電気利用量からの“気づき”を高齢者見守りに繋げる! 東京電力エナジーパートナーが打ち出す新サービスとは?
内閣府が今年6月に公表した高齢社会白書によると、子供と同居している65歳以上の高齢者の割合は1980年には全体の69%だったのに対して、2015年には39%に減少。さらに、同じ年の比較で一人暮らし高齢者の数は約88万人から約592万人へ6.7倍もの増加を見せている一方、近年では、親世代と子世代が徒歩で行き来できる距離に住む「近居」というライフスタイルも定着。そんな様々な社会背景や選択肢がある中で「高齢者になった親の安全をどう守るか」というのは、特に高齢者の親を持つ多くのミドル世代にとって差し迫った問題だろう。
そうした中、東京電力エナジーパートナーが8月からサービスを開始した「遠くても安心プラン」は、IoT技術(モノとインターネットが繋がる技術)を活用して電力の利用量から近親の高齢者の生活を見守るという画期的なシステムだ。老年学を研究する桜美林大学・渡辺修一郎教授のコメントを交えつつ、本サービスの開発責任者である竹村和純氏に話を伺った。
東京電力エナジーパートナーの竹村和純氏
「気づき」から生まれるコミュニケーションを「見守り」に繋げる
東京電力エナジーパートナーは2016年春に東京電力からの分社化によって誕生した企業。同社では電力やガスの小売を主力としつつ暮らしを豊かにする新サービスも提供しており、竹村氏が率いるインキュベーションラボグループではIoTを活用したスマートホームサービスを開発している。この夏開始した「遠くても安心プラン」は、分社化前の前身チームの頃から足掛け4年の歳月をかけて開発に取り組んできたサービスとなる。
竹村氏「『遠くても安心プラン』は『家が、家族になる』をコンセプトとした、親子のコミュニケーションを見守りに繋げるサービスです。家電の使用状況の変化からユーザーの方に“気づき”を与え、『ちょっと電話してみよう』といったコミュニケーションを生むことで、それが結果的に見守りに繋がると考えています」
「遠くても安心プラン」は、親などの家の家電の使用状況を遠く離れた場所でもスマートフォンで確認できるというサービス。見守りたい家の分電盤に手のひらサイズのエネルギーセンサーを1つつけるだけで、そのセンサーが読み取った電力利用状況がクラウドに上がる。そしてその情報を独自のAI(人工知能)が分析し、エアコン、掃除機、洗濯機など、どの家電がどれだけ使われているかを一覧にして遠隔地のスマホに送ってくれるという仕組みだ。
小さなセンサー(上記図の赤枠)を分電盤に設置するとクラウドで家電利用状況を解析してくれる
竹村氏「スマホには日々の家電の利用状況がLINEなどと同じようにタイムラインで更新されていくほか、毎日、毎週の状況をまとめたサマリーメールもお送りしています。また、例えば、夏、熱中症の恐れがある日に、明らかに家にはいるけどエアコンがついていないというような時にはスマホにメールでお知らせするようになっており、そうした状況を気づきとして『エアコンが動いてないけど大丈夫?』といったような直接のコミュニケーションが生まれることを目的としています」
スマホでは深夜、朝、昼、夕方、夜に分けて、使用した家電を一覧できる
また、家電の長期利用や深夜利用の際など、普段と違う使い方をした場合にもスマホにアラートとしてお知らせが送られるようになっている。その他、Amazon Echoなどのスマートスピーカーとも連動し、スマホを見ずとも離れて住む家族の様子が確認できるという。このサービスを利用するには設置作業料18000円と事務手数料3000円の初期費用のほか、2980円の月額料金が必要(設置手数料は2年間の継続利用で無料。また、2018年1月14日までの申し込み、かつ2月19日までの設置完了で、事務手数料と3ヶ月分の月額料金が無料になるスタートキャンペーンを実施中 )。最大5台のスマホが登録可能になっている。また、何か心配ごとがあった時の「訪問確認サービス」も年2回まで無料だ。
IoTというワードを聞くと少々大それた印象を抱くかもしれないが、このサービスは分電盤の中にセンサーを設置するだけで、高齢者の方の暮らしはそれまでと何も変わらない。設置作業はわずか30分程度で、特別な機器の装着や操作の必要ないシンプルな仕組みも利点といえる。
「ウチの親はまだ若いから…」という子供世代の落とし穴
医学、心理学、社会学など様々な分野の視点から高齢化社会に潜む問題に取り組む「老年学」を研究する渡辺教授もこのサービスを高く評価している。
渡辺氏「これまでの見守りシステムは人が転倒して動かないなど、危なくなった段階でアラートが出るというものが多かったのですが、このシステムは生活を経時的に判断して、その変化を気づかせてくれるので“もしものこと”が起こる前に気づきを与えてくれると感じました。また、赤外線を使ったセンサーだと、トイレや台所、玄関など何箇所かに設置が必要で、それ相応の費用もかかりますが、これは設置が1か所ですむという点も画期的ですね」
桜美林大学の渡辺修一郎教授
一方で昔と今の高齢者を比較しつつ、子供世代に早いうちから備える必要性を説く。
渡辺氏「一昔前の高齢者と今の高齢者では健康状態が全く異なります。人間の自立には、身体的な自立、精神的な自立、経済的な自立の3つの点がありますが、今の高齢者はどの点で比べても昔の高齢者よりも高い水準にあります。ただ、高齢期になるとやはり体のあちこちで老化が起こり、特に予備力が著しく下がる70歳過ぎになると軽い転倒からでも急激にガクッと悪くなるという傾向が見られますから、そうした面では『ウチの親はまだ若いから…』と思っているうちからの備えが必要といえます」
さらに渡辺氏は加えて、「福祉の基本に『手を出しすぎず、目を離さず』という言葉があるのですが、親の活動量を知れるというのもこの見守りサービスの良いところではないでしょうか」と本サービスのメリットを語る。
IoT技術を通じて「おウチのワンストップサービス」を開発していく
竹村氏「電気機器の利用状況を活用した便利なサービスを電力会社である当社が提供できれば、お客様にとても分かり易いものになるのではと考えました」
本サービス開発のきっかけをそのように語る竹村氏。住宅や世帯の状況が家庭ごとに異なる中で、どのように確かなデータを手に入れられるかが商品化の大きな課題となったが、約500世帯をモニターとした実証実験、ヒアリングを繰り返してリリースに至ったという。竹村氏自身も両親が暮らす愛知県の実家にセンサーを設置して自らモニターになったという渾身の新サービスは早くも多くの反響を呼んでいるそうだ。最後に今後の同社のIoTサービスの展望を尋ねた。
今後の展望を語る竹村氏
竹村氏「今後我々が構想しているのは『おウチのワンストップサービス』です。既にご提供している電気、ガスのほかに、設備の交換や保険事業などおウチに関わる手間やお困りごとをひとつのサービスにまとめて解りやすい形でご提供していければと考えています。その上で、IoTを活用したスマートホームでは、家の中の様子がIoTデバイスを使ってわかることからスタートし、自分でひとつひとつやらなければならなかったことが自動的にできるとか、声の指示でできるといったことを実現していく。もしくは、外出先からでも家の中のことができるようになれば、そういったワンストップのサービスへと少しずつ近づいていけるのではないかと考えています」
親との同居を望んでいても、仕事など様々な事情によりやむなく別居を選ぶというケースは世間によくあること。そうした人々にとってこのサービスは、離れていても家族の絆を深められる良いコミュニケーションツールになるのではないだろうか。
★詳細はコチラをクリック →
TEPCOスマートホーム 遠くても安心プラン
東京電力エナジーパートナー