忙しい毎日でもライフスタイルを変えずに体脂肪を減らす森下仁丹が発見したローズヒップ由来ティリロサイドの実力
森下仁丹といえば明治38年に総合保健薬として発売された「仁丹」(当時は「赤大粒仁丹」)の発売元として多くの人が知る百年企業だ。その「仁丹」の開発で培った生薬研究の知識とシームレスカプセル技術を基盤に、ヘルスケア事業とカプセル事業を両輪とする同社が、近年、機能性原料の販売にも力を入れていることをご存知だろうか。その代表的な商品のひとつが、様々な食品への汎用性が高く、多数の食品企業向けに採用されているローズヒップエキス=「ローズヒップポリフェノールMJ」だ。
ローズヒップといえば、ビタミンCを多く含み、美容や健康に効果があるイメージだが、同社のローズヒップポリフェノールMJが強みとするのは体脂肪に対する効果だ。どちらかというと女性向けの印象があるローズヒップの魅力を、年代・性別を問わず訴求しようとしている。ほかにも数々のローズヒップ商品が登場する中で、なぜ同社のローズヒップポリフェノールMJは脂肪の燃焼に効果があるのか。その仕組みをヘルスケア事業本部の河村哲哉氏に伺った。
生薬研究の百年企業が特許取得したあの植物の「意外な機能」
——森下仁丹は大阪で発祥した医薬品とヘルスケア商品の老舗企業ですね。昭和世代にとっては銀色の粒の「仁丹」の印象が強く、「じんたん」という四文字を聞けば「おくすりの会社」というイメージがパッと浮かぶような確固たるブランド力をお持ちです。
河村氏
当社は、明治26年(1893年)に現在の大阪市中央区で創業した「森下南陽堂」という薬種商から発展しました。創業者の森下博は早い時期から和漢の生薬に目を付け、自然由来の良質な素材による家庭薬を開発し、今でいうセルフメディケーションに役立つ商品をお届けしてきました。そして、おっしゃるように企業の顔としてロングセラーになった商品が、口中清涼剤として親しまれている「銀粒仁丹」です。今でも展示会等で「懐かしい」と多くの方に足を止めていただき、当社にとって名刺がわりのような商品になっています。
——今回のテーマである「ローズヒップポリフェノールMJ」は、御社が提供する機能性食品原料のひとつです。長く生薬を研究されてきた御社では、いつ頃からローズヒップに着目されてきたのでしょうか。
河村氏
現在でいう機能性素材の研究に本格的に取り組み始めたのは、今から20年ほど前のことになります。当時はそれまで成人病と呼ばれていた病気が生活習慣病という呼び方に変わった頃で、普段の食生活を見直す、あるいは自分の健康は自分で守るという意識が高まってきた時期でした。そうした中で当社も普段の食生活から生活習慣病の予防になるような商品を届けたいと、何百もの植物から体にやさしい機能性成分の研究に取り組んできました。そんな中で着目した植物がローズヒップでした。
——ローズヒップは主に南米やヨーロッパに自生するバラ科植物の果実で、ビタミンCを多く含み、食品としてはお茶やジャムなどで親しまれています。美容素材として注目されているのに対して、御社の「ローズヒップポリフェノールMJ」のように脂肪燃焼への効果を訴求できる原料は珍しいと思いますが、この植物のどんなところに注目されたのでしょうか。
河村氏
何百という植物を研究する中でまずひとつ魅力的に映ったのは、ブルーベリーやウコンといった機能性を持つ他の植物に比べて、ローズヒップには未開拓な部分が大きかったことです。仰る通り、美容面では注目されているのに健康面では手垢が付いていない素材は、研究開発の人間にとっても非常に面白い対象物でした。その上で分析を進めてみると、この植物から抽出したエキスに体脂肪を減らす機能があることが分かりました。研究を進めるうちに、それはティリロサイドというポリフェノールの働きによるものであることを発見し、これに関する特許を取得して当社の独自原料にできたことがひとつの幸運になりました。
まずは2005年に自社ブランドのサプリメントの原料として使用を始めました。2009年頃からは他社にも食品原料としての販売を開始しましたが、当時はまだ機能性表示食品制度も出来ておらず、評価は高いものの機能を訴求できないという理由で思ったように取扱いを増やすことができませんでした。ところが、2015年の機能性表示食品制度の開始により潮目が変わり、「体脂肪減少」を訴求できる機能性原料として注目されるようになりました。
ローズヒップポリフェノールMJの中に息づく「森下仁丹イズム」
——ティリロサイドという名前の成分は初めて聞きました。この成分について、さらに詳しく教えていただけますか。
河村氏
ティリロサイドというのは「アシル化フラボノール配糖体」と呼ばれるポリフェノールの一種です。体内の細胞のミトコンドリア内に運ばれた脂肪酸が代謝されることをβ酸化と言いますが、ローズヒップ由来ティリロサイドにはこのβ酸化を起こす酵素を活性化させ、結果的に体内の脂肪燃焼を活発にさせる働きがあります。
——御社が取得されているデータなどを参考に、ローズヒップ由来ティリロサイドが脂肪燃焼に対してどのくらいの影響を与えるものなのかを教えてください。
河村氏
第三者機関に依頼して行ったヒト臨床試験では、BMIが25.0〜30.0kg/㎡の成人男女32名を2群に分け、ローズヒップ由来ティリロサイド(1日あたり0.1mg)を含む食品もしくはプラセボ食品を12週間にわたって毎日摂取してもらったところ、ローズヒップ由来ティリロサイド摂取群はプラセボ摂取群と比較して体脂肪の面積が有意に減少しました。皮下脂肪と内臓脂肪の両方に効果があるという点もローズヒップ由来ティリロサイドならではの優位性といえるでしょう。
——このローズヒップ由来ティリロサイド、ひいてはローズヒップポリフェノールMJの中に、これまで森下仁丹が培ってきた知見、あるいは長い歴史を持つ「森下仁丹イズム」のようなものが生かされていると思う点はどこでしょうか。
ローズヒップの実
河村氏
やはり銀粒仁丹が様々な生薬を丸めて作ったものであるように、植物由来の体に優しいものから健康に役立つものをお届けするという創業者から受け継ぐ理念と生薬研究に対する探究心が息づいているところでしょうか。例えば、原料となるローズヒップもチリに自生する天然の果実を手積みしたもので、当社の担当者が現地を毎年訪れて生産者と密な連携を取っています。
さらにローズヒップティーなどで摂取できるのは皮の成分が主ですが、ローズヒップポリフェノールMJは種子を含む丸ごと果実を原料にしており、他のローズヒップ原料にはない当社だけの魅力を打ち出しています。製造工程においてもティリロサイドの含有量を4回にわたってチェックするなど、安定した品質の確保に努めています。
一日のどこかでローズヒップポリフェノールMJが摂取できるライフスタイルを
——御社はこのローズヒップポリフェノールMJをBtoB商品として外部の食品メーカーに提供されています。
河村氏
これまでにも様々なメーカーさんと協力させていただき、数々の商品を一緒に開発させていただきました。機能性表示食品の届出を受領されている製品は30製品以上に上ります。品目として特に多いのはお茶などの清涼飲料水で、他にはチョコレートなどのお菓子。意外なところではポン酢などの調味料などでも機能性表示食品の届出が受領されています。
——ポン酢というのはローズヒップの印象を覆すような意外な商品ですね。このあたりの高い汎用性を裏付ける具体的なポイントを教えていただけますか。
河村氏
我々が提案の際に皆様にお伝えしているのは、水溶性が高い、使用する食品の味に影響を与えにくい、1日100mgという少量の摂取でも効果が期待できるという3点です。このうち水溶性については開発の過程で何度も改善を重ねてきた部分ですし、味についてはサンプル商品ができた段階で相手企業からNGが出たことはほぼありません。例えば、今まで機能性食品に関心がなかったメーカーさんでも自社の商品に比較的取り入れやすい成分ですし、我々も商品化までしっかりサポートさせていただきます。
——「肥満」はミドル世代を中心に男性にとっても身近な課題ですから、ローズヒップポリフェノールMJは男性にもローズヒップへの関心を広げる存在になりそうですね。
河村氏
そうですね。実際に女性よりも男性からの支持が高い商品もあると伺っています。いろいろなものに溶け込んで、おいしく、少しずつ、無理をせず、短時間で摂取できるのがローズヒップポリフェノールMJの利点なので、性別を問わず親しんでいただけると思います。機能性表示食品制度が始まった頃は、機能性食品というとサプリメントがその中心にありました。しかし、制度が浸透してきた今では、健康効果が期待できる成分を含む飲料や食べ物が多く成功を収めています。
サプリメントというと日常的に飲まなければならない「義務感」がありますが、食品の中に溶け込んでいれば普段の食生活を変えずに取り入れることが可能です。そうした手軽さが、性別・年代を問わず受け入れられやすい理由ではないでしょうか。
——最後になりますが、御社はこのローズヒップポリフェノールMJの提供を通じて、世間にどんな価値を届けていきたいとお考えでしょうか。
河村氏
まずは「仁丹」というと一般消費者向けヘルスケア製品の企業というイメージが強いかもしれませんが、こうしたBtoB向けにも製品を提供している企業だということをより多くの企業に知っていただきたいです。その上で我々は「人々の健康の維持増進に役に立つものを作るメーカー」なので、ぜひ美味しいものを作っている食品メーカーさんやヘルスケアビジネスを展開されている企業のお力を借りながら、このローズヒップポリフェノールMJの魅力を世間にもっと広めていきたいと思っています。
そして、例えば、味噌汁やヨーグルトなど、今後さらに日常的に食べるものの中に使用商品の幅を広げて、特に意識しなくても一日のどこかでローズヒップポリフェノールMJにタッチしていただけるようなライフスタイルを作っていけたら嬉しいですね。
森下仁丹株式会社