『時問時答』で繰り広げられる、登場者一人ひとりにとっての「やさしい時間」。人となりとともに触れられる、そのたくさんのメッセージを、私たちは「やさしい時間」としてどう受け止めるとよいのだろう。
森谷さんは、現在公開されている内容を交えながら、下記のように答えてくれた。
「6月10日の『時の記念日』に合わせて、前日に公開されたのが、
千葉大学 一川誠先生のインタビューです。一川先生は、心理的なアプローチによる『時間学』を提唱されており、当社が毎年発表している『セイコー時間白書』にもご協力いただいています。インタビューのなかで一川先生は、「人それぞれに心地よく過ごせる時間のペースがある」とおっしゃっています。これは、人の多様性に通じる考え方でもあり、『時問時答』をとおし、こうした違いを認め合える素晴らしさに気づいていただければと思います。
また、
染色家の柚木沙弥郎(ゆのき・さみろう)さんは、インタビューで「ワクワクし続けるには、何でも面白がって、自分でワクワクするように発見すること」と語られています。いくつになってもワクワクするものを自分で見つける、そういった時間が、98歳の今も現役で創作に励まれ、日常にある身近なモチーフから、見る人の心を和ます彩り豊かな作品を創られる柚木さんにとっての「やさしい時間」であることに、共感される方は多いのではないでしょうか。
このほか、
国立アイヌ民族博物館で学芸員をされている北嶋由紀さんは、子どものころ、自分のルーツであるアイヌを遠ざけてしまっていたと言います。しかし、アイヌ文化に触れその魅力を知った今では「自分がアイヌでないことは想像もできない」「今はとても幸せ」と話しています。
「やさしい」という言葉は本来、「あの人、やさしいよね」のように人を表すときに使われますが、自分にやさしくなれない、つまり自分を認めてあげられないときが誰にもあると思います。けれども、自分を認めてあげられると気持ちが楽になり、ハッピーにもなれます。自分に対してそうであるのなら当然、人に対してもやさしい気持ちになれる、それに気づくことが「やさしい時間」ではないでしょうか。わたし自身、皆さんの話を伺いながら、考えているところです。」