ソニーグループがコロナ禍勤務支援ツール「ソムリエツール」を無料提供する理由

ソニービズネットワークス株式会社

コロナ禍で管理が大変になったことのひとつが従業員管理。リモートワーク時の出勤管理や毎日の体調管理など、企業が把握しておくべき情報量が増加した。さらに新型コロナウイルス感染者が出た場合、濃厚接触者の特定や場合によっては保健所に対象者情報を提出するなど、緊急時にすぐにデータをまとめ、然るべき対応が求められるようになった。しかしながら、これらは、コロナ禍で発生したフローゆえに従来通りの管理ソフトでは効率が悪い。そこでソニービズネットワークス株式会社はコロナ禍の今だからこそ便利に利用できるサービス「somu-lier tool(ソムリエツール)」を開発し、2020年11月末から無料提供をスタートした。今回は本サービスの事業責任者である渡邊謙人氏にサービスに込めた想いや無料提供に踏み切った理由などを伺った。

困っている企業を助けたいという純粋な想い

―ソニービズネットワークスは、ソニーネットワークコミュニケーションズが提供する「NURO 光」の法人向けブランド「NURO Biz」の提供を主軸とした法人向けICTソリューションを提供している企業です。これまで、渡邊さんはクラウド勤怠サービスの「AKASHI(アカシ)」のプロジェクトマネージャーや企業の総務に特化したオウンドメディア「somu-lier(ソムリエ)」の編集長などを歴任し、現在は人事部門にも関わる一方で、11月末にローンチされた「somu-lier tool(ソムリエツール)」の事業責任者を務めています。このソムリエツールはコロナ禍の企業活動をサポートするクラウド型勤務支援ツールですが、時代に求められるサービスを初期費用、月額費用ともに無料で提供していることに驚きました。まずは無料提供に至った経緯について教えていただけますか。

渡邊氏
「困っている企業を助けたいという社会貢献的な想いが無料提供にした純粋な理由です。こうした状況の中でコロナ禍に便乗して儲けようとしていると思われてしまうのは我々にとって非常に不本意なことですし、そこは社長も社員も一致していた意見です。それに加えて、そもそもこれは“新型コロナウイルス感染拡大が収束すること”をゴールとしたツールであり、収束すれば役目を終えるわけですから最初から長期的なビジネスにはなり得ないと思っていたので、こうした形になりました」
―しかしながら、きっと、こうしたサービスを活用してもらうことが、ソニービズネットワークスという会社を知っていただくきっかけになりますね。

渡邊氏
「そうですね。当社は法人向けITソリューション事業を展開しているのですが、ソニーグループの中に法人向けビジネスを行っている会社があるという認知はまだまだ低いのが実情です。それに対して、こうしたサービスを無料で提供して多くの方々に使っていただくことで、ソニービズネットワークスという会社の認知向上に繋がればと考えています」

―ソムリエツールはコロナ禍に安心して働くために求められる機能が集約されたツールです。時代に求められるサービスであることは間違いありませんが、具体的にどんな想いから誕生したのでしょうか。

渡邊氏
「もともとは春の第1波の段階で多くの企業が社員を出社させるかさせないかという判断を迫られたり、あるいは出社させても陽性者が1名出た段階ですべての社員が出社できなくなるといった状況をニュースで見ながら、そうした新しい社会課題を解決できるツールがあったらいいなと感じたことが開発のきっかけでした。一方で、当社は3月から完全在宅に切り替えているのですが、最初の頃はテレワークの勤怠管理は従来の勤怠システムを使用し、各自の健康状態のチェックはメールフォームを使って連絡するという2つの方法を併用していて、管理側にとっても従業員側にとってもやりとりが複雑になっていました。さらに緊急事態宣言が解けて出社制限が緩和されると、ソニーグループが2割から3割という出社率を全体のポリシーとする中で、今度は出社率の管理が必要になってきました。このように新型コロナウイルスの感染拡大の状況によって様々な対応が求められる中で、これらを一元的に管理できるシステムを提供したいと考えたんです」

いつくるか分からない第3波に向けて

―様々な特徴を持ったソムリエツールですが、代表的な機能を教えていただけますか。
渡邊氏
「新型コロナ陽性時の対応、毎日の体調入力と管理、テレワーク中の勤怠管理、出社予約の4つが機能の柱です。毎日の体調入力では、メンタルヘルスの観点から精神面の健康についても問診の形でチェックできるシステムになっています。また、もし、新型コロナウイルスの陽性者になった場合には、2週間の隔離期間の体温などの情報も報告できるようになっています。第3波が流行する前のローンチを最優先で開発したため、現段階ではまだ搭載できていませんが、近いうちにBluetoothを活用した社内の濃厚接触者管理の自動化や出社率の管理などの機能も拡充していく予定です」

―使いやすさなどで特にこだわった点を教えてください。

渡邊氏
「ソムリエツールは私を含めて、クラウド勤怠サービス「AKASHI」を立ち上げたメンバーが再びプロジェクトチームを組んで作ったサービスなので、過去のレガシーを活かせたところが大きいですね。勤怠管理システムというのは割と面白くないサービスだったのに対して、「AKASHI」は一人ひとりのユーザーが使いやすい形に作り込んでいて、特にUIに強みを持たせたサービス設計をしてきました。同様にソムリエツールも直感的に使えるような工夫をしていて、例えば、これから搭載していく接触管理では誰と誰が接触したかをチャートのような形で視覚的に分かる形にしています」
―今回はサービスの開発開始から約2ヶ月というスピードでローンチに至ったと伺っていますが、その中で苦労したのはどんな点ですか。

渡邊氏
「感染症の流行予測ができない中で、いつくるか分からない第3波に間に合わせるというのはプレッシャーでした。スピード感を最優先しようと、ローンチ段階では諦めた機能もありますし、納期とやりたいことの整合性を取ることに苦労しましたね。また、私たち自身もテレワークの状況にある中で、技術的な作業に入る前の企画や要件定義のようなコミュニケーションの積み重ねが重要な部分を遠隔で話し合うのは大変でした。普段から大体の作業はテレワークで回していますし、そういうところには自信がある会社なんですけど、いろいろ幅広く考えなければいけないし、全部がちゃんと整っていないと成立しないところをテレワークで正しく揃えていくのは、「AKASHI」を開発した時には無かった難しさでした」

―ソムリエツールは、どのくらいの規模の企業が利用することを想定していますか。また、事業責任者として、こんな風に活用して欲しいという想いはありますか。

渡邊氏
「いまやテレワークの推進は大企業にとっても中小企業にとっても共通の課題です。きっと最近では地方でも身近なところで新型コロナウイルスの陽性者が出ているでしょうし、社員の健康管理や精神的なサポートなど、テレワークによって起こる問題はどこも変わらないので、企業の規模を問わず使っていただけると思います。その上で、今は新型コロナウイルスの感染対策をしているか否かが取引相手の判断基準になりつつあるので、特に人や物に触れるサービスをしている企業はこういうサービスを使っていることでお客様に安心感を与えられるのではないでしょうか。また、もし社内に感染者が発生した場合でも、その人の社内の移動履歴が見られれば閉鎖する場所がピンポイントで分かりますし、会社全体の作業を止めるようなことになりません。取引相手に対する安心と社内の安心の両方につながるサービスです」

―将来的にはどんな展開を考えていますか。

渡邊氏
「新型コロナウイルスが収束する頃には、きっとテレワークがより当たり前になっていたり、オフィスが今の半分の面積でいいという会社も多く出てくると思います。そういう環境では自分の会社に出社するのにも予約が必要になってくるかもしれません。また、コワーキングスペースなどで積極的に仕事をする文化が広がってきた際にも、誰がどこで仕事をしているとか、どういう健康状態にあるかなど、離れた場所にいる社員の管理がより重要になってくる中で、ソムリエツールをそうした情報発信のインターフェイスにしていきたいです」
―最後に改めて、渡邊さんがソムリエツールに懸ける想いをお聞かせください。

渡邊氏
「コロナ禍をみんなでどう凌ぐかというところにフォーカスをあてたサービスなので、より多くの人にこのツールを使っていただいて、安心して働ける環境作りのお手伝いができたら嬉しいです。そして、もちろんコロナ禍ができるだけ早く過ぎ去ることが第一の願いですが、アフターコロナの時代になってもたくさんの人々に求められ、その時々の新しい働き方にフィットした形として生き続けるようなサービスに育てていきたいと思います」


PROFILE

  • ソニービズネットワークス株式会社 渡邊謙人

    ソニービズネットワークス株式会社 渡邊謙人

2020年12月25日

ソニービズネットワークス株式会社

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