2018年12月14日

迅速な顧客対応が、信頼と利益を生みだす ビジョンのCRMへの姿勢とそれを支えるCLTとは

ビジョン

「More vision, More success.」をコーポレートスローガンに4年連続10%以上の成長を遂げ、2016年12月には東証1部上場も果たした株式会社ビジョン。「グローバルWiFi事業」と「情報通信サービス事業」を二本柱とする同社では、「CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント=顧客関係管理)」が事業の成長の支えとなっている。今年10月には一般社団法人CRM協議会が顧客中心主義経営の実現を目指す企業・官公庁・団体に与える「CRMベストプラクティス賞」を7年連続8度目の受賞。その顧客ファーストの姿勢は外部からも高く評価されている。今回は同社で管理部門のトップを務める中本新一氏(取締役上級執行役員管理本部長)にインタビュー。ビジョンのCRMに対する姿勢、さらには顧客サービスのコア的役割を担っている「CLT(カスタマー・ロイヤリティ・チーム)」の取り組みについて話を聞いた。

ビジョンのCRMが高く評価される理由とは?

国際電話の割引サービス取次を生業に1995年に創業したビジョンは、法人向けにOA機器販売や電話回線の手配、ビジネスフォン販売を行う情報通信サービスで業界トップクラスのシェアを確立し、2012年からは海外渡航者向けWiFiルーターレンタルサービスの「グローバルWiFi」事業をスタート。現在はこの2つの事業を経営の二本柱とし、昨年度はグループ連結売上高175,5億円と過去最高の増収増益を果たしている。この急成長の中で事業の拡大とともに力を入れてきたのがCRMの取り組みだ。7年連続、通算8度目となる「CRMベストプラクティス賞」の受賞は継続してきた努力の結晶といえる。


-10月に8度目の「CRMベストプラクティス賞」を受賞されました。まずはこの受賞に対する感想から伺えますか。


中本氏:こうした名誉ある賞を継続して受賞できたことをとても嬉しく感じています。また、この賞を頂くことが、お客様の声をどれだけ反映できているかということを社内全体で改めて考える機会にもなっています。今年は「価格競争力と自動化によるサービス強化モデル」として主に2つの取り組みを評価していただきました。


ひとつはAIを活用したチャット対応の自動化です。これについては人力で対応していた従前のチャットサポートのやりとりを約1年にわたってデータベース化し、その内容をAIに解析させてボット化を実現しました。もうひとつは、RPA(ロボットによる業務自動化)の導入を推進し、管理業務の効率化を図ったことです。これによって削減できたコストをサービス料金に還元したり、新たな投資に回すことでお客様の満足に繋げられています。今後もこの評価に甘んずることなく、より良い顧客サービスを届けていきます。
-例年、受賞企業はわずか15社程度という中で、御社は7年連続でこの賞を受賞しています。受賞の理由として自覚されているポイントがあれば教えてください。


中本氏:一番の理由は「顧客の声を中心に置く」というCRMの基本的な考えを企業文化として共有してきたことだと思います。「こういうサービスがあったら」「ここを改善してほしい」というお客様からの要望を真摯に受け止め、サービスに反映してきたところを評価して頂けているのではないでしょうか。また、創業から23年という歴史の中で顧客サービスとの向き合い方も少しずつ変化してきましたが、創業時から変わらないのは、キャリアやメーカーにとって「最も獲得数が多く、最もクレームの少ないビジネスパートナーになる」ということです。そうすることで相手先の企業も当社に有利な条件を提示いただけるので、そこで得た利益をCS(顧客満足)に還元し続けてきました。


もうひとつ理由を挙げるならば、事業部の垣根を越えて社内全体に助け合いの風土が根付いているところです。例えば、関西空港が閉鎖されるなどの被害をもたらした今年9月の台風21号上陸の際は、当社にも「グローバルWiFi」を受け取れない、返せないといったお客様からの問い合わせが殺到し、電話もメールもパンク寸前の状態になりました。そうした状況でも、より迅速にお客様へのご対応をすることが必要なので他部署から人員を動員し、円滑に乗り切ることができました。そうした助け合いが素早い判断でできるのもCRMの意識が社内に浸透しているからだと思っています。


-御社の歴史の中でCRM導入に舵を切ったのはいつごろなのでしょうか。


中本氏:今振り返ると、やはり「グローバルWiFi」のスタートが大きな転機になったと思います。それまでの事業は他社の商品やサービスを仲介する代理店業務が大半で、基本となるプラン作りには我々の意見が反映されるものの、商品そのものに改善を加えるとなると立場的に限界がありました。その中では「こうすればもっと良くなるのに…」とじれったさを感じてきたことも少なくありません。それに比べて「グローバルWiFi」は自社サービスであるため、ある程度のことを自分たちの裁量で決めることができます。ただ自社でルールを作るとなるとその分の責任も重たく、そうしたサービスを扱う中で次第にCRMの意識が浸透していったのだと思います。

CLTはビジョンの顧客サービスの要

-御社の圧倒的な営業力は「Webマーケティング」「営業」「CLT(カスタマー・ロイヤリティ・チーム)」 の社内連携が原動力になっているそうですね。そして、この中で顧客対応の中心機能になっているのがCLTだと聞きました。これはビジョンならではのセクションですが、どのような経緯で生まれた組織なのでしょうか。


中本氏:今から7年前に当社代表の佐野が顧客のリテンション強化を呼びかけ、その一環として設立されたのがCLTです。当時、私自身は「顧客のフォローを手厚くしながら利益を大きくする」という佐野の考えに少し懐疑的なところもありました。しかし、実際にお客様とお話ししてみると、「従業員が増えたから携帯電話を買い足したい」とか「コピー機を増やしたい」といった様々なニーズがあることに気付かされたんです。それをきっかけにリテンションに特化したチームを作ることになり、私が最初の管理責任者に立つ形で佐賀市にCLTを開設しました。
-CLTと従来の「コールセンター」との違いはどんなところにあるのでしょうか。


中本氏:「お客様にとってのコンシェルジュであり、営業スタッフにとっての秘書」というのが、CLTの立ち位置です。CLTでは従来のコールセンターの機能に加えて、営業スタッフが獲得してきた契約の納入手続きやアフターフォローも担当しています。そういう意味では単なるコールセンターよりもお客様に距離が近いポジションにあるといえます。それだけでなく、CLTではお客様の声から出てきた課題やニーズを蓄積し、それを経営陣や営業側に共有してサービス品質と営業技術の向上につなげる役割も担っています。まさに当社にとって顧客サービスの要のような存在です。


-そうなるとCLTの開設によって営業の立ち位置も大きく変わったということですね。


中本氏:そうですね。CLTを開設したばかりの頃は、営業スタッフの中で「自分の仕事が奪われるのではないか」といったアレルギーのような反応があったことも事実です。でも、CLTが契約獲得以降の事務作業や顧客サポートを行うようになったことで営業スタッフは新規顧客の開拓に集中できるようになり、一人一人の生産性も大きく上がりました。


また、スタートアップの企業を多く顧客に抱えている当社は、アップセルとクロスセルの受注が多いのも強みです。そこにおいてもCLTに顧客情報が共有されることによって、お客様の成長フェーズに合った商品やサービスをコンシェルジュのように紹介できるというメリットもあります。

「高め合う組織作り」で月間の売上高が60倍に

-御社では法人携帯やコピー機の販売、ホームページ制作などの情報通信サービス、そして「グローバルWiFi」サービスと実に幅広い商材を扱われています。それらすべての顧客対応をCLTが担っているということですが、ひとつの窓口で対応するにはかなり大きな人的リソースが要されると思います。そうした中で、どのような組織作りをされているのでしょうか。


中本氏:立ち上げた頃には8人でスタートしたCLTも、今では100名近い組織になり、お客様サポートチーム、営業チーム、アウトバウンドチームなど、さらに細かな6つのチームで運営されています。開設当初はアウトバウンド(架電)業務が大半でしたが、設立半年でインバウンド(入電)による受注がアウトバウンドの受注を越えました。現在では8割がインバウンド業務で、残り2割のアウトバウンド業務もほとんどが新規のお客様に対するフォローとなっています。確かに商材の種類が幅広いので、現在は複数の商材を担当できるマルチ担当スタッフの育成に力を注いでおり、それぞれが繁忙期を迎える時にはスタッフを融通できるような体制をとっています。


-CLTの開設によって具体的にどんな効果がありましたか。


中本氏:細かなものまで含めると数え切れませんが、大きなところでは販売機会の損失が減ったことです。営業スタッフが顧客窓口だった頃はお客様からお電話を頂いても担当が不在にしていたり、携帯も留守電ということが少なからずあり、それが販売機会の損失を生んでいました。それに対してCLTでは全体でお客様の情報を共有し、いつでも対応可能な体制が整っているので、お客様の必要な時に必ずご要望に応えられます。アフターフォローもCLTが行っているのでサービス導入後のサポートも充実しており、お客様にご満足いただけるサービスを届けられています。
また、CLTができる前は営業所や担当者ごとで対応にバラつきがあり、通常であればクレームにならないような問い合わせがクレームに発展してしまう、ということもありました。これについても顧客サービスの専門部隊であるCLTに窓口を一本化することでサービスの均一化を図ることができ、今ではクレームをほぼゼロに近いところまで減らすことができました。


先ほど述べたように既存のお客様からのアップセル・クロスセルの追加受注が大幅に増えたほか、お客様のサービス離脱率が大幅に下がったという確かな数字も出ています。CLTを開設した頃と現在を比べると月間売上高は約60倍に成長しており、これもCLTの設置なくして考えられなかったことです。

さらなるCRMの向上を目指し、その先の時代へ

-今後CRMをさらに向上させていく中で、新たに構想している施策などはありますか?


中本氏:東証1部上場も果たして順調な成長曲線を描く中で、人材の確保も差し当たっての課題になってきています。そこで今後も人材育成に力を入れ続けていくのと並行して、AIなどを活用した自動化システムの開発にも力を入れていきたいと考えています。今年はチャットの自動化でCRMベストプラクティス賞を頂きましたが、将来的には顧客対応の全自動化を達成することが理想です。事業が大きくなったからといってCLTもただ人の数を増やすだけではなく、人間とテクノロジーの融合でさらなる効率化を図っていきたいと考えています。


CRMの導入を背景に飛躍的な成長を遂げてきたビジョン。中本氏のインタビューから見えてきたのは、組織の生産性を上げながら顧客満足度も向上させ、さらには利益までアップさせるという、複数の課題を効率良くクリアしてきた同社の巧みな組織マネジメントだった。「Webマーケティング」「営業」「CLT」の各チームが好循環を維持しながらお互いを高め合う組織を作る。その先進的な取り組みがCRMにどんな新しい風を起こしていくのか。今後にも注目していきたい。
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