uhuruが切り拓くIoTマーケティングの未来

ウフル

人々の行動や購買履歴などを可視化・分析してプロモーションや販売戦略の策定に活用する「デジタルマーケティング」が広まっています。ただ従来は、多くの情報がインターネット上のものであり、消費者のオフラインの行動をデジタルマーケティングに利用することは困難でした。しかしIoTの技術が発達したことにより、こうした状況は大きく変わりつつあります。

このIoTを活用することでマーケティングはどのように変わっていくのか。取締役 CSOである田中正道、そして執行役員 X United事業本部事業本部長の坂本尚也に話してもらいました。
(左)取締役 CSO 田中正道 、(右)執行役員 X United事業本部長 坂本尚也
(左)取締役 CSO 田中正道 、(右)執行役員 X United事業本部長 坂本尚也

マーケティングの世界を大きく変える可能性を秘めたIoT

――お二人はIoTを活用したデジタルマーケティングに取り組んでいるとのことですが、そこにはどのようなきっかけがあったのでしょうか。


田中:ウフルではIoT案件を数多く手がけていますが、そこで扱うデータには意外と人に関係するデータが多かったのです。そのデータを活用することができれば、マーケティングや広告配信といった分野の効率化、あるいは需給マッチングに活用できると感じたことがきっかけになります。
坂本:デジタルマーケティングというと多くの人がオンラインでの取り組みを想像されると思いますが、デジタルというのはオンラインに限らないんですね。IoTの技術を使えば、人に関するさまざまな情報をデジタル化することが可能です。デジタル化したものをマーケティングに生かすことを考えたとき、オンラインの領域にはすでに多くのプレイヤーがいますが、オフラインの領域であれば私たちの得意とするIoTを生かせる場面がたくさんあります。そこをウフルの強みとしていきたいと考えています。
――IoTの技術を活用することで、マーケティングはどのように変わっていくのでしょうか。


田中:一番わかりやすい例は、広告のROIを高められることでしょう。たとえばオンラインに広告を掲載した場合、それが表示されたりクリックされたりした時点で課金が発生します。ただ企業からすると、そうやってお金を払っているにもかかわらず、本当にそれが購買につながったのかは分かりません。デジタルマーケティングの仕事をしていると、広告出稿のROIを計測できないのかとご要望をよくいただきます。ただ現状では、ROIを推測することしかできないのです。しかしIoTを活用すれば、店舗に来店した、商品を実際に買ったといったエビデンスが取得できるようになり、ROIの計測が実現します。それが一般的になると、広告自体の課金の方法が変わる可能性もありますよね。本当にお客様が買うと課金される。それは広告というよりも、受給マッチングそのものです。


坂本:消費者視点で考えると、生活していて面倒くさいことって多いと思うんです。すでに消費者の嗜好に合わせて商品を提案するレコメンドは幅広く使われていますが、決して精度は高くありません。ただ、自分の欲しいものがドンピシャで提案されるようになれば、消費者にとってもメリットは大きいはずです。そのために供給側は、データを取得して活用するための仕組みを作り、高精度のレコメンドを実現したい。そのために必要となる消費者のデータをどうやって集めるか。現状であればクーポンを配信したり、あるいはアプリを使ってもらったりといった方法がありますが、いずれにしても面倒ですよね。いちいち名前と生年月日を登録してくださいとか。でも、顔パスでそれが実現できれば不便さを解消できるかもしれない。そういったことをIoTを使って実現していきたいですね。
田中:ただ、個人情報の利用には難しい面もあります。私は国連の組織の1つである「CEFACT」でIoTデータの国際標準を作るという活動にも参加しているのですが、そこで議論になっているのは個人情報の保護です。すでに各国で個人情報保護のための取り組みが進められており、それを無視した形でデータを流通させることはできません。分かりやすい例で言えば、店舗に取り付けられているカメラを使った分析です。ある男性がお茶を買った、そういった情報をカメラの映像から取得し、それを受給マッチングのために分析するとします。ただ国をまたいだ場合、たとえば顔が映っているとそれは個人情報なので使ってはいけないということになる。そのため、状況に応じて自動的に使ってはいけない情報をフィルタリングし、使える情報だけを転送するといった仕組みも必要だと考えています。


坂本:IoTとマーケティングの組み合わせには大きな可能性がありますが、一方で田中が話すような個人情報の問題もつきまといます。ですから、さまざまなルールへの対応などを意識し、どういった形が現実的な解なのかを我々の方でも議論している段階です。

IoTに関する多くのナレッジを持っていることがウフルの強み

――先日EUで施行されたGDPRでは、個人情報の利用に対してさまざまな制限を課すなど、社会的にも個人情報保護は重要な課題と認識されています。そうした法制度への対応と利便性の実現をどうバランスさせるかが難しそうですね。


田中:まさにそのとおりです。たとえば個人情報そのものを使うのではなく、取得した情報にフィルターをかけて利用するといったことが考えられます。フィルターというと、どうしても情報をそぎ落とすイメージになりますが、そうではなくてペルソナを作るイメージですね。個人を特定せず、複数の人が存在しうるペルソナにまとめ上げてマッチングを行う。この人はこういうペルソナだから、この商品をレコメンドしようといった形での利用です。


坂本:一個人ではなく、精度の高いペルソナと考えると分かりやすいと思います。単にいくつかのキーワードが並んでいるくらいのペルソナだと、そこから実際の消費者をイメージすることは難しい。そのため、より精度の高い多くの情報を使い、立体的なペルソナを生み出していく。そうすると、個人情報を使わずに高度なマーケティングに活かせると考えています。
――IoTの取り組みに対する、ウフルのアドバンテージについて教えてください。


田中:やはりIoTオーケストレーションサービスである「enebular(エネブラー)」(https://enebular.com/)を持っていることだと思います。これがあるがゆえに、非常に多くのIoTに関するご相談が私たちに寄せられています。こうして他社よりも早く、より多くの案件を手がけていることから、多くのナレッジを集積することができています。


――IoTデバイスからデータを収集し、分析するためのサービスは各社から提供されています。それらとの違いは何でしょうか。


田中:いくつか競合はありますが、それらとはレイヤーが違うと考えています。IoTの世界では、エッジに対してロジックをデプロイしてコントロールする必要があります。ただ競合の製品はゲートウェイと呼ばれるレイヤーまでしかデプロイできません。しかしenebularであれば、その先にあるマイクロコンピューターなどのエッジにまでロジックをデプロイできる。そこが大きな強みになっています。


坂本:さらに言えば、enebularはほかのクラウドサービスと共存できるサービスでもあるんです。実際、Amazon Web Services上でenebularを動かすことも可能です。このように環境を固定しないことも強みであり、さまざまな種類のクラウドやゲートウェイ、マイコン、センサーを組み合わせて動かせます。たとえば新しく登場したセンサーを使いたい、インターネット上の別のサービスとつなぎたいなど、IoT環境をアップデートしたいといったケースは少なくありません。そうした場合でも、enebularを使えばそれぞれをつなぎ替えるだけで済みます。そういった柔軟性は、ほかにはないメリットです。


田中:ただ、それは我々だけで実現しているわけではありません。たとえばプロセッサを製造しているArm社との間には強固なアライアンスがあり、彼らのマイクロプロセッサを制御するOSに対して、enebularのエージェントをデプロイできる。こうしたビジネスアライアンスも、enebularを核としたソリューションの実現に大きく寄与しています。

IoTは日本経済における最後のチャンス

――現状ではIoTマーケティングに関してどのようなご相談が多いのでしょうか。


田中:非常に多いのは可視化ですね。各企業はすでに多くのデータを持っています。流通業で言えば、POSデータや実売データ、sell-through情報、Webサイトの各種ログなどです。このようにたくさんの情報が蓄積されているのですが、それらを連動した形で処理できている企業はわずかです。単一データごとには処理されていて、それをビジネス判断に使うといったことも行われていますが、それを3次元、4次元に組み合わせて見るということができていないので、それを実現するためのダッシュボードを構築するといった支援を行っています。


坂本:データを活用したいというニーズはすごく高まっています。ただ、それを実現するための人材、大量のデータを分析できる人材がいないという課題はつねにあるため、ウフルではそういったニーズに応えられる体制を整えています。


――最後に、今後の目標を教えてください。


坂本:IoTとマーケティングの組み合わせならウフルだと、そう思ってもらえるようにしていくことが直近の目標です。実際にIoTをマーケティングに生かすためのものを次々と世の中に送り出して、「ウフルは面白い会社だな」、「新しいことをやっているな」と思ってもらえるような取り組みを推し進め、実績を積み上げていきたいですね。
田中:これを逃したら次はないというくらい、IoTは日本経済における最後のチャンスだと考えているんです。そのIoTを活用するための土台となるものを開発し、日本の経済をリードしていく企業にインストールしていきたいですね。

2018年7月9日

BRAND TIMES
企業のストーリーをカタチに