スポーツのイノベーションを支えるテクノロジー

ウフル

する・観る・支える(育てる)というスポーツ機会において、”する”スポーツでは選手やボールなど動きをセンシング・分析から活用まで、テクノロジーが導入されている事例が多く出始めている。また、観るスポーツについても欧州サッカーやメジャーリーグのスタジアム・アリーナを中心に徐々にテクノロジーの導入が始まっている。

このスポーツの世界におけるウフルの取り組みについて、X United事業本部 プロデューサーの有川久志、そしてX United事業本部 シニアプランナーの中根将史に語ってもらいました。
(左)X United事業本部 プロデューサー 有川久志、(右)X United事業本部 シニアプランナー 中根将史
(左)X United事業本部 プロデューサー 有川久志、(右)X United事業本部 シニアプランナー 中根将史

IT/IoTがスポーツにもたらす大きな価値

――まずお二人の経歴から伺えますか。


有川:私は新規事業の担当としてウフルに入社しました。もともと広告代理店で営業をしていたほか、スポーツビジネスも兼務していて、オリンピックやワールドカップの案件にも携わっています。またプロ野球のある球団が進めていた改革プロジェクトにも丸2年間携わりました。プライベートでは「鹿児島ユナイテッドFC」というサッカークラブの運営にかかわっています。県リーグからスタートし、九州リーグ、JFLを経て現在はJ3に在籍しているチームです。
中根:新卒で入ったWeb系広告代理店の人事部で採用や労務管理、その後SNSのマーケティング支援事業を展開している企業に勤めた後、2016年8月にウフルへ転職しました。ウフルではSNSマーケティング支援や、お客様のスマホ(スマートフォン)アプリやプラットフォームの開発PMなどを行っていました。現在は有川と一緒に、スポーツの領域でIoTを活用したビジネスを創出するプロジェクトを行っています。
――スポーツの領域でITやIoTを活用することで、どのようなメリットが生まれるのでしょうか。


有川:プロスポーツクラブの観点で考えると、収益源は放映権とスポンサーシップ、そしてチケットの販売が主な柱になります。それらの収益を拡大するために、ITをどう活用するかが各クラブの課題になっているんですね。たとえばチケットで言えば、外部のチケット販売サービスに頼るのではなく、自分たちのWebサイトでチケットを販売する。その際、それぞれの座席で試合がどのように見えるのかといった情報を提供するなど、ファン目線での取り組みが進められています。さらに現在ではダイナミックプライシングも広まりつつあります。対戦カードや試合の時期、曜日、天候などさまざまな情報を踏まえてチケットの値段をきめ細かく設定する。このように、ITを活用することで新たな価値を生み出し、収益を拡大していこうというわけです。


中根:チケットも以前は紙に印刷されたものが主流でしたが、現在はスマホを使った電子チケットも普及し始めています。この電子チケットとファンクラブの会員データベースを連携し、いつ試合に来ているのか、物販でどういったものを購入しているのかなどの情報をつなげて蓄積するわけです。この情報を活用し、試合のチケットの発売を知らせるメールを送信する際に、どういったメッセージであればお客様に響くのかを分析する。こうしたこともITの活用例の1つです。


有川:いわゆるCRMですよね。ファンクラブの会員データを集め、その属性を分析する。その中でヘビーユーザーにはどのようなプロモーションを行うのがベストか、あるいは最近スタジアムに来ていないファンに対してどのようなメッセージを送るのか。さらに昨今のプロスポーツクラブではポイント制を導入し、何ポイントたまるとグッズをプレゼントするといった取り組みも珍しくなくなっています。こういったITの活用は今後加速していくでしょう。


中根:運営の効率化にもITやIoTは有効です。スタジアムの中における人の流れを可視化すれば、警備をどのように行うのかの判断材料として使うことができ、警備員の適切な配置を実現することで無駄なコストを抑制するといったことが可能でしょう。そのほか、ごみ箱の状況をセンシングして適切なタイミングでごみを収集するといったことも運営の効率化につながります。特に海外ではスポーツビジネスの収益率が高いことから、こうした取り組みに積極的に投資している現状があります。

海外の先進的な情報を「THE STADIUM HUB」でいち早く提供

――ウフルとして、スポーツ領域に取り組む意義をどのように考えていますか。


有川:スポーツビジネスはグローバルに存在していて、国内で成功事例を作ればそれを海外にも展開することができる。それが1つ大きなポイントだと考えています。日本ではスタジアム・アリーナの新設計画が2025年までに約60か所あると言われています。さらに既存の施設も数万存在しています。このように日本だけでも多くの導入先が考えられますが、さらに海外を視野に入れると市場はもっと大きく広がります。さらに言えば、スタジアム・アリーナでのITやIoTの活用は、人が集まるところでのソリューションを考えることにほかならないため、空港や駅にも展開できると考えています。


――あくまで当初のターゲットがスポーツというだけで、そこで培われた技術や開発したソリューションはほかの領域でも応用できるというわけですね。


有川:僕はそう考えています。ただ、そのためにはしっかり実績を積み上げていく必要がありますが、スポーツビジネスの領域でウフルの知名度はまだまだ高くありません。そこで何らかの事実がほしいと考え、「THE STADIUM HUB」(https://stadium-hub.com/)というWebメディアを立ち上げました。国内外のスタジアムやアリーナの最新情報を提供するこのメディアを通して、ウフルの存在を知ってもらいたいと考えています。さらに、このWebメディアからスタジアム・アリーナでのIoTを活用した実証実験につなげるためのメニューを組み立てているところです。


中根:「THE STADIUM HUB」はスタジアム・アリーナに特化した記事を提供していて、テーマも「環境対策」や「建設・改修計画」、「資金調達」など、かなりニッチになっています。スポーツビジネスに携わっている人々には、有益なWebメディアになるのではないかと考えています。


有川:国内のニュースだけでなく、グローバルでの取り組みも積極的に発信していきます。そのためにイギリスのスタジアム専門誌やスポーツビジネスを手がけている企業と連携し、そこで発信されたニュースをいち早く翻訳して掲載しています。このように、単に国内のニュースを集めるのではなく、海外の情報を積極的に発信しているのが「THE STADIUM HUB」の大きな特長です。このWebメディアで、「ウフルは面白いことをやっているな」と思ってもらえたらいいですね。


中根:ウフルの役割は「つなぎ」の部分を作ることだと思っています。我々のプロダクトである「enebular(エネブラー)」(https://enebular.com/)のように、リアルの世界でもつなぐ役割を果たしていきたい。スタジアム・アリーナがあり、そこに対して処理技術やセンサー開発など技術をもった企業をつないでいく。そういったようなハブになり、スポーツビジネスの世界におけるさまざまな課題の解決をお手伝いしたいですね。

スポーツビジネスにかかわる人たちをつなぎたい

――お二人から見て、ウフルの社風はどのようなものでしょうか。


中根:仕事と趣味のベクトルが同じ方向にある人が多いですよね。僕たちのチームは朝一から自然にスポーツの話をしますし、ゲーム好きな人たちは勝手にeスポーツ部を立ち上げてゲーム大会をやってます。そうした興味関心が仕事につながることも多いです。こういった部分はウフルの強みにつながっていると感じます。


有川:僕自身はスポーツ全般が好きなんですけれど、それ以上にスタジアムが好きなんです。学生時代からあちこちのスタジアムを見に行くのが趣味で、たとえば野球の球場であれば、市営球場や町営球場のレベルまで800以上の場所に足を運びました。なので、現在のウフルの仕事は本当に自分の興味のベクトルの延長線上にあるものなので、自分自身も楽しみながら取り組めています。


――最後に、今後の目標を教えてください。


中根:プロスポーツチームやスタジアムの運営に携わる人に積極的に会っていきたいと考えています。スポーツビジネスには既に数多くの人たちが関わっていますが、新しい領域の人たちを含めて、より多くの人々をつないで新たな価値を創造するお手伝いができればいいですね。
有川:私はスポーツはテクノロジーの力でもっとよくなるはずだと信じています。この会社にはテクノロジーにすごく明るい人がいるので、彼らの技術とスポーツビジネスを掛け算すればすごいソリューションが生み出せるはずですし、すごい大きな価値が生み出せるだろうという予感があります。そのためにも、ITとスポーツビジネスの世界をつなげる存在になっていきたいですね。

2018年7月17日

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