまでのブランドとしてのこだわりを伺った。
——「麦とホップ」のブランド立ち上げ当初のエピソードやこだわりはどの様なものなのですか?
豊田氏「創業から今日に至るまでサッポロビールの商品は、どれも素材にこだわり続けています。2004年に弊社からいわゆる第三のビールとして、ドラフトワンを全国発売し、その後様々な商品が各社から発売されました。そのような中で、その名の通りビールの主原料である“麦”と“ホップ”、すなわち、本質的な素材だけでつくることにこだわり、圧倒的なうまさを実現したい、という想いから2008年に発売したのが『麦とホップ』です。」
新木氏「麦原料100パーセントとホップだけでつくり、それ以外は使わないという「麦とホップ」のこだわりは、発売当初から変わりません。素材由来のうまみを追求することで、一口目の満足感と飲み飽きない後味に磨きをかけ、品質感をより一層感じて頂ける味を目指しました。」
——製法についても、こだわりがあるのですか?
新木氏「発売当初から『長期熟成製法』を採用しています。大麦と麦芽だけでつくる「麦とホップ」は、製造工程上、手間と時間がかかり決して楽なつくり方ではありません。しかし、それをあえて発売当初から貫き通している「麦とホップ」だからこそ、素材のうまみを引き出すことができますし、多くの人たちに愛されている理由の一つだと考えており、10年間変えてきておりません。」
リニューアルで「変わるもの」と「変わらないもの」
製品名をも変える大々的なリニューアルではあるが、その背景に何があったのか?サッポロビールが考える新たな時代感とはなんなのだろうか?
——今回リニューアルはどの様なものになりますか?
豊田氏「麦とホップが持つ価値を原点に立ち返り再規定し、その上で、パッケージ、商品名、コミュニケーションをリニューアルすることとしました。今のお客様価値に寄り添って、どうあるべきかを徹底的に検証しました。その中でも、ネーミングについては非常に悩んだ点のひとつです。」
——今までは「サッポロ 麦とホップ The gold」ですよね。
豊田氏「はい。The goldの部分は2014年にネーミング変更をしました。狙いは圧倒的にうまいという味覚価値をわかりやすくネーミングに入れることと、当時のゴージャスやプレミアム志向という時代の空気感に対応することでした。しかし、最近その空気感は変わってきていると思っています。もちろん、ゴージャスなものを好む方も多くいらっしゃると思いますが、よりシンプルながらも本質的なもの、裏付けのある品質感などを求めるような時代になってきていると感じています。また、昨年の12月に食品の嗜好に関する調査をした際に、素材そのものでつくられた食品を好む人が約8割いるという結果からも、お客様はシンプルながらも本質的な価値を求める傾向にあると思います。そのような時代感の中で、飾り立てず本質で勝負しようと考え、「The gold」をつけず、「麦とホップ」という商品名で勝負しようと決めました。」
新木氏「多くの商品の多様化の中で、本質的な部分を伝えることが重要です。例えばパッケージについても、ギラギラとしたゴールドは全面的に出さず、品のいい「金色」に「ロゴ」という風にしています。目立たな過ぎてもいけませんので、お客さんに伝えるパッケージでのコミュニケーションは数百パターンつくって試しました。」
——逆に変えなかった点もあるのですよね?
新木氏「味わいについてはとても悩みました。発売から10年という長い時間、麦とホップは多くのお客様に愛して頂いています。ずっと飲み続けて下さっているお客様を大切にすることが最も重要だと思っていますので、味わいについては「変えること」だけが良いことではないと考えていました。ご愛飲頂いているお客様を大切にした上で、もっと多くのお客様に手に取って頂き、これからもずっと愛して頂ける麦とホップになっていくにはどうしたらいいか。「麦とホップだけでつくる」というこだわりを守り抜きながら、理想の味わいを目指すために、検討には多くの時間と努力を積み重ねてきました。」
豊田氏「麦とホップのファンは、他の新ジャンル商品に比べて、味覚にこだわりを持つ本質思考の方が多く、グループインタビューなどを実施すると非常に興味深い声を聞くことができます。」
——具体的には、どんな感想などが出てくるのですか?
豊田氏「他の新ジャンル商品に比べて、こだわりの“味言葉”が出てくることが多いです。例えば、競合商品を飲まれている方から出るワードが「美味しい」のみだとすると、麦とホップのロイヤルユーザーの方だと「舌に残る、ほどよい苦味が心地よい」というように、様々な“味言葉”が出てきます。こうした愛飲者の声をしっかりと捉え、ファンを増やしています。」
リニューアルというのは単に新たな味を提供することではない。こだわりを貫きつつも、既存の愛飲者に新発見を与えるというのは、非常に難しい選択だったと言える。
10年の想いをさらなる未来へつなぐ
味にこだわる本質的なファンが愛すブランド、それが「麦とホップ」だ。本製品への2人の想いや今後の展望について最後に伺った。
——お二人にとって「麦とホップ」は、仕事であり一つの芸術的創作に近い様に感じられました。
豊田氏「ほぼ生活の一部になっていますね。仕事を終えてベッドに入っても気になりますし、寝ているときもたまに夢に出てきます(笑)。ここまでこだわれるのも、ブランドを愛して飲んでいただいているお客様にもっと喜んでいただきたいという想いや、そういったブランドを担当できている点にやりがいを感じるからです。」
新木氏「日々お客様の顔が浮かぶのが今の仕事です。ある意味、「麦とホップ」は、親友みたいな感じです。一緒に切磋琢磨してきて、自分自身も大いに鍛えてくれた親友です。ぜひこの魅力的な友を皆さんにも知っていただきたいです。」
人生を賭ける価値のある仕事を遂行する人たちは、目の輝きが大きく違う。二人の麦とホップの良さを語る時の輝きは、類を見ないほどであった。「麦とホップ」製品完成までの苦労は、今回のリニューアル発売に結実すると言えるだろう。
製法としてのこだわり、コミュニケーションとしてのこだわり、そして2人のブランド担当者のこだわり。全てのこだわりが詰まった「麦とホップ」を、ぜひ楽しんでみてはいかがだろうか。
サッポロビール